[1734] 新しい作品の完成 (26)

  • 2017.11.04 Saturday
  • 04:07

❖ 箏族邦楽器による三重奏曲の3作目 

・今年はどういうわけか、作曲に追われる一年間

 だったようです。本ブログで、そのつどお報せ

 してきましたが、今回の曲が2017年の14番目

 の作品となります。頼まれるとイヤとは言えな

 い損な性格なので、制作で呻吟するのは自分な

 のですが、ともかくも最終の終止線を記入する

 時の幼稚な達成感めいたものが、自分を引き止

 めていて、この煉獄から抜け出せないでいます。

 

・邦楽器を介しての楽友・二世/狩谷春樹カリヤ

 シュンジュさんは、現在ご尊父の跡を継がれて、

 幅広く活動しておられますが、彼女を中心に結

 成された「邦ダッシュ」という演奏ユニットの

 ために、次なる新作がほしいとの要請を受け、

 この夏頃からコンセプトを考えあぐねていまし

 た。来年4月の彼女の重要な記念演奏会で使い

 たいとの事、やはり年内には譜面をお渡しする

 必要があり、先月10/24から制作に着手、幸い

 楽想に恵まれて、4日後の10/27日に、単楽章

 約6分の作品を得る事ができました。

 

・三絃・二十絃・十七絃のための 三重奏曲「青葉の波」(2017)

 

・4月の演奏会との事でしたが、既存の曲にも春の名曲は多いので、季節を先取りして今回は

 初夏の爽やかさをテーマに、いつもの中間部に緩徐楽句を持つ変則的なソナタ形式の音楽を

 今回も試みました。「青葉の波」という表題は、桃山期の大名で和歌の道にも秀でていた十

 市遠忠トイチノトオタダ(1497~1545)の和歌に着想を得て、それをタイトルにしました。

 

・みづいろの梢にかよふ夏山の 青葉波寄る風のあけぼの   十市遠忠

 

・およそ武人の和歌とは思いもよらぬ、デリケートで美しいイメージで構成された、新古今

 和歌集や玉葉集・風雅集のスタイルを思わせる印象深い詠歌です。流れるような9拍子を

 基本のリズムとして、この上に主題を展開し、中間部はやや緩やかに4拍子のメロディを

 対位法的に扱い、変化を持たせました。歓びと愁いとが交錯して進みますが、季節に相応

 しい爽やかな情感で、全体をまとめました。狩谷先生にOKしてもらえるかどうか、本番

 を密かに期待しています。

[1727] 新しい作品の完成 (25)

  • 2017.10.07 Saturday
  • 02:48

❖ 楽器紹介的な箏独奏の小品

前トピックに関連するのですが、箏に与えら

 れた持ち時間10分のうち、「新映六段」が

 約6分少々、あとまだ4分ほど箏の紹介に使

 える時間があるので、せっかくのチャンスだ

 からと、ソロ用の新曲を今回の箏奏者・福原

 左和子さんのために、即興的に作曲しました。

 技術的にはそれほど高度でなくて、しかし箏

 の個性が発揮できる内容という目線で、2日

 間ほどを費やし(その意味では即興でもない

 のですが)3分18秒の短品ができ、福原さん

 に感謝されました。

 

・箏独奏のための「桜落葉」(2017)

 

・外国の人たちは桜というと、あの華やかな

 満開の開花や桜吹雪をイメージされますが、

 秋が深まった頃の、時雨でしっとりと濡れ

 た地面で、幾重にも重なりながら、あの

 懐かしい桜餅の香りを漂わせている桜落葉、

 その想いを音楽に託しました。

 

・できれば将来、何か他の短曲とセットにして、箏独奏用の組曲にまとめようと思っています。

 考えてみると、これまで何曲もの箏のための作品を書いていますが、独奏曲を書いたのは、

 これが最初だったような気がします。‥‥‥箏の皆さんの役に立つものを提供したいです。
 

[1726] 新しい作品の完成 (24)

  • 2017.10.07 Saturday
  • 01:57

❖ 日本と北欧の民族楽器のコラボレーション

 

・今年の1月に「東京タワー文化フェスティバ

 ル」という、音楽を中心とする国際文化交流

 の企画があり、僕もそれに参加したのですが、

 第2弾として、今回は互いの国の民族楽器に

 よるコラボレーションをテーマに、ふたたび

 東京タワー特設ステージで、ワークショップ

 を兼ねた演奏会が持たれることになりました。

 

