・3月23日(土)10:30開演(終演21:00予定)
・住友生命いずみホール(大阪城公園,城見1丁目)
・昨年6月にも自分のリサイタルを今福音楽堂で
昨年度の「あおによし音楽コンクール奈良」の
一般部門・金管楽器において第2位を受賞され
ました。たゆみない研鑽の成果です。そして、
各部門での多くの受賞者の一人として、この度
大阪では素敵な、あのいずみホールで受賞記念
の披露演奏会に出演の予定です。総数60余名に
及ぶ受賞者の出演なので、演奏時間は限られて
いますが、この日のために彼が用意した曲目は
僕の旧作;
・ユーフォニアムとピアノのための幻想曲
「うるわしきもの流れゆくなり」(1990)
です。八木重吉の短い詩稿によるソナタ形式の
作品、これまで幾度も小野氏が採上げて公演し、
今では完全に、彼の心そのものになっています。
彼が舞台に立つ本番の時刻は17:20の予定とか、
その頃を見計らって、僕も聴衆の一人として演奏を聴きに行くつもりです、ご成功を祈りつつ。
・3月6日(水) 午後7時開演
・兵庫県立芸術文化センター・
神戸女学院小ホール(阪急西宮北口)
・われわれ日本歌曲関西波の会の顧問となって
頂いている青山恵子さんは「日本歌曲の実践
的研究〜伝統音楽との接点」というテーマで
声楽の分野では日本初の博士号を取得された
貴重なメゾ・ソプラノ歌手です。このたび、
ソプラノの三縄みどりさんとのジョイントの
形で、神戸と(秋の)松山で演奏会を開催され
る運びとなりました。ピアノは秦はるひさん、
年来の、心許せる東京藝大のお仲間と、お見
受けします。
・「今、燦キラめいて」と表題され、前後2部か
ら成る公演、全体の構成や選曲にも出演者の
こだわりが感じられ、ありきたりの日本歌曲
を並べたような舞台とは異なって、聴き易く
しかも清新な日本歌曲が揃えられている感じ‥‥‥とても興味をそそられる構成内容です。
・前置きが長くなりましたが、このジョイント演奏会の中で、僕の旧作の女声二重唱曲が採上
げられることになり、青山さんから過日ご連絡をいただきました。今す
・二重唱「花あかり」(1992)(詩・相馬梅子) 春の到来を告げるこぶし(辛夷)の花を幻想的に
歌った内容で、作曲当初はかなり多くの友人が歌ってくれましたが、その後に作曲した「月
に寄せる子守歌」(2004)(詩・貞松瑩子)が出版されたのを機に、「花あかり」は忘れられた
ように30年もの歳月が経ちました。5分に達しない小品ながら、声とピアノが三つ巴になって
頂点に到達する部分や、2声が「語り」で対話する部分など、歌手にチャレンジして頂く要素
もある作品ですが、僕自身はこの曲を密かに大切にしていて、2018年に出版した「千秋次郎
歌曲集2」には、忘れずこの作品を、曲集に収録しています。 今回の公演において、記念すべ
き演奏記録が残されることを、心から期待しています。
・響きが良くアットホームな小ホールにおいて、舞台実績ゆたかな三人の皆様が、それぞれの想
いで選曲された曲目を、こちらも心ゆくまで堪能させていただき、内容の濃い演奏会でした。
春まだき寒い一夜でしたが、心は満ち足りて西宮からの帰途につき、やや遅く帰宅しました。
今回のステージに採上げていただいた「花あかり」の二重唱、お三人にとっては初演だったと
の事ですが、緩急自在、息のあった見事な構築を聴かせていただき、提供作曲者として心から
感謝しています。お疲れ様でした!‥‥秋の11月には青山さんの郷里で、同じプログラムでの
公演が予定されています。再度のご盛会・ご成功を祈っています。
]]>
・前トピックに続き、もう1冊の新刊楽譜‥‥
・(2) ソプラノと筝のための「馬酔木」(2006)
(Ashibi Flowers) (詩・佐久間郁子)
・天武天皇第3子・大津皇子オオツノミコは人望の
高い皇子でしたが幼時に母を亡くし、血族は
伊勢神宮に仕える姉の大来皇女オオクノヒメミコ
だけでした。父の死後、皇位継承の陰謀に巻
き込まれ、密告によって謀反人とされ、僅か
24歳で妻と共にみずからの命を断ちました。
西暦686年の出来事です。雄岳と雌岳が大和
の国境に並び立つ美しい二上山別名フタカミヤマ
山頂に彼の墓所があり、参詣者が絶えません。
・3首の短歌を中核とする佐久間郁子さんの清冽
な詩文は、自分の命運を知った彼が密かに大和
から、伊勢にいる姉に最後の別れを告げに行った
という伝承をもとにして構成された鎮魂の哀歌、孤独な血族の情愛が胸を打つ、現代筝歌の起伏
を、早春の頃に白い小花が下を向いて夢のように咲くアシビに寄せて、Sop・丸山夏季さん、
筝・彩里京鼓さんによる息の合った演奏で、CDに収録しています。→マザーアース株式会社
・「大津皇子を偲んで」(Lamento in memory of the Prince 0tsunomiko) という副題を添え
て、2006年に日本歌曲振興波の会の特別展に発表した作品でしたが、再演の機会に恵まれず
今日に至りました。前詞を伴う3首の短歌と、中間にはやや長い筝独奏(いわゆる手事)を
挟む典型的な筝曲の様式で書かれており、筝も多弦ではなく、手慣れた本来の13絃筝です。
]]>・昨年の秋にマザーアース社から出版された僕の
楽譜は、参考音源CDを添付した新刊2種に加
えて、既刊の楽譜に新たに参考音源CDを追補
した増補版が2種、以上4種類の楽譜がすでに
発売となっています。ご案内が遅れましたが、
逐次ご紹介しようと思います。まずは、新刊の
2種について‥‥
・(1) 筝とピアノのための「六段唱和」(2022)
(Six Steps Duo)
邦人作曲家による筝独奏のための(歌を伴わない)
器楽曲の嚆矢とされている「六段の調べ」は、
元禄時代に八橋検校によって作曲された、邦楽
の歴史における聖なる古典、とも呼ぶべき名作
です。そしてこの曲に対して、もうひとり別の
演奏者が別の筝で合奏を試みる、替え手という
「雲井六段」のような取組みも、古来より行わ
れ、この曲の魅力を高めています。
・「八橋検校に寄せて(A Tribute to Yatsuhashi-
Kengyo) 」という副題のついた、この譜面「六段唱和」は同様の発想をもとに、八橋検校の
原曲はそのままに、これにピアノが加わって和洋合体のセッションを試みるというスリリング
な内容の音楽です。もともとは筝とハープのための二重奏曲として1985年に作曲したもので、
初演後も幾度か再演されていますが、最近になってハープのパートを軽めのタッチのピアノで
演奏してみたところ、これはこれで、ややクールな情感がとても面白く、今回の刊行に際して
部分的にピアノの語法に書き改めて、提供させていただく事にしました。ハープに似せる必要
はなく、筝の響きに呼応し合える豊かなピアノの表情を、ピアニストに期待しています。
・楽譜に添付されている参考音源CDは、筝・彩里京鼓さん、pf・飛澤直子さんの絶妙な重奏が
素敵です。ピアノが重くなく、しかも的確な表情で歌っています。→マザーアース株式会社
・なお、混乱を恐れずに言えば、マザーアース社からは、これとタイトルの類似した
フルート、オーボエ、筝のための「新唱六段」(2006)(Six Steps Collaboration)
という別種の楽譜も刊行されています。「六段唱和」の21年後に別の委嘱のもとに作曲した
管楽器とのトリオなので、全く別種の「より線的な音楽」を展開します。この曲については、
公開中のユーチューブ画像の事と合わせて、昨年のトピック[2308] でご紹介しているので、
