[2402] 新しい楽譜出版 (17) ソプラノと筝のための「馬酔木」(2006)
- 2024.01.10 Wednesday
- 12:26
❖ 亡き大津皇子に寄せる姉皇女の鎮魂歌
・前トピックに続き、もう1冊の新刊楽譜‥‥
・(2) ソプラノと筝のための「馬酔木」(2006)
(Ashibi Flowers) (詩・佐久間郁子)
・天武天皇第3子・大津皇子オオツノミコは人望の
高い皇子でしたが幼時に母を亡くし、血族は
伊勢神宮に仕える姉の大来皇女オオクノヒメミコ
だけでした。父の死後、皇位継承の陰謀に巻
き込まれ、密告によって謀反人とされ、僅か
24歳で妻と共にみずからの命を断ちました。
西暦686年の出来事です。雄岳と雌岳が大和
の国境に並び立つ美しい二上山別名フタカミヤマ
山頂に彼の墓所があり、参詣者が絶えません。
・3首の短歌を中核とする佐久間郁子さんの清冽
な詩文は、自分の命運を知った彼が密かに大和
から、伊勢にいる姉に最後の別れを告げに行った
という伝承をもとにして構成された鎮魂の哀歌、孤独な血族の情愛が胸を打つ、現代筝歌の起伏
を、早春の頃に白い小花が下を向いて夢のように咲くアシビに寄せて、Sop・丸山夏季さん、
筝・彩里京鼓さんによる息の合った演奏で、CDに収録しています。→マザーアース株式会社
・「大津皇子を偲んで」(Lamento in memory of the Prince 0tsunomiko) という副題を添え
て、2006年に日本歌曲振興波の会の特別展に発表した作品でしたが、再演の機会に恵まれず
今日に至りました。前詞を伴う3首の短歌と、中間にはやや長い筝独奏(いわゆる手事)を
挟む典型的な筝曲の様式で書かれており、筝も多弦ではなく、手慣れた本来の13絃筝です。