・主催者側からの要請もあり、僕は今回、北欧

 フィンランドの民族楽器カンテレと箏とのア

 ンサンブルの作品を提供することとなりまし

 たが、何しろ8月になってからの急なお話

 だったので、以前にも試みたことのある八橋

 検校「六段の調」をもとに、「新映六段」

   (Six-steps Collabolation for 11-strings

    Kantele and Koto) (2017)というタイトル

   のコラボレーションを9月13日に完成し、

   演奏者の方にお送りしました。

 

・カンテレをフルに活用した曲とはとても言えませんが、箏のズングリした音色に、カンテレの

 やや金属的で繊細な響きがからみあって、それなりに独特の音風景が展開するものと期待して

 います。両楽器の音量バランスをどのように克服するかも課題の一つですが、予定されている

 11月11日(土)の初演成功を祈っています。(チラシが入手できたら、改めてご案内します。)
 

[1723] 新しい作品の完成 (23)

  • 2017.08.29 Tuesday
  • 18:30

❖ 市民伝承オペラへの追加曲 2

前トピックの続きになりますが、肝心な第3回

 公演が来年3月に決定したことを書きもらしま

 した。つい先日、主要キャストを含む1回目の

 ミーティングがあったばかりで、チラシもまだ

 これから印刷という状況ですが、日時と場所は:

 

・2018年3月4日(土)午後2時開演

・かつらぎ総合文化会館あじさいホール

      (和歌山県伊都郡かつらぎ町丁の町)

 

・第2回から2年越しの再演、今回も台本に手直し

 があり、演出の防野氏も今回のを最終決定バージ

 ョンにしたいとの事。すでに書いたように、2曲

 のアリアが追加となり、2曲目が本トピックで紹

 介するソプラノ横笛が第1幕第4場で歌うもの。

 ‥‥‥もはや面会もしてくれない恋人・斎藤時頼

 への嘆き恨み、その激情がはっと悟りの境地へ変

 化して行き、みずからの血潮で石碑に和歌を記す

 前半幕切れのクライマックスとなるシーンです。

 彼女の心境の変化を、能面をつけた役者が舞うシ

 ーンと重ね、いつのまにか般若ハンニャの面がおだやかな女性の小面コオモテに変わる所作が

 見どころとの事です)。そして、再び相見える事なく横笛は、みずからもまた尼となり、仏道

 修行の道に進みます。すでに出家した時頼も、このさき高野山に入山、やがて滝口入道と呼ば

 れる高僧にいたるのです。‥‥‥この重要な舞台で横笛が歌うのが、今回のアリアです。

 

・横笛(ソプラノ)のアリア 「嵯峨の奥里」

 

・前半のクライマックスとなる場面なので、伴奏楽器を総動員して曲を作りました。といっても

 フルオーケストラではなく、フルート、尺八、箏合奏(2部)、電子オルガン、ピアノの6パ

 ートに過ぎませんが、動から静へ、暗から明へ、楽器の層と音色を変化させて、第1曲の完成

 後の8月17日に、約9日をかけて曲を完成しました。音楽がどの方向に進めば良いかは明確な

 ので、前曲ほど戸惑うことなく制作は進捗したと思います。あとは舞台の上で、横笛の歌唱と

 能面の所作とが、どのようにまとまって行くのか、演出の手腕に期待したいところです。

 

・来年の年頭ごろに、チラシができあがった時点で、再度ご紹介するつもりです。なお、演目の

 正式なタイトルは『第参回 紀州かつらぎふるさとオペラ "横笛の詩"/紀州かつらぎ・天野の里

 に伝わる 娘「横笛」の悲恋物語』というものです。

[1722] 新しい作品の完成 (22)