別途ご参照ください。フルート、バイオリン、筝によるトリオでの演奏ですが、面白いです。
謹賀新年 コロナ災禍が一段落し、以前の日常が戻ってくる筈でしたが、平穏無事とは
とても言えない厳しい国際状況や、新年早々の能登大津波・大地震・被災者の方々の救出と
援護にいとまなく、日常が振り回される中で、ともかくも6年目の令和がスタートしました。
僕自身については、昨年秋11月下旬まさに 89歳を越えたその頃、北大路欣也主演による
時代劇ドラマ「三屋清左衛門残日録」なるシリーズの有るを識り、初回から最新7回までを
CATV436にて通看、いささか感銘するところ多大でした。すでにご存知の事と思いますが、
昨年6月に、これまで務めさせて頂いていた「日本歌曲 関西波の会」会長の座を、力倆ある
テノール・河田早記氏に引き継いでもらう事となり、今は相談役、すなわち隠居の身となり
新年を迎えています。ドラマの中で、清左衛門がみずからの日記の冒頭に書き記している
「日残リテ 昏ルルニ未ダ遠シ」という標語‥‥僕自身の現在の気持ちを、ひたと言当てて
余すところ無しです。‥‥とうてい技倆・風格ともに及びもつきませんが、当年もまた細々
ながらも、思いを澄ませ歩を進める所存です。何とぞご支援よろしく! 千秋次郎
]]>・12月2日(土)午後2時開演
・ピッコロシアター小ホール(尼崎塚口)
・すでにトピック[2315]の冒頭で経緯をお伝え
したように、我々の関西波の会の新会員が増
えた事情もあり、今年は出演者が二手に分散
し、年2回の、性格の異なる2公演を行う試
みに挑戦しました。
・6月20日京都アルティでの第8回定期演奏会
に続いて、はや今週末に迫っている新企画の
「サロンコンサート2023」には、新入会員の
皆さんと、6月に出演されなかったメンバー
の7名が、やや手狭ながらもアットホームな
ミニホールで、皆様をおもてなしします。我
々の会では初お目見えとなる新会員の歌声も
聴きどころでしょう。
・今回の冒頭第1部に予定されているのが、僕
の作品で、7つの小曲からなる次の組曲です;
・抒情歌曲集「散歩の向こうに」(詩・きのしたみのる)
1.「こんなに寒い朝だから」(1988)
2.「落葉がくれた絵具で」(1988)
3.「散歩道」(1988)
4.「樹下のアトリエ」(1993)
5.「コスモスの道」(1989)
6.「やさしさの木の実」(1989)
7.「となりの村へ帰ります」(1990)
どれも3分前後の短い歌曲の集まりですが、たまたま出演者数が7名だったので、各自が
どれか1曲を歌うことにして、今回は7名の通しで1冊を歌います。実はこの曲、すでに
今年の8月に亀岡市のガレリア響ホールで、会員の片山映子さんが歌ってくださっている
のですが、この時は、緻密な解釈のもとでの通し演奏、素敵な好演でした。果たして今回
は、どのようなステージになるでしょうか、これもサロンならではの、愉しみの一つです。
・演奏会がある日の空模様は、やはり主催する立場からは気になるものです。この日は幸運
にも、快適な青空のもとで、お客様を迎えることができました。そして予定通り、午後4時
には終演となり、まだ足もとの明るいうちにお客様に引き取ってもらう事ができました。
考えてみると、80名ほどの小さな会場で我々が演奏会を持つのは、これが初めてだったかも
知れないのですが、歌い手にとっても歌詞が伝えやすく、和やかな会場の空気とも相まって、
新しい出会いと発見があり、この形での演奏会を、できれば今後も残してゆきたい思いです。
・一冊の歌曲集を、メンバーが1曲ずつ受け持って全曲を通奏する、という、今回の第1部の
目新しい試みも、とてもスムーズに流れてゆき、あっという間に全7曲を歌い終えました。
作曲者の僕としては、演奏者の皆さんの好演に心から感謝しています。そして自分にとっては
さらに嬉しかった事があり、今は故人となられた きのしたみのる先生の奥様が、この作品を
初演してくれた当時大阪芸大の学生だった大島良介氏とともに、当日の会場に臨席された事で、
35年も以前の、きのした先生がお元気だった頃の、佳き思い出を語り合うことができました。
]]>
・二重奏曲「風の歌・水の歌」(1978)
この曲はもともと、親しいハーピストのため
に筝とハープの二重奏として作曲し、出版も
され、そのような特異な楽器の組み合わせが
必要な時に、しばしば演奏されて来ました。
最近では2022年に、この中の第二楽章だけ
が単独で演奏され、ユーチューブに公開され
ましたが、密度の高い個性ゆたかな演奏で、
すでにトピック{2236}で紹介させてもらって
います。
・親しくしている田中静子さんが、最近になって
この作品を筝とピアノで演奏してみた試みを、
ユーチューブに公開されました。あくまでも
試演のつもりだったそうですが、聴いてみると
これがなかなか面白いのです。包容的な響きの
ハープのパートが、やや先鋭で理知的なピアノ
の響きに取り変わった事によって、三楽章構成
のソナチネの各楽章の個性(ソナタ形式・歌謡
形式・ロンド形式)が鮮明に浮かび上がり、我
ながら、すっかり自分の音楽の虜になりました。このように無理なく楽器の交代ができたのは
一つにはピアニスト・青木資子さんの見事な曲の理解力にあると、僕は思っています。第一楽
章の提示部第2主題に移る際の鮮やかな転換の呼吸、再演部へ戻りの必然性など、些細な采配
がとても自然です。筝を演奏している田中さんは、屈折の多い第二楽章の即興の部分で、自由
に個性を発揮しておられ、やがてそれらが、はしゃぎ過ぎず節度ある、活気に満ちたフィナー
レのロンドに結集する趣きが、結果的にはとても良くできていると思います。音量バランスな
ども問題なく、綺麗に仕上がっていて、ぜひ多くの方に一聴してみて頂きたいと思います。
・この映像に達するには、前トピックの場合と同じ要領で、
shizuko kotoチャンネル YouTube という文字列を検索し、そこから {動画}へ進んで
見つけ出してください。なおこの映像の背景は、自然写真などではなく、ステージでの
お二人の演奏録画です。
]]>
・今年6月20日松本市で開催された「田中静子
25絃筝コンサート」のことは、すでに先行
ブログ[2313} でご案内・ご報告を行なって
いますが、その時のプログラムとほぼ同じ曲
目による演奏会が先月10月7日に、安曇野市
に建つ安曇野高橋節郎記念美術館で公演され、
ご来聴の皆さまに共感を持って聴いて頂く事
ができたと、田中さんからの連絡で知りまし
た。そして、しばらくして、当日の収録音源
をベースに、自然風景が付加されたYouTube
の映像が公開となりました。
・公開された映像の中には、僕の曲が2作品、
どちらも上記松本市で初演した作品の再演で
すが、田中さんが選んだ清潔な桜花の風景写
真をバックに、演奏が流れます。
(1)フルートと25絃筝のための
「山桜譜」(2005/2023)
2003年に書いた「湖松譜」という曲と一対に
なるように作曲した、もともとピッコロと17
絃筝のための二重奏ですが、昨年になって部分的な拡大改定を行い、これで一対としての
バランスが取れるようになったようです。フルートと低音25絃筝で演奏した6月の松本公演
(改定初演)の時には、やや筝の響きが重厚すぎたので、今回は部分的に書き直し、標準的な
25絃筝で演奏して見ました。こちらの方が華やかな桜気分が味わえてベターかと思います。
ただ、心のこもった熱演には違いないのですが、会場の響きがデッドなので、やや音の広が
