[1821] 新しい作品の完成 (31) 「海を旅ゆく」

  • 2018.09.15 Saturday
  • 20:13

❖ あまり試みた事がなかった箏の独奏曲

・邦楽演奏グループ「邦ダッシュ」という三重奏

 団(トリオ)の一員で、箏も尺八もこなす折本

 大人樹氏から、新曲を委嘱されました。来年に

 予定されている氏の神戸リサイタルのために、

 箏のソロの曲を書いて欲しい、できれば神戸に

 関わりのある内容のものを希望、との事。さあ

 僕にとっては難題となりました。これまで、箏

 単独の、それも歌をともなわない器楽だけでの

 5分以上の独奏曲を、書いた事がないのです。

 

・また、邦楽と神戸をどのように結びつけるのか、

 僕の知るかぎり神戸といえば、源氏物語の須磨・

 明石の巻か、平家物語の敦盛・熊谷直実の一件

 などしか思い浮かばず、むなしく日時が経って

 しまったのですが、ある日、突然別の切り口が

 啓示のように現れました。

 

・漂泊の歌人とも呼ばれる若山牧水が、23歳の帰

 省のときに試みた中国地方への長旅、その時に

 詠んだ短歌が、歌集「別離」に収められています。

 ・山ねむる 山のふもとに海ねむる かなしき春の国を旅ゆく そしてこのすぐ後に、岡山県

 二本松峠あたりで詠まれた絶唱:

 ・幾山河 越えさり行かば 寂しさの終てなむ国ぞ 今日も旅ゆく  が収められています。

 

・中国山脈と瀬戸内海に挟まれたあの地方の情景が、目に浮かびます。上掲の最初の短歌に想を

 得て、「海を旅ゆく」という表題で、約5分半の独奏曲を、(A-B-A)-(C-D-C)-(A-B)-coda、

 基本的には3部形式の構成でまとめました。牧水がその1年前に知り合った女性への恋心が

 次第に深まりつつあった、若き日のやるせない情感、最終的には成就しないまま終った初恋

 ‥‥‥その青春の想いを、箏13本の絃に託しました。

 


 

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