❖ 元禄時代の作曲者・八橋検校トリビュート
・昨年の秋にマザーアース社から出版された僕の
楽譜は、参考音源CDを添付した新刊2種に加
えて、既刊の楽譜に新たに参考音源CDを追補
した増補版が2種、以上4種類の楽譜がすでに
発売となっています。ご案内が遅れましたが、
逐次ご紹介しようと思います。まずは、新刊の
2種について‥‥
・(1) 筝とピアノのための「六段唱和」(2022)
(Six Steps Duo)
邦人作曲家による筝独奏のための(歌を伴わない)
器楽曲の嚆矢とされている「六段の調べ」は、
元禄時代に八橋検校によって作曲された、邦楽
の歴史における聖なる古典、とも呼ぶべき名作
です。そしてこの曲に対して、もうひとり別の
演奏者が別の筝で合奏を試みる、替え手という
「雲井六段」のような取組みも、古来より行わ
れ、この曲の魅力を高めています。
・「八橋検校に寄せて(A Tribute to Yatsuhashi-
Kengyo) 」という副題のついた、この譜面「六段唱和」は同様の発想をもとに、八橋検校の
原曲はそのままに、これにピアノが加わって和洋合体のセッションを試みるというスリリング
な内容の音楽です。もともとは筝とハープのための二重奏曲として1985年に作曲したもので、
初演後も幾度か再演されていますが、最近になってハープのパートを軽めのタッチのピアノで
演奏してみたところ、これはこれで、ややクールな情感がとても面白く、今回の刊行に際して
部分的にピアノの語法に書き改めて、提供させていただく事にしました。ハープに似せる必要
はなく、筝の響きに呼応し合える豊かなピアノの表情を、ピアニストに期待しています。
・楽譜に添付されている参考音源CDは、筝・彩里京鼓さん、pf・飛澤直子さんの絶妙な重奏が
素敵です。ピアノが重くなく、しかも的確な表情で歌っています。→マザーアース株式会社
・なお、混乱を恐れずに言えば、マザーアース社からは、これとタイトルの類似した
フルート、オーボエ、筝のための「新唱六段」(2006)(Six Steps Collaboration)
という別種の楽譜も刊行されています。「六段唱和」の21年後に別の委嘱のもとに作曲した
管楽器とのトリオなので、全く別種の「より線的な音楽」を展開します。この曲については、
公開中のユーチューブ画像の事と合わせて、昨年のトピック[2308] でご紹介しているので、
別途ご参照ください。フルート、バイオリン、筝によるトリオでの演奏ですが、面白いです。