りに欠ける演奏になりました。いずれまたフルート塩嶋氏との共演で、次なる録音の機会が
やってくることを期待しています。
(2) 筝曲「鳥の歌・晏晏」(詩・高橋節郎)(2023)
・ 今回のコンサートの会場となった高橋節郎記念美術館の入口に置かれてるオブジェ(もちろん
高橋氏の作品)に記されている5行詩をもとに、羽ばたくような明るい筝歌(弾き歌い)に
曲付けして見ました。再演でもあり、田中さんがとても気に入ってくださって、伸び伸びと歌っ
ておられ、今後回を重ねれば、さらに充実した歌になると期待しています。
・以上の2曲、ユーチューブに到達するには shizuko kotoチャンネル YouTube という文字列
を検索し、そこから[動画]の項目へ進めばOKです。僕の邦楽作品で、田中さんが演奏されたナ
ンバーは、全てこのブロックに収まっているので、これからも訪問してあげてください。
]]>・11月14日(火)午後6時開演
・東京文化会館小ホール(上野公園)
・我々の日本歌曲振興運動の拠点とも呼ぶべき
東京の波の会、昨秋の第5回公演に引き続き、
今年も来月11月に、新作発表の催しとしては
新組織移行後の6度目の定期演奏会を、いつ
もの東京文化会館(小ホール)で開催の運び
となりました。
・今では単なる名誉会員の一人に過ぎない僕の
許に会から連絡があり、今回また僕の旧作を
一曲、当夜のプログラムに採入れてくださる
との事。思いがけないご厚意に感謝していま
す。それで、昨年度の「チェロの四季」同様、
過去の東京での初演で評価を頂いた次の歌曲
を、来たる14日に再演して頂く事にしました。
・「十七才」(詩・佐久間郁子)(1990)
・詩の内容については、今回のプログラムに記載
予定の、50文字紹介コメントが的確でしょう;
[‥‥すでに遠き明治・大正・昭和の三代、それぞれの時世に生を享けし乙女十七才の想いを
時節の歌に託して‥‥ ] 4節から構成される歌詞ですが、第1節は和風、第2節は洋風、
そして残りの2節は昭和ポップ時点での今風、といういずれも6行からなる各節を、それぞ
れの曲趣にまとめ、しかも全体が支離滅裂にならないよう統一を図るという大難題、果たして
解決できたかどうか、作曲者にとっても、まさにスリリングな一興です。
・ナーバスな日々が続いていたので、東京の空模様が心配でしたが、幸い雨も降らず夜分過ぎ
までは穏やかな晴れでした。いつも感心するのですが、今回も東京文化(小)が老若来聴者
の皆さんんで満席に近い盛会となりました。響きの良いホールで多くの皆様に聴いて頂ける
のは、提供するサイドからは至福のひとときです。演奏が終わって静寂の数瞬があり、その
後に続く拍手の興りかたで、いろいろな事がわかるのですが、今年もお二人の素敵な演奏で
多くの共感が得られたものと、今回も有難く思っています。
]]>
・10月27日(金)午後6時半開演
・京都府民ホールALTI (御所西、烏丸一条下ル)
・遠く1965年に創立され、今年58周年を迎える
京都生まれのフラワー・コーラスの皆さんが、
思いがけず、僕の合唱組曲を最初のステージで
歌ってくださいます。京都人にはお馴染みの、
虎屋さんや片山能楽堂と同じ並びのアルティで、
今週金曜の秋夕公演です。
・チラシにも「まだまだやりますコンサート」と
銘打っておられるように、大所帯の歌い手皆様
の大半が、相当の年期を積まれた”つわもの揃い”
と拝され(チラシではおぼろげながら)指揮の
富岡健先生のもとで、これまで熱心に活動して
こられた、その貴重な努力と研鑽の成果だと、
僕は感服・期待しています。
・指揮者・富岡健氏について、ご紹介が遅れました
が、以前、僕と同じ大阪芸術大学での同僚だった活動的な合唱指導の
メンバー、今回僕の曲を演奏していただく得難いご縁を、ありがたく感謝しています。氏の
音楽に期待して、実は一度も練習に立ち会っていないのですが、本番での仕上がりを心待ちに
待っているような次第です。ご成功を祈っています。
・演奏される曲目の紹介が最後になりましたが、京都の四季を歌った小川淳子さんの5篇の詩に
よる ・女声合唱組曲「京都・春から春へ」(1997)(作詩・小川淳子) です。26年前に
初演されて以来、幸いにも全国の多くの合唱団の皆さんによって採り上げられ、好評を得て来
ました。直近のところでは、昨年2022年のことですが、やはり在洛の女声合唱団/アンサン
ブル・フローラ(主宰・桐山都喜子さん)の皆さんによって再演が行われています(そちらの
ブログには、この作品についての補足解説も書かれているので、ご参照ください)。
・自分にとっては幾編かある「京都シリーズ」セットの中で、最初に手掛けた「春から春へ」‥‥
今から見ると、意気込みばかりが先立って、いまだ十分に合唱の響きが把握しきれていない
未熟な小節が、今も気になっているのですが、永年の経験豊富なる富岡健氏による解釈の宜しき
を得て、今の春から翌年の春まで、清少納言のひそみに倣い、ひととせの京の「四季めぐり」を
会場の皆様とともに、僕自身も会場で味わわせて頂こうと思っています。
・朝のうちは快晴で、何も問題は感じなかったのですが、午後からナーバスな空模様となり、僕が
すでに京都に移行していた午後4時ごろからは、激しい雷鳴を伴う夕立が襲来、午後6時からの
開場時間に聴衆の皆様が来ていただけるか、とても危惧しましたが、その後は小降りとなり、嬉
しいことに開場時間を待たず、大勢の皆さまが来聴され、開演の頃には座席がほとんど埋まる程
の大盛会‥‥やはり、創立されてから58年という歴史の積み重ねは凄いものだと感服しました。
・近年、どこの合唱団も会員が高齢化し、メンバー数が減少傾向とのことで、本合唱団も例外では
ないかと思うのですが、それでも総数30名近い団員の皆さまが、創立の中核人とされている原納
優子さまを中心に、力を合わせて頑張っておられ、包容力ある指揮者・富岡健氏の許で「心から
心への音楽」を紡いでおられました。終演後の打上げにも参加させて頂きましたが、ホットで率
直な家族のような盛り上がりでした。得がたいご縁を大切に、将来また僕の作品を採上げて頂け
る日が来ることを望んでいます。お疲れさまでした!
]]>
・8月20日(日)午後2時開演
・ガレリアかめおか響ホール(亀岡市余部町)
・われわれ「日本歌曲関西波の会」の古くからの
仲間の一人・片山映子さんが、気の合ったピア
ニスト・井上なおみ さんと共に、この夏8月に
ジョイント・コンサートを開催されます。京都
嵐山に隣接し、明智光秀の居城があった亀岡市、
僕の勝手な想像では、京に近い緑茂る山林都市
と言うイメージですが、現在お二人とも当地の
住人で、同じ亀岡市出身のサクソフォーン奏者
をゲストに迎えて「音楽の花束 Vol.3」と題し、
充実した”ふるさと公演” を予定されています。
・ソプラノの片山さんが、井上さんのピアノで歌
われる曲目の一つに、思いがけなく僕の作品が
採り上げられていました。7曲の小品から構成
されている組曲なのですが、
・抒情歌曲集「散歩の向こうに」(詩・きのしたみのる)(1988~1993)
・「こんなに寒い朝だから」「落葉がくれた絵具で」「散歩道」‥‥‥など、
それぞれの曲目は、初演以来それなりに再演されているのですが、7曲全曲の通奏再演は久しく
途絶えていたものですから、作曲者としても嬉しく、また、今は亡き詩人・木下稔氏へのご供養
にもなる事と感謝しつつ、会場に伺うのを僕も愉しみにしています。ご成功を祈りながら!