  • 2017.08.27 Sunday
  • 11:35

❖ 市民伝承オペラへの追加曲1

・和歌山県伊都郡かつらぎ町という集落には、

 ある若き女人の墓がひっそりと今日まで残っ

 ています。時は後白河法皇の院政の頃、源平

 の戦いが勃発する前の、平家全盛の時代。平

 重盛に仕える若き武将・斎藤時頼トキヨリが

 横笛ヨコブエという女性を愛してしまうので

 すが、家柄の違いを理由に父・茂頼モチヨリ

 の許しを得ることができず、若者は出家して

 後に高野山で滝口入道と呼ばれる高僧となり、

 再会も果たせぬまま、横笛もやがて尼となっ

 て高野山の麓の村で仏道の日々を送り、彼女

 が息を引き取った時、一羽の鶯となって高野

 山へ飛んで行ったという悲話が、平家物語に

 語られています。その横笛の墓が、かつらぎ

 町に残っていて、今日まで守り伝えられてき

 ているとの事。

 

・かつらぎ町在住の演出家・防野宗和氏が仕掛

 け人となって、この美しいエピソードを町民

 参加のオペラに構成しようという企画が、今

 から5年前の2012年に実現し、その時に指揮をつとめた河田早紀氏との繋がりで、台本を

 小川淳子さん、作曲を千秋次郎が受け持つ事となり、「紀州ふるさとオペラ」と名付けら

 れた2幕約2時間余のオペラを、かつらぎ総合文化会館という立派なハコモノの中で初演

 したのが2012年12月9日のこと、村人たちの役で、多くの町民の皆様の参加があり、片

 や、共催者としてかつらぎ町からの経済的な支援もあり、大成功を収める事ができました。

 

・その後も再演を望む声が町民の皆様から多く寄せられ、3年後の2015年3月22日午後に

 2回目の公演が行われました。指揮者が河田早紀氏から金正奉氏に替わり、主演歌い手も

 一部異同がありましたが、これまた大盛会の再演となりました。そしてまた2年が経ち、

 今回が第3回公演です。回を追うたびに、演出の防野宗和氏から台本の部分改定が加わり、

 今回も僕は音楽の一部手直しに加えて、2曲の追加アリアの作曲に追われました。さらに

 今回から箏合奏の皆さんが新たに伴奏アンサンブルに加わったので、従来のステージの中

 での出番を作ってあげるための工夫も必要となり、じつに7月半ばから8月半ば過ぎまで、

 仕事に掛り切りとなりました。折からの異常な猛暑に体調を崩してしまい、なかなか予定

 が捗らず、気付いたら祇園祭も天神祭も五山送り火も終わり、ツクツク法師の啼く季節に

 なっていました。幸い、総合企画者・防野宗和氏にはご迷惑をかけずに、楽譜「納品」が

 果たせたので良かったと思っています。この僕のブログ更新も、そのために遅れてしまっ

 た訳ですが、今後は、なんとか尋常な日々に戻れる事と期待しています。

 

・前置きが長くなりましたが、今回作曲を完了した2つのアリアの内の1曲目は、第1幕の

 第1場、いわばこの悲劇の発端となる場面、相愛の斎藤時頼と横笛のゴシップを、二人の

 侍女が陽気に噂しているのを、そこへ通りかかった時頼の父・茂頼モチヨリが聞きとらえ、

 さてはあのカタブツの時頼が身分高い姫君を見初めて、人の噂になっていると思い込み、

 我が家の名声も家運も高まることと有頂天になって歌う、父親のアリアです。

 

・斎藤茂頼(バリトン)のアリア 「ついに恋をした」 

 

・アリアの後半になって、これに侍女たちの歌が絡み、三重唱となるのですが、父は有頂天、

 事情を知っている侍女たち二人は、これは大変な勘違い、将来どうなることかとヤキモキ、

 互いの方向性が異なる重唱なので、作曲にとても苦労しました。明るい音楽と不安な音楽と

 を同時進行させる必要があるからです。しかし、途中で侍女たちがそっと去って行き、後は

 父が息子の将来を頼もしく(あくまでも勘違いなのですが)歌い納めるところで、このシー

 ンは終わり、次の父子断絶の壮絶なシーンへと続きます。作曲は別の委嘱作「旅はるか空い

 ろの夢」が完了した7月17日以降から始まり、8月8日に漸く完成しました。 
 

[1718] 新しい作品の完成 (21)

  • 2017.08.27 Sunday
  • 03:38

❖ 旧素材を使っての新作          

これまでにも紹介した事がありますが、旧知の

 オーボエ奏者・呉山平煥氏が、また来年早々に

 箏の福原左和子さんとのリサイタルを企画して

 おられる由、しばらく僕もご無沙汰だったので、

 何か新作を提供したくなりました。ただ、今年

 に入ってから作曲の予定が多く重なってしまい、

 あれこれ勘案した結果、数年前にフルートと箏

 のために書いた作品の素材を使って、新しいコ

 ンセプトのもとに、別の作品に仕上げることに

 思いいたりました。

 

