[1623] 既刊楽譜の紹介

  • 2016.08.15 Monday
  • 20:39

❖ 箏とクラリネットの二重奏曲

・この楽譜は新刊譜ではなく、すでに2004年に

 マザーアース鷏から出版されているものですが、

 来月の再演を機に、はじめてブログ上での紹介

 をさせてください。

 

・タイトルとなった「巷歌コウカ」とは、ちまた

 の歌 という意味、「拾遺シュウイ」とは、拾

 い集めた という意味、欧文のタイトルは 

 The Melodies Forgotten

           ‥‥忘れられた歌の数々

 という表現になっています。もっとも、すべて

 作曲者のオリジナルな旋律であり、全体が創作

 なのですが、一先ずこのように「集めてきた」

 という体裁を採っている、4楽章(つまり4つ

 の旋律)からなる組曲(組み歌もの)です。

 

・4つの楽章にはそれぞれ、「一の歌」「二の歌」

 「三の歌」と曲名が付いていて、最後の4番目

 のものには、これが最後(フィナーレ)という

   意味で「吉利」キリ, つまり「切り」を祝辞化したタイトルが付いています。


・バロック期の教会ソナタの構成に似せて、この

 曲でも 緩−急−緩−急 の4楽章構成ですが、1曲

   目は3拍子のABA3部形式、2曲目は4拍子での

 2声インベンション、3曲目は左の譜例に見る

 ように拍子記号が示されていない即興的なファ

 ンタジア、終曲は再び4拍子、放埒とも言える

 ロンドで全体を賑やかにしめくくります。

 

・この作品では、演奏上どうしても箏が2面必要

 となります。左の譜面の冒頭に記されているよ

 うに、第3曲で使う箏の調弦が、たぶん他には

 類を見ないような奇妙な琴柱の立て方(調弦)

 を要求しているからです。通常は奏者の手前か

 ら高い音が始まり、しだいに低い方へ順番に降

 りてゆくのですが、ここでは、ちょうど中程で

 いったん低い音に達し、それから別な音を鳴ら

 しながら高い音に戻る、という、分散和音の

 響きの面白さが味わえる、新しい試みを行い、

 僕自身は十分満足できる成果が得られました。

 

・1982年の京都での初演以来、かなりの回数で再演が行なわれてきましたが、2面の箏を舞台

 に用意するために、ときどき予想外のことが起ることに気付きました。別調弦の箏による3曲

 目が終り、4曲目を弾くために箏奏者がもとの箏に移動する時に、聴衆の何人かの方が「あ、

 演奏が終了した」と早合点され、箏奏者が立ち上がるやいなや拍手が起るのです。まあ、拍手

 を頂くのは有難いことなのですが、今度のサロンでのお客様は如何なさるでしょうか。
 

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