・いつもなら多少は、都会を離れた自然溢れる地方だったら、朝夕かすかに「夏の別れ」を感じて
も良い時節なのですが、いっかな今年の夏はこの亀岡の城下町にも炎暑が居座り、あまり快適な
小旅行にはなりませんでしたが、初めて伺ったユニークな市民センターでのコンサートは、演奏
者の知り合いの皆さんが多く、とても熱心な演奏会場の雰囲気が嬉しく、こういう種類の公演を
地元でレベルを落とさずにやれるのは、素敵なことだと感じました。ご盛会おめでとう!とても
良い気分で、会場を後にしました。井上さんが歌ってくださった、僕の7つの歌のセット。ただ
の一度も練習に付きあったことはなく、お二人の解釈に任せていたのですが、伴奏の井上さんの
ピアノが、詩の内容に対する抜群の解釈で、日本語の言葉がよく聞き取れる(これが何でもない
ようで、実は大変)片山さんの歌を見事に引き立てて、尋常な演奏ながら、心に残る素敵な舞台
となっていました。ご成功おめでとう!チャンスがあったら、ぜひまた二人のコンビで、僕の他
の歌も取り上げてみてください!キワモノではないけれど、ちょっとした佳曲を提供しますね。
・7月8日(土) 午後2時開演
・ザ・ハーモニーホール(小ホール)(松本市島内)
・松本市や諏訪市を中心に、20絃筝や25絃筝で
演奏活動を展開しておられる皆さんによって、
”二十絃筝ポプリ”というグループが結成され、
切磋と親睦を兼ねての充実した"持寄り演奏会"
がこれまで何度か開催されているのですが、
楽友・田中静子さんもメンバーの一人で、この
7月に開催された直近の演奏会では、数年前に
彼女によって初演されたペア構成の組曲が、
再演されました。
・二十五絃筝独奏のための「ふたつの秋の色」
(Twin Autumn Scenery)
第1曲/桜落葉 (2007)
第2曲/野菊路 (2009)
・作曲の経緯などについてはトピック[1727]に、
ユーチューブに配信された参考音源などに関し
ては、トピック[2208] の後半部分をご参照く
ださい。僕自身も当日の会場には伺えませんでしたが、深紅色vs淡紫色‥‥秋を彩る二つの
対比的な色、対比的な情感が、簡潔な二つの楽章となって、会場を満たしたことと想像して
います。この文章を書いている現在、僕自身は彼女のために次なる新曲に着手した処です。
・7月2日(日) 午後2時開演
・静岡市 冷泉山秘在寺ホール(葵区郷島)
・すでに先掲トピック{2310}でも紹介しています
が、開かれた寺院の本堂を会場にして、和楽器
による親しみやすい演奏会を、住職の武山博子
さんがお仲間と共に、定期的に開催しておられ
ます。今年4月に続いて、この7月には「七夕コ
ンサート」と題して、もと「わらび座」俳優の
永野修司氏を客演に招き、民話朗読のステージ
も加わっての、変化に富んだ企画を、実現され
ました。
・日程がつかず、本番には伺えなかったのですが、
有難いことに今回も、僕の旧作から次の2作品
を採り上げていただき、感謝しています。
(1) 二重奏「葉がくれの花」(1997)
(2) 二重奏「巷歌拾遺」(1982)
・お仲間の中に笛の名手がおられるので、上記2曲、
いずれも筝と笛とで無理なく演奏されましたが、もともと(1)は、洋楽器のオーボエと筝による
二重奏曲で、新古今和歌集の中の式子内親王の和歌「残りゆく 有明の月の洩モる影に ほのぼの
落つる 葉隠れの花」という想いを、 単一の楽章にまとめた作品です。また、(2)の原曲の姿は
クラリネットと筝のために書かれた4楽章からなる組曲で、7年前のトピック[1623} でも紹介
していますが、この曲の第三楽章では超独自の調弦による別筝を使うので、それだけのために
舞台に2種類の筝を用意しなければならず、再演の機会に恵まれなかったのですが、久々に原曲
通りの全楽章演奏を行っていただき、聴き手の皆様にも好評だったとの事、嬉しい限りです。
・10日ほど前に公演が終わった 小野康行氏恒例
の演奏会については、このブログでも二つ前の
トピックでご案内していますが、不本意な事に
その日僕には別の作品初演(松本市)が重なり、
やむなく小野氏の方を欠席するハメになりまし
た。‥‥幸いにも松本初演の弾き歌い箏曲も、
フルート・筝の二重奏も、無事に初演を終え、
また翌朝には小野氏からのメールで、大阪での
この曲の決定版初演も無事終了した事を知り、
重なる成功に、ひとまず肩の荷を降ろした次第
です。
・それから程なくユーチューブ上に、小野・牛丸
・前川の各氏による、この曲の演奏映像がアッ
プされ、僕も初めて実音での自分の曲を聴く事
ができました。サックス(alto)の音色が活きる
ように移調し、それに呼応するユーフォの音崩
れ(値崩れならぬネクズレ)が生じないよう、
パート細部を調整した今回の労多き改訂を経て、
ようやくバランスのとれたアンサンブル作品に
仕上がったように思います。譜面の引渡しが遅れたにもかかわらず、破綻のない好演でした。
[決定版]
・アルトサックス、ユーフォニアム、ピアノのための三重奏曲「追憶の季節」(2014/2023)
・各自それぞれにお仕事を持たれ、時間的に余裕のない中で、素敵な改訂バージョン(決定版)
を初演していただいた事、心から感謝していますが、あえて希望を言えば、今後の演奏では
さらに自由でゆとりのあるアンサンブルを目指して頂きたいと願ってます。バッハのブラン
デンブルク協奏曲には及びもつかない拙い作品ですが、互いに主題を歌い交わしつつ、懐か
しい追憶の境地に、闊達に歩を進めてほしいと願っています。→→ 音源映像に至るには、
"小野康行 追憶の季節”で検索してみてください。「動画」のトップに現れます。
]]>
・6月24日(土)午後2時開演
・ザ・フェニックスホール(大阪梅田新道)
・昨年度の京都公演に続き、さらに会場規制が
緩和された中での(全て自由席、など)定演
開催の運びに至りました。ご案内が遅くなっ
てしまいましたが、今週の土曜いつもの梅新
のフェニックスです。皆様のご支援のもとで、
会員数が増加し、一晩で全員の演奏を聴いて
いただく事が困難となりました。そのために
公演スタイルを見直す意味で、この冬12/02
(金)尼崎ピッコロシアターで、もう一回、第
2の演奏会を開催することになり、出演者を
分散、今回は会員8名による公演を行うこと
になりました。このような試行錯誤の試みを
向こう2年間に実行して、お客様のご意見も
伺いつつ、妥当な方策を見つける予定です。
・なお、一身上の懸案について、以前にも触れ
たように、やむを得ない事情で会長職に長く
居続けてしまいましたが、これを機に会長職を退く事が、過日の年次総会で承認され、後
続を新会長・河田早紀氏に委ねる事となりました。長期にわたるご支援、まことに有難う
ございました!心より感謝申し上げます。
・前置きが長くなりましたが、今回、会員メンバーによって歌われる自分の作品は4件……
独唱2曲、二重唱1曲、それに女声お祭り歌?(譜面上はソプラノ4重唱)が1曲です。
(1) 二重唱「月に寄せる子守歌」(詩・貞松瑩子)(2004)……これまでも何度か再演され
ている、素朴な3節構成のララバイ。「おやすみ、おやすみ……」と互いに歌い交わす
安息のリフレインが印象的です。