・もう20年も以前になりますが、1997年に僕は

 「葉がくれの花」というオーボエと箏のための

 曲を書いていて、お二人によってこれまで幾度

 となく再演されているのですが、鎌倉期の皇族

 式子内親王の和歌「残りゆく有明の月の洩る影

 に ほのぼの落つる葉隠れの花」という繊細な

 新古今スタイルの和歌に想を得て、創った曲で

 す。今回の作品も、同じく式子内親王の和歌に

 想を得ていますが、それは「ほととぎす その

 かみ山の旅枕ほの語らひし空ぞ忘れぬ」という、清冽で爽やかな季節感に溢れた和歌からの

 イメージをもとに、先月になりますが7月17日に約1ヶ月をかけて完成しました。

 

・オーボエと箏のための 「旅はるか空いろの夢」(2017)

 

・斎王代として伊勢に下り、生涯を伊勢神宮の神々に仕えた彼女が、おそらく一生に一度きり

 となった旅行、まさに一期一会の青空の姿だったことでしょう。爽やかな音の動きの中に、

 「色即是空 空即是色」の裏命題に想いを馳せて、演奏してほしいと願っています。
 

[1714] 新しい作品の完成 (20)

  • 2017.05.31 Wednesday
  • 22:21

❖ 日常的な季節感を巡って

・5月はじめに作品を完成した歌曲「夏休み」

 のあと、休む間もなく次の作品の制作に着手、

 ようやく5月25日に完成し、それから譜面の

 浄書を徹夜がかりで続け、去る28日に先方の

 合唱団の皆さんに手渡しました。短いながら

 も、5つの詩篇からなる女声合唱組曲です。

 

・女声合唱組曲「季節の旅びと」(2017)

                                 (詩・池田もと子)

   1. 春の公園 2. 雨つぶの輪 3. 大きなけやき

 4. きんかん 5. 花の旅

 

・詩人の池田さんとは、前回の「紅い椿」で素晴

 らしい詩を提供していただいたものですから、

 今回も「団の創立50周年記念のために、新曲を

 書いてもらえないか」と、旧知の女声コーラス

 の皆さんから打診を受けた時に、池田さんに作  

 詩をお願いしたわけでした。

 

・ただ、その際に僕が詩人にお願いした条件は、

 「長過ぎず、やや短めの、有節形式を目指している詩」という事でした。1曲がどれも3分

 前後に収まり、しかも詩形が伸び縮みする自由詩ではなく、1番・2番‥‥‥とできるだけ

 同じ息使いの詩型が繰り返される(有節形式による)歌詞、という事です。ありがたい事に

 こちらの煩い要求に詩人は直ぐに応じてくださって、何編かの試作品の中から、作曲の立場

 で、上記の5編を選ばせてもらったような次第です。

 

・たとえばその一例として、もっとも短い第3曲「大きなけやき」の全文を掲げてみましょう。

  

                         3.「大きなけやき」      池田もと子

 

          夕日がしずむころ

          大きなけやきに

          むくどりたちが

          いっぱい集まって

          今日みてきたことを

          話してあげる  

 

          夜になると 

          大きなけやきは

          むくどりたちを

          いっぱい眠らせて

          葉っぱでやさしく

          おおってあげる

 

 

・全世界を包み込むような「大文学」ではありませんが、生き物たちの優しい心の通い合いが、急

   に涼しくなった秋の季節を背景に、印象深く歌われていると思います。音楽の形式で表現するな

   ら、A-Aという形に自然に収まります。

 

・5つの楽章を、詩の構成に応じて、次のように組曲としてまとめました。

        1. 春の公園   春    A-A-B     変ホ長調    4拍子       2'42"

        2. 雨つぶの輪  雨季   A-A-B     ヘ長調     3拍子       2'14"

        3. 大きなけやき 秋    A-A        ト長調      6拍子       2'24"

                         4. きんかん   冬    A-A-A     イ短調・イ長調 4拍子       2'20"

        5. 花の旅    再び春  A-B-A     変ロ長調     4拍子       2'40"

 

