[2002] 新しい作品の完成 (36) 「序の歌」

  • 2020.02.09 Sunday
  • 18:28

❖ 立原道造の名詩を箏の弾き歌いで          

前項[2001]の制作がひとまず完了した昨年12

 月22日、すでに年の瀬の気ぜわしい最中でし

 たが、大掃除もそこそこのまま、すぐにこちら

 の歌曲の制作に着手しました。松本市の楽友で

 25絃奏者の田中静子さんから、夏に依頼を受け

 ていた弾き歌いによる歌曲の作曲、テキストと

 なる詩は、田中さんからの指定で、立原道造の

 「序の歌」にしてほしい、とのこと。幸いな事

 に立原道造の詩は、僕も遥かな昔からヤミクモ

 に好きだったので、二つ返事で請け負った次第

 でしたが、実際には屈折の多い表現で、彼の詩

 の奥行きを思い知る事になりました。正月休み

 を返上しての「労務」でしたが、なんとか年が

 明けて1月7日の深夜に、8分余の箏歌に完成

 する事ができました。

 

・25絃箏のための箏歌「序の歌」

            (詩:立原道造)(2020)

 

・1939年に24歳の若さで没した立原道造、今回の

 箏歌の詞章となった「序の歌」は、彼の死後に編纂され、出版された詩集「優しき歌 ll」

 の冒頭に置かれている詩篇で、彼が好んで用いたソネットという形式で書かれています。

 我々が日常使う判りやすい言葉で、クリアに書かれているのですが、文脈を辿って行くと、時に

 難解な飛躍に遭遇し、優しい言葉の草むらの中で立ち止まってしまう、そのような不思議な影を

 伴っている詩篇です。自分が発する言葉、つまり自分そのものであると同時に、自分から離れて

 行く他者である「詩の言葉」に対する深い愛着、ほとんどナルシズムに近い情感が、この4節の

 詩型に託されていると、僕は予感するのですが、これを音楽としてまとめるに際しては、ソネ

 ットの持つ A-A-B-B という形式感から外れて、むしろ 音楽の冒頭に現れるモチーフを最後まで

 幾度も回帰させる、いわばリトルネロ(しいて書けば A-A-B-A に近いような) 形式でまとめてみ

 ました。全体の長さは約8分程度、田中さんが希望しておられた時間の長さに収まりました。チ

 ラシが刷り上がったら、再度また演奏会のご紹介をする積りです。ようやく数日前に浄書が終わ

 ったので、譜面の冒頭をご覧いただく次第です。 

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