(2) 「谷底の松のこと」(詩・河野 律)(1889)……30数年前、関西音楽舞踊会議という
グループに参加していた頃の作品。唐時代の詩人・白居易(白楽天)の詩をもとに、
大胆にリライトされたバラード詩篇。元々は男声バリトンのために書かれた歌曲でした
が、今回、仲間のソプラノ・小山 操さんに歌ってもらうために、音域を変え、部分的に
リメイク、7分弱に抑えました。中国音楽に特有のモチーフが、全曲を統一しています。
(3) 「ふるさとの」(短歌・石川啄木)(1955)……前回の京都公演でお聴き頂いた島崎藤村
の「初恋」と同じ年に作曲した習作に近い内容ですが、メロディの歌い癖やピアノでの
サウンドの好み、などに現在の自分を感じます。啄木の歌集「一握の砂」の中の「ふる
さとの訛りなつかし」と「ふるさとの山に向かひて」を前後に選び、中間に「やはらか
に柳あをめる」の北上川の情景を挟み「啄木三首」として構成ました。
(4) ソプラノ四重唱「キャッキェローニ(chiacchieroni)の歌」(詩・細江和夫)(1993)……
今は亡き楽友・声楽家の M I氏には、発声法の特別レッスンを受ける門下生が数多く集
まっていたのですが、その彼からの提案?要請?を受けて、4人のソプラノが同時に愉
しめるような(発声練習を兼ねて)曲を、試みに作って提供したのが、この小品です。
chacchieroni とは、イタリア語 chacchieroneの複数形で、本来の意味は「おしゃべり
屋さん」「噂好きな人」の意味ですが、ここでは敢えて「歌う仲間」としています。
日本語の歌詞ですが、途中に必須のイタリア歌曲が現れては消えます。いささか不謹慎な
「まぎれ込み」が、この曲の取り柄でしょう。今回は4人どころか7名が蝟集(寄って
たかって)、楽しく舞台のトリを盛り上げます。
天候不順の中ですが、多くのご来聴を心待ちにしています。
・これに先立つ数日間の空模様がナーバスで、ちょうど雨とぶつかるか、と覚悟したのですが、
幸いにも雨にはならず雲の多い晴天、その分だけ気温も上がらず、外出には却って好都合だっ
たかも知れません。有難いことに、予定していた席は埋め尽くされ、無事予定時刻に終演を
迎えました。上演に際しての制約が、今年はかなり緩和されたので、歌い手たちも伸び伸びと
声を届けることができ、こうして徐々に、旧に復しての演奏会を進めて行けそうです。ご来聴
の皆様に感謝申し上げます。
・微力ながら会長として努めてきた幾年かの最後の催物、向後は有能な後輩・河田早紀氏の手腕
に委ねたいと思っています。もっとも、今後も折に触れて自分の作品が採り上げられるて機会
はあることと思います。
・今回ステージに乗せてもらった上記の、形態も雰囲気も異なる4種の歌曲、それぞれの歌手の
皆さんが、心を込めて歌って下さいました。歌唱の中での無声音の扱いや、セリフ語りの扱い
など、さらに研鑽を積んでほしい点はありましたが、仲間の歌手の皆さんとも、長いお付合い
だったナ、としみじみ追想しています。自分にとって、いわば「お名残狂言」のような心で臨
んだ公演でしたが、上記のように、折に触れて、また新曲・旧曲取り混ぜて、今後もお聴き頂く
事になりそうです。変わらぬご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。
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・6月10日(土)午後5時30分
・今福音楽堂(地下鉄・今福鶴見駅)
・演奏家にとっては活動するに困難なここ数年、
それでも我が楽友・小野康行氏は昨年の公演に
続けて、今年も同じ演奏会場で1年間の成果を
仲間とともに発表されます。有難いことに、僕
の作品も2曲、プログラムに加えられていて、
皆様に聴いていただく時を待っています。
・(1) 「里山の時」(2000) →Euph+Pf
・(2) 「追憶の季節」(2014/2023)
→A.Sax+Euph+Pf (決定バージョン)
・曲(1)の欧文タイトルは "A Walk in the Woods"
と呼び、先行トピック[2303]でも紹介しました
が、アメリカで出版されたために、海外演奏家
やユーフォ学生の間では愛好曲になっている小品
です。小野氏がこの曲を吹くのは、僕の記憶では
これまで無かったように思うのですが、きっと豊
かな歌心に満ちた演奏になる事と期待しています。
・曲(2)の欧文タイトルは TRIO "Yearning for the Old Days" です。昨年の演奏会では、初演と
せずに「試演」という形で皆様に聴いていただいたのですが、同トピックの最後に付記した
(赤い文字での)事後報告にもあるように、やはり危惧していたように、核心となる中間部の
楽節の推移が、自分の意図したような響きにならず、ことにSaxが上ずった響きになってしまう
事が分かったので、この中間部の楽節を低く移調するなど、思い切って全体を調整し直しまし
た。そして決定版という事で、改めて今回これが初演という形で、皆様に聴いていただく次第
です。新年度となり、小野氏もサックスの牛丸悠太氏も、それぞれの職場に異動があり、練習
の時間が制約を受けて大変だったとの由、本番の無事なるご成功を祈っています。
・かく言う自分も、これは偶然ながら、当日6月10日は、前記の松本の演奏会と大阪での本会が
重なってしまい、こちらの演奏会には止むなく欠席、と言う、申し訳ない仕儀ですが、改めて
本番のご盛会・ご成功を、心から祈っています。
・この曲の初演は無事終了しましたが、程なく初演の映像記録が、小野氏によってユーチューブ
上に公開されています。その事とか作曲者からのコメントについては、後続トピック{2316]
をご参照ください。
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・6月10日(土)午後5時開演
・ザ・ハーモニーホール(小ホール)(松本市島内)
・恒例の松本静子さんの25絃リサイタルが、昨年
開催されてから、すでに1年が経ちました。国
の施策のもとコロナに対する我々の対応の仕方
にも変化が生じ、今年はわりと制約がゆるい中
での開催です。以前のような賑わいが戻ってく
ると良いですね。
・今回の定演は、白馬村在住フルートの塩嶋達美
氏をゲストに迎え、盛りだくさんなプログラム
で公演の予定です。予定されている全7演目の
うち、僕の曲が4曲予定されていますが、それ
よりも目につくのが、田中さん自身の作曲によ
る「木洩れ日」というソロの初演。じつは僕も
チラシを受け取るまで知らなかったのですが、
愛する楽器のために、これまで密かに創作の努
力を続けてこられた、その成果を、今回の公演
で聴かせてもらえるのは、大きな愉しみです。
・プログラム後半に組まれている僕の4作品は、次のような順序になっています。
(4) 筝歌「鳥の歌 晏晏」(2023)(詩・高橋節郎)‥‥すでに紹介したように、この3月に
完成、今回が初演となります。記念美術館に隣接する、漆芸家・高橋節郎氏の生家玄関
に置かれたオブジェ面に、この詩句が記されていて、すべての来場者を迎えます。詩の