・組曲が最後にいたると、季節は一周し、再び春が訪れます。音楽の方も曲を追うごとに、曲の

 調性が長2度(最後は短2度)ずつテンションが上がり、5.は1.の属調で終結することになり

 ます。どれも3分に満たない小さな楽章ですが、全体を通すと約13分弱となります。

 

・これらの構成を前もって予定に入れながらの制作だったので、愉しみながらも苦労しましたが、

 初演はこの秋10月21日(土)豊中市立文化芸術会館小ホール(阪急曽根駅)の予定です。成果

 を期待しようと思っています。

 

 


 

[1711] 新しい作品の完成 (19)

  • 2017.05.07 Sunday
  • 04:49

❖ セピア色の遠い我が少年期

・前項に記した「ある警備員の歌」を完成した

 数日後、この詩篇に着手しました。それぞれ

 3行からなる節が5聯集まっている詩型で、

 作曲にはとても使い勝手の良い? 嬉しい詩篇

 です。

 

・「夏休み」(2017) (詩・入船康和)

 

・詩人の入船氏は同じ会員仲間ですが、氏の作

 詩に曲を付けるのは、今回が初めてです。関

 西・加古川市に在住の方で、どうやら僕が少

 年期を過ごした福井市と同様、近隣に農村が

 広がっている伸びやかな地方都市なのでしょ

 う、例えば第1聯は次の3行で出来ています。

 

・カッコウ、カッコウと鳴いているよ

 火の見櫓の広場に行こうよ

 ラジオ体操始まるよ

 

・このようなノリで、短い3行の聯があと4個

 続くのですが、クヌギ林へ虫取りに行く、とか、午後はウグイの泳ぐ川で水浴び、とか、

 桶に冷やしたスイカ、お昼寝、夕方は土橋までホタルを見に行く、とか、たぶん入船氏も

 僕と同じ世代なのでしょう、あまりにも同じ体験が重なっていて、いわば一気呵成に筆が

 進みました。ただし、言葉に惑わされて音楽が「行き当たりバッタリ」にならないように、

 5つの聯をA-B-A-B-Aのような、単純なロンド形式に似せて構成しました。また第4聯は

 Bのように見せかけて、後半はかなり異なるCとなり、そこから一気にAに回帰するロンド

 特有の楽しさ・放埓さを味わってほしいと思っています。ここでは言及しませんが、この

 他にも作曲者が仕掛けた罠(引用)が3箇所にありますから、楽しんでみてほしいと思い

 ます。制作は4/27から5/3までの7日間で仕上がりました。

 

・ただ、つい考えてしまうのですが、こういう懐かしい思い出を共感できるのは、どの世代

 までなのか、入船氏と僕の間で自然に共有できているものが、もしかすると、すでに時効

 になっているのかも。何しろ今ではもう誰も、イカスだのナウイだのと云う言葉を使わな

 い訳ですから。
 

[1710] 新しい作品の完成 (18)

  • 2017.05.07 Sunday
  • 01:11

❖ 低空飛行の鴉に寄せる共感

・本トピックと次項のトピックでお伝えする新作

 の歌曲完成のために、しばらくブログの更新が

 中断していました。制作そのもには、それほど

 苦吟する僕ではないのですが、着手するまでに

 数日ばかり「待ち」の日数がかかる事と、最後

 の終止線を書き入れるまでは、やや思考が制作

 の中身にのめり込んでいて、なかなか余事に舵

 が切れない点、たぶんこれは、他の作曲の皆様

 もご同様ではないかと思います。

 

・年来心を悩ませてきた我々の会の法人解散の重

 荷が、この3月末でようやくすべて解消し、僕

 も一切の肩書きを下ろして、東京での本部役員

 としての業務を終えましたが、名誉会員として

 今後もご縁が続く事になりました。栄誉な事と

 感謝しています。これまで本部機能を果たして

 いた東京の事務所は、別な場所に事務所を構え

 「日本歌曲振興波の会」という呼称に変わり、

 活動を継続してゆきます。今年度の活動の一環

 として、今年も秋に「新作の会」定演が予定さ

 れていて、僕も名誉会員の一員として、それに参加し、特に今回は2つの詩作品に曲を付け

 て初演していただく事になりました。その一つが本トピックの新作です。

 

・「ある警備員の歌」(2017) (詩・木村 雄)

 