心(つまりは作詩者・高橋氏の心)に寄り添うように、素直なメロディーによる弾き歌い
の筝歌を作りました。耳から入ってくる言葉だけで歌詞の意味が把握できるように、 歌
詞の順序を替えた個所もあります。今回が初演です。
(5) 筝歌「桜に寄せて」(2022)(短歌・高橋節郎)‥‥昨年度の公演で初演された弾き歌い
の筝歌で、これは高橋節郎氏が折々に詠まれた短歌から桜3首を選んで、曲にした内容。
やや季節を逸した再演ですが、前曲(4)とともに、氏の人柄が現れてくる好編です。
(6) 二重奏「湖松譜」(2003)‥‥以前の作品ですが、松本のこの演奏会では2年前の公演で,
初めて採り上げていただきました。もともとはピッコロ・十七絃筝のための曲だったのを
フルート・低音二十五絃筝に編成替えして試みた結果、なかなか良い、という事になった
ので、今回も同じフルート奏者・塩嶋達美氏の客演を得て、
志賀の浦 梢にかよふ松風は 冰コホリに残る さざなみの声 藤原良経
という和歌を背景に、昏い冬の琵琶湖に、なおも息づく明るい春への想いを歌います。
(7) 二重奏「山桜譜」(2005/2023)‥‥タイトルからも類推できるように、前曲の2年後に
完成したこの作品は、(6)(7)が一対となって琵琶湖の風物を歌っています。ただ、こちら
の曲は初演後、あまり顧みられる事がありませんでした。‥‥ やはり音楽内容が手薄で
聴き映えのしない作品だったのです。以前のトピックにも経緯を書いていますが、僕は
今回の再演を絶好のチャンスと考え、原曲にもう一つ別の主題を加えて、陰影の強い曲
に再構成しました。その意味で、今回の曲は改訂版というよりも、同タイトルでの別曲
という趣があります。その意味では初演に近い内容です。
さざなみや 志賀のみやこは荒れにしを 昔ながらの 山ざくらかな 平 忠度
平家一門の武人の中で、藤原俊成に師事していた歌人でもあった平 忠度 タイラノタダノリの
都落ちのエピソードは、いつも感銘に残るものです。この和歌は将にそれに関わるもの。
はるかな往時の天智天皇の大津京を偲ぶと見せかけて、実は目前に迫っている平家没落
の運命を予感しているこの和歌が、この音楽の背景にあります。(6)は「昏くて明るい」
それに対して(7)は「明るくて昏い」‥‥まるでマクベスの3人の魔女の予言のように、
屈折しながら一対になっている、このセットの、セットとしての初演に期待しています。
・ちょうどこの日が「梅雨の中休み」となったようで、用心のために忍ばせた傘は使わず
じまい となり、コンサート・ゴーアにとってはラッキーな日和でした。上記の解説では
触れなかったのですが、(4)の筝歌で僕は、弾き歌いしつつ、いわゆる「3度転調」を
する試みを筝の作曲に取り入れました。通常の方法では、琴柱をいくつも動かす必要が
あり無理なのですが、低音寄りの、あまり使わない絃を利用・工夫して、ともかく Es
からH の調に一気に移り、さりげなく再び Esの調に戻る楽句を、何箇所か作ったので
すが、実際聴いてみると、それが中々めざましく、3度転調特有の浮遊感があって気に
入りました。さらに今後も、この試みを続けてみようと思っています。ところで、もう
一方の(7)「山桜譜」の改訂初演、こちらは率直なところ、成功したとは言えませんで
した。低音二十五絃箏の響きが、やはり重く過ぎて、この音楽の背後にある平家滅亡の
「華やかな哀れさ」(マクベス魔女の言葉で言うと「明るいは暗い」)の感覚が、表出
できていないのです。田中さんも同じ感想を持っていたようで、次回の再演チャンスに
は、ひとまず、通常の 二十五絃筝で試みる事にしました。‥‥と言う事で、この先も、
山あり谷ありの作曲人生が待っているようです。
・4月9日(日) 午後1時開演
・大津市民会館大ホール(京阪石坂線・島ノ関)
・ようやく終息の兆しが見えてきたコロナ災禍の
もと、今年も"合唱ファスティバルおおつ"の公
演が来週に予定されています。
・昨年の公演にも参加され、僕の曲を1曲歌って
くださった混声合唱団・湖西ローズハーモニー
の皆さんが、今回もまた1曲、新たに練習に取
り組んでいただきました。初演と同時に音楽之
友社から出版された;混声合唱組曲「風に乾杯」
(詩・小川淳子)(1993)の中の最終曲で、
曲名は組曲タイトルと同じ「風に乾杯」という
4分少々の、いかにも組曲のフィナーレにふさ
わしい愉悦に溢れる曲です(この組曲の第1曲
と第3曲が、昨年に演奏されたという訳です)。
・かつての大阪芸大の教え子・田中陽子さん率い
る総勢10名にも満たないミニ混声合唱団ながら
直近となる昨秋の演奏会でも感じたことですが、いつも舞台の上での声量が豊かで、メンバー
の一人一人が自分の声で、音楽を愉しんで歌っておられるという充足感が、聴き手に伝わって
来るのです。合唱の原点は、ここにあるのでは無いでしょうか。今回もその歌声に期待します!
・いわゆるコロナ緩和の1年目で、だいぶ会場制限の枠が緩くなった筈でしたが、やはり合唱祭
と言う、多数の人たちが「集まっては散り」が繰り返されるわけなので、思ったよりも緊張感
の高い会場でした。湖西ローズハーモニーの皆さんも、メンバー数は減ったものの、意気揚々
と楽しい歌声を披露され、存在感のあるステージでした。今回は、練習にあまり時間がなかっ
たとか、そのためか、アンサンブルにやや統一感が不足のようでしたが、あともう1回だけ、
僕から新しい作品を提供する約束で進んでいます。少ないメンバーの声をいかに上手く活かす
か、これから夏にかけて、制作に頑張りたいと思っています。お疲れ様!それでは来年も!
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・松本市から北上するJR大糸線に沿った一帯を、
安曇野アヅミノと呼び、清冽な湧水のもとワサビ
栽培が盛んな地方ですが、日本漆芸界を代表す
る文化功労者・高橋節郎氏の生家がJR穂高駅
に近く現存し、その広大な敷地内の蔵や母屋は
登録有形文化財に、そして氏の作品を展示する
「安曇野高橋節郎記念美術館」が、敷地の一郭
に建てられています。
・今月3月8日に完成したこの新曲は、約1年前の
25絃奏者・田中静子さんの委嘱によるもので、
記念美術館の入口を飾る節郎氏みずからの手稿
による「エントランス詩?」を歌詞として使い、
弾き歌いの筝歌として、曲にまとめたものです。
・二十五絃のための筝歌「鳥の詩うた・晏晏あんあん」
(高橋節郎・詩)(2023)
・晏→アンと云う見慣れない漢字が使われていま
すが、空が晴れて穏やかな状況を伝える文字だそうです (あとから付け加えた欧文タイトルは、
A Bird Song "The Piece" としました)。前回の筝歌「桜に寄せて」の短歌でもそうでしたが、
いつも平易な文字遣いをされる高橋氏が、ここでは敢えてこの文字を採用されたこだわりを、
僕は大切にしたいと思っています。詞章の全文は、わずか5行……それは以下の通りです;
いつも夢見ていたもの
それは遠くから飛んでくる 大きな鳥に乗って
あの山を越えることでした
とりは幸福って ほらここにも あそこにもあるよって
ささやくようにうたっています
入館する人々は、全員が高橋氏のこの詩に迎えられ、氏の作品の世界へと歩を進めるのです。
………高橋節郎氏の人柄が伝わってくる、とても素晴らしい鑑賞体験だと、僕は感銘します。
・このあと、この曲の音楽的な個性について書くつもりでしたが、やや専門的でもあるので、
かいつまんで……この作品で、僕は初めて筝曲の中での「3度転調」を試みました。ベート
ーヴェンの第九「歓喜の歌」の中でも劇的な効果をもたらしている3度転調(歓喜の歌では
ニ長調から変ロ長調へ)ですが、筝柱をいくつも即座に動かせないこの楽器では、なかなか
困難と思っていました。しかし、目ざとい読者の方なら上掲の調弦図で気づかれたかも知れ
ませんが、25本ある絃の調弦を少し工夫すると、その最初のステップくらいなら可能ではな
いかと、今回の試みを行ってみたような訳です。その成果やいかに……松本市での6月10日の
田中静子さんの演奏会で、「山桜譜」と共にこの作品も初演の予定なので、その後にご報告が
できるものと思っています。
]]>・4月9日(日) 午後2時開演
・静岡市 臨済宗・冷泉山秘在寺本堂 (葵区郷島)
・開かれた寺院の本堂を会場にして、年に数回
和楽器による親しみやすい演奏会を開催され
ている内室の武山博子さんが、この春もまた
釈迦生誕を祝う「花祭りコンサート」を企画
されました。心安い演奏お仲間とともに、6
つの演目を用意され、笛・筝・十七絃という
組み合わせで、近在の皆様に邦楽の豊かさ・
愉しさを届けられます。
・すでにトピック[2231]でもご紹介しましたが、
僕が初めてお目にかかった昨年より前に、すで
に千秋次郎の作品に関心を持って下さっていて、
今回も、神戸淡路島大震災の年に書いた二重奏
の曲を、当日の演目に加えて頂いています。
→二重奏曲「風の里歌」(1995)
・本来はバイオリンと筝のために書いた曲なので
すが、ここでは笛と筝によって演奏されるようです。この作品については、以前のトピック
[2208]の中で解説していますが、その年に起き大震災への鎮魂曲として作曲したもので、本
来の楽器による演奏録画は、田中静子さんのユーチューブで鑑賞することが可能です。
地方統一選挙日と重なりましたが、ご盛会・御成功を祈っています。
・3月12日(日) 午前10時半開演
・戸塚市 八幡山の洋館(旧横浜ゴム平塚製造所
記念館(浅間町・八幡山公園内)
・ブログ上で初めて識ったのですが、マリンバの
中村梓さん、ピアノの田村由希子さんお二人の
ジョイント・リサイタルにおいて、僕の作品が
採上げられていました。先行トピック [2305]
で紹介していた曲、マリンバとピアノのための
「わらべうた春秋」(1985) です。思いがけなく
この演奏会で再演されていました。
・JR戸塚駅からも近く、大きな一劃を占める戸塚
八幡宮ゆかりの公園、その中にあって「八幡山
の洋館」として親しまれている建築ですが、もと
もと日本海軍の所有、明治40年末に英人技師に
よって建造された木造洋風建築で、現在は、國の
有形文化財として、この公園に移築され、市民の
活用に委ねられています。風変わりな塔が目を惹
く、神奈川県でも貴重な歴史建造物です。
・お二人とは面識もない自分ですが、演奏会が盛会裡に終演・成功されたことと思っています。
さらなる今後のご精進を祈ります。
]]>・楽友・麻植美弥子さんからの要請で、八橋検校
の「六段の調べ」にフルートとオーボエが加わ
っての三重奏を、彼女のリサイタルのために20
06年に制作・提供しました。そして2年後には
マザーアース社から、左掲のような譜面も出版
されています。「フルート/オーボエ/筝のため
の新唱六段」という「六段の曲」をそのままに、
それに2つの洋楽器が加わって、三者めでたく
協和して曲を終わるというコラボ作品です。
・先日ユーチューブで、その旧作の演奏が公開さ
れているのに出くわしました。とりしぁんてと
いう名称の、たぶん身近な楽友仲間の皆さんだ
と思うのですが、演奏ホールではない広間で、
普段着のまま、「ちょっと録音してみようか」
といった、まさにカジュアルな録画で、アンサ
ンブルと呼ぶには、もう少しは練習して、各自
の思いを豊かな音で表現してほしい、と思った
のが、僕の率直な感想です。お疲れ様でした!
・しかし、前出[2303]の コントラバスで歌う「里山の時」と同様に、指定された以外の楽器で
トライしてくださる事は、僕にとって有難迷惑ではなく、自分の好奇心も満たされ、とても嬉
しいことです。今回の演奏は、この方達にとっても不本意な結果だと思いますから、できれば
また再演を試み、改めて公開してみてください。僕からのエールです。
・またまた前置きが長くなりましたが、この動画に至るには、?千秋次郎 新唱六段?で検索
頂くと現れると思います(だめな時は、そこから動画を検索してください)。6個の各段、それ
ぞれの箏パート(八橋検校の原作)の動きに即して、他の2つの洋楽器が、時には協和・同化
し、時には独自に異化しつつ、対位法的な面白さで展開する世界を、味わってみてください。
]]>
・この曲の欧文タイトルは、”San'oufu”,
Ballde to Wild Cherry Brossoms
for Flute & Contra 25-gen Koto (2023)
です。「新しい作品」の組分けに入ってますが、
前出のトピックなどと同様、自分の旧作に追加
や改変を加えたものです。しかし、楽器編成も
変わり、曲の構成にも今回はかなり手を加えて、
旧作とは異なるメッセージの音楽となったので、
「同一タイトル・別内容」の曲目として扱う事
にしました。
・すでにマザーアース社から刊行されている僕の
楽譜に「湖松譜」コショウフというのがあり、それ
の続編として、楽友・麻植美弥子さんの委嘱で
「湖松譜」の2年後に作曲提供したのが、この
「山桜譜」(の初版)でした。どちらも先方から
の条件で、ピッコロ+17絃筝という珍しい編成
で作曲・提供したのですが、幸いそれぞれ無事
に初演をすませ、その後「湖松譜」の方は出版
に続いて、麻植さんとN響のピッコロの名手・
菅原 潤氏によるCD(2003年 fontec)がリリースされました。その後も再演の機会がなかった
訳ではないのですが、やはり広く流布しているとは言えない和楽器と洋楽器の組合わせなので、
いつの間にか歳月が経ってしまいました。
・コロナ災禍が拡大する少し前だと思いますが、松本の田中静子さんからの提案で、「湖松譜」
の譜面をフルートと低音25絃筝(僕はこれを、コントラバスの命名を流用し、Contra 25gen
Kotoなどと呼んでいますが)で演奏を試みたところ、意外にとても自然に響き合い、鑑賞に耐
える事が判ったので、それならば次回には第2作の「山桜譜」をフルートと低音25絃で聴いて
いただこう、という事になったのですが(ここで、ようやく本題に入れました)、譜面の準備に
思いがけず手間取る事態が生じ、先月末から数日前まで、ずっと解決に取り組んでいました。
・すでに演奏者の方には譜面を送った所なので、この問題は解決しました。この間の経緯について
は、いずれ後日のレポートで。ともあれ、松本市ハーモニーホールでの初演は本年6月10日(土)
午後7時です。チラシを得た時点で、詳細をお伝えする予定です。どうかご期待ください!