・都会のホテルのガードマンを勤めている主人公が綴った4首の短歌と、途中で挿入される

 短い独白(歌わずにセリフとして語ります)から成る「組もの」ですが、とても尋常で

 誠実な詠み口に心が動かされました。明け方の鴉にも似て低空飛行を余儀なくされている

 警備員としての日常と、それを支える静かでひそやかな矜持‥‥無神経な作曲者だったら

 いかにも物悲しい「枯れすすき」調に収めてしまいそうな処を、僕は絶対にそういう流れ

 には乗せず、爽やかな共感のエールで全体をまとめました。僕自身が低空飛行の鴉に近い

 からですが、詩人の感想はいかがでしょうか、また初演の際の皆様のご感想は如何でしょ

 うか。木村氏には近々電話でお聞きしようと思っています。制作は4/6から4/24まで、

 思わず19日間を費やしました。

[1706] 新しい作品の完成(17)

  • 2017.04.01 Saturday
  • 23:04

◆ 西洋的感性による季節陰影

・早く作曲をと思いながら、2月から3月にかけ

 ての不順で寒々とした気候のせいで、なかなか

 仕事がはかどりませんでした。一つには、年頭

 のトピック[1700]でも言及したように、2年越

 しの法人解散のための業務が、3月12日の最終

 臨時総会まで続いていて、気持ちの上でゆとりが

 なかったのも一因でした。しかしお蔭様で最後の

 総会承認を無事取りつける事ができ、心の重荷が

 取れて東京から戻り、14日から制作を開始し、

 やや手間取りましたが10日後の3月24日の夜に

 約5分弱の歌曲を脱稿しました。

 

・「夏の終り」(2017)(詩・杉本秀太郎)

 

・すでに故人となられた杉本秀太郎氏は、フランス

 文学者、文芸評論家、日本芸術院会員etc...無数の

 肩書きのある著名人で、死去される1年前の2014

 年に出版された「駝鳥の卵」という詩集の中に、

 この「夏の終り」は収められています。

 

・僕がこの詩篇と出逢ったいきさつは、書き出すと長くなるのでやめますが、簡単に伝えるとすれ

 ば、僕が「京都大学音楽研究会」(京大音研)時代の後輩だった岡田知子さんという、当時は

 「おジャコ」と呼ばれていた旧友(ソプラノ)の紹介で、昨年はじめて知遇を得た杉本夫人から

 頂戴したものがこの詩集だったのです。杉本夫人、杉本千代子さんはご自分では「素人です」と

 言っておられますが、しばしば声楽の方のピアノ伴奏をなさっておられる正真の音楽人で、僕は

 今回のご縁を大切にしたいと思って、頂いた詩集の中から、ピアノ伴奏で歌うのにふさわしい

 「夏の終り」を見つけ、作曲することのご了解を得た上で、このほど完成したような訳でした。

 

・夏の午後の日差しの移ろいの中で、ひと夏の生命を輝かせているサルスベリやヒルガオや、ケイ

 トウの種子をついばむ小鳥、わが庭の景物を見ている(観ている)詩人の目は、それが去年の

 記憶そのままだったことに気付くのです。そして最後に言います。

 

   今年の秋が

   去年の秋にかさなることは

   もうないだろう

   こうして書きとめた詩がある

   そのことあるがゆえに

 

・ここで詩は終わるのですが、日本的叙情とは一線を画す、いかにもフランス文学者らしい、冴え

 た視線が素晴らしいと、僕には感じられます。まさにこれは、自分の死を前にした決別の辞では

 ないでしょうか。‥‥このようなクールな叙情詩を書く詩人を、僕は他には伊藤静雄くらいしか

 知らないのですが、さあ、音楽の方、自分の曲の方は、どうでしょうか。自分では多少とも、気

 に入ったものができたと思っているのですが、已に亡き杉本教授には尋ねようがなく、演奏して

 くださる、聴いてくださる皆様の批評に俟ちたいと思います。

 

・初演予定は今年の秋頃になりそうで、僕の後続の作品集となる「千秋次郎歌曲集2」に収録の

 予定です。他にも、杉本家の事とかお伝えしたい事がありますが、長くなりすぎたので、トピ

 ックはここまでとし、次回に託します。杉本秀太郎氏の詳細はWIKIPEDIAなど、webで調べて

 みるのが良いでしょう。
 

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