]]>
・この曲は、箏歌本来の姿である「弾き歌い」
のために、2020年1月に完成し、その年6月
に初演される筈でしたが、猛威を振るい始め
たコロナ蔓延のために、秋まで延期となり、
それがまた翌年夏まで延期となり、ようやく
2021年7月に初演が実現した、いわばコロナ
に振り回された作品です。そして昨秋2022年
には信濃大町市での千秋次郎作品展において、
委嘱者の田中静子さんによって再演も行われ、
公演が無事に終わり、僕も一息入れている所
です。
・その初演時の収録音源が、このたび彼女のユ
ーチューブで公開となりました。あくまでも
ライブ記録としての内容なので、会場の音響・
演奏の仕上がり・当日の体調など、多方面で
完璧では無いのですが、それらを敢えて覚悟
の上で、公開に踏み切った彼女の心意気を、
僕は評価したいと思っています。作曲者みずから言うのもナニですが、筝歌としての言葉と
音楽の絡み合いは、自然で無理がなく、彼女の透明な声にもよくマッチしています。「序の
歌」と言うタイトルですが、実のところは立原道造が恋人に初めて告げる(みずからの死期
を予感しての)彼らしい、さりげない「告別の歌」、表面の軽やかさの背後にある、切実な
情念を、さらに深く掘り起こして今後の歌唱に活かしてほしいと願っています。この映像に
至るには、?千秋次郎 序の歌?という文字列で検索すれば、トップに出てくると思います。
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・「わらべうた春秋」‥‥‥皆が知っている
わらべ歌を何曲か素朴に編曲し、メドレー
形式で提供するのはでなく、モチーフの浸透
・発展という意図で、幾つかのわらべ歌素材
を組合わせて(愉しい気分は最後まで残しつ
つ)出来上がった作品。僕のブログでは毎年
のようにご登場の楽友・松本真理子さんのマ
リンバのために 1985年に作曲、1996年に
左掲のような楽譜が全音楽譜出版社から出版
され、今日まで真理子さん関連の演奏会では、
定番曲目の一つとなり、彼女以外にも東京で
の演奏会などで採りあげられています。
・この作品で使われているわらべ歌は「あんた
がたどこさ」「かぞえ歌」「ずいずいずっこ
ろばし」の3曲に過ぎませんが、この3曲で
急ー緩ー急 の大きな枠組みを構成し、中間の
「かぞえ歌」では、箏曲「六段の調べ」が顔
を出し、やがていつの間にか「かごめかごめ」
が絡んできて、室内では「かぞえ歌」(陰戦法)
屋外では「かごめかごめ」(陽旋法)が並行して進み、そのまま「ずいずいずっころばし」に
突入するという面白さを味わうことができます。
・これまでCD以外には、公開の音源がなかったのですが、最近になって、佐々木裕健氏のマリ
ンバで5年前に公開されたユーチューブ映像があるのを知りました。ややマリンバにミスタッ
チが多いのが残念ですが、ピアノも綺麗で、全体の構成はこれで問題なく、鑑賞に値します。
いつものように " 千秋次郎 わらべうた春秋" で検索、ここから動画へ進んで頂くと、トップ
に現れると思います。
・僕の「わらべうた春秋」には、もう一つ別の版
があり、それが左掲のユーフォニアムとピアノ
のための同一内容の作品です。2009年に牛上
隆司氏の紹介で識りあった在米ユーフォニアム
奏者 Travis Scott 氏 のために、提供しました。
まるで性格が正反対のようなマリンバからユー
フォニアムへの「ひき継ぎ」なので、苦労しま
したが、2011年のアメリカでの初演に先立っ
て、彼のアドバイスのもと、欧文曲名を
”Children's Songs of Old Japan" と変更し、
自前の青花社譜房からの出版も実現しました。
そして2013年には、牛上氏友人のユーフォニア
ム奏者・荒木玉緒氏のアルバム「Encore!!」に
収録され、この曲にとっては、これが「初録音」
となりました。
・幸いにも、このCDに収録された荒木氏による演
奏(ピアノ・三界あきこさん)がユーチューブ
で鑑賞できます。これも、上記と同じ要領で、
" 千秋次郎 わらべうた春秋" で検索、ここから
動画へ進んで頂くと、CD "Encore!!" のジャケット画面がトップに現れると思います。きっちり
とした折り目正しい演奏で、お二人に不満はないのですが、豪放な荒木氏の素顔がもう少し露わ
になっても良かったかな、などと感ずる節もあります‥‥‥ご厚意に感謝しつつ。
・ユーフォニアムとピアノのための
「青のバラード」(2000)
・出版楽譜紹介という見出しのもとで、ここに挙
げていますが、最新の刊行という訳ではありま
せん。前トピック[2303]で紹介していた「里山
の時」(2004)の4年前に完成し、牛上隆司氏
によって初演され、2008年にはEuphonium.
Com Publications (USA) から、左図のような
まさに青い楽譜も出版されて、現在に至ってい
る、ユーフォニアムとピアノ二重奏のために書い
た僕の5つの作品の中の、2番目のものです。
・第1作「うるわしきもの流れゆくなり」の沈鬱な
抒情に対比させて、この曲では4度和声で突進す
る痛快な情感を、簡潔にまとめて提供したのです
が、これに続く第3作が前トピック「里山の時」
で、そちらに人気を攫われてしまったのか、この
曲は注目されぬまま、年月を経てしまいました。
・ところが少し前のことですが、思いがけなく、ネット上で「青のバラード」の名前が挙がってい
るブログに遭遇し、この曲にとっては初めてのことなので、楽譜紹介を兼ねて、その事をお伝え
する次第です。
・イタリア生まれで、長く53年間もミシガン州立大学で卓越したユーフォニアム奏者として、多く
の演奏家を輩出した Dr. Leonard Falcone(1899~1985)、死後も遺徳を慕う門下生や未亡人の
努力によって、ユーフォニアムとテューバ分野でのコンクールをメインとする ”Festival”が毎年
開催されていて、今年も8月4〜7日にファイナル(最終選考会)が行われる予定です。各楽器別に、
20歳までの学生部門と一般部門があり、ユーフォニアム・学生部門セミファイナル(2次予選)
の課題曲に、この「青のバラード」が挙げられていて、他には曲名がないので、本曲が必須曲と
いう事のようです。‥‥長くなりましたが、これまで「里山の時」はかなり頻繁に、この種の
コンクールの課題曲に指定されてきましたが、ここに至ってようやく「青のバラード」にも光が
当たってきたのかな、と有り難く思っています。今はまだ紹介できる鑑賞音源がないのですが、
そのうちにきっと、ユーチューブ等で誰かに公開してもらえる事と期待しています。
・"A Walk in the Woods" for Euphonium &
Piano (2000)
・出版社からの提案で、もともとの曲名「里山の
時」を「森の逍遥/そぞろ歩き」とタイトルを
替え、2004年アメリカで出版されたこの作品、
すでにトピック[2210] で、出版までの経過を
ご報告していますが、あれから19年が過ぎた
今も、幸運なことに全米の大小のユーフォニア
ム・コンクールにおいて、学生・ジュニア対象
の課題曲に取り上げられている事が多く、"Jiro
Censhu A Walk in the Woods" などと検索す
ると、多数の事例がユーチューブで公開されてい
ます。
・これら公開映像の中に、これまでも異種の楽器
で収録された(確か、ユーフォニアムでなくて、
ファゴット)演奏があったのですが、つい最近
になって、この曲がコントラバスとピアノで演
奏されている映像に遭遇しました。
・Bs: Mamya-Andoniya Andonova/ Pf: Jeanie Lee Baldwin のお二人の演奏で、やや録音
が弱めですが、管楽器のパッセージが弦楽器で演奏されると、どのような表情になるのか、
軽やかなテンポを保ちつつ、とても誠実で思いの伝わる良演でした。ことに Jeanie のピアノ
が、これまで聴いた海外の皆さんの中では、とりわけ精緻で感銘しました。作品の全体的な解
釈にも、創意工夫が見られ、ことに曲が終末に向かうところからは、楽譜のどこにも書いてな
い独自のテンポの変化があって、さらに感銘が深まりました。
・興味を持って頂ける方は、ぜひ一度、実際の映像でお確かめください。ここに至るには”Jiro
Censhu Andonova" で検索すれば、きっとトップに現れる事と思います。収録日時や場所、
演奏者の素性など判らなくても、音楽が人を結びつける事と思っています。
・池上亜佐佳さん/山本亜美さんのお二人による
豊かな感性にあふれた現代邦楽の作品展が、昨
年12月に開催された事は、すでに本ブログでも
ご紹介しましたが、その時の収録映像が、過日
ユーチューブで一般公開されました。報告が遅
れましたが、幕開け1曲目に演奏された、僕の
作品・20絃と17絃のための「双樹」(1989)
も公開されていて、やはりお二人の技量の高さ
に、改めて感銘しました。
・→ いつものように ”千秋次郎 双樹”で検索し、
そのあと”動画”の細目に移っていただければ、
真っ先に現れると思います。さながらお二人が
ステージに並び立つ樹木のように、時には寄り
添い、時には自分の世界に固執するかのように、
自由に歩を進めてゆく、そのような音楽のひと
ときを、味わっていただける事と思います。
・ちなみに、この作品は、数日後に迫った1月20
日(金)京都市平安神宮に近いロームシアターで、
麻植美弥子・理恵子の母娘お二人によっても、演奏される予定になっています。
]]>・ソプラノ・バージョン
「谷底の松のこと」(詩・河野 律)(2023)
・正確には新曲と呼べるものではなく、1989年
に作曲・初演し、何度かの再演も実現、すでに
全音楽譜出版社版「千秋次郎歌曲集 2」に収録
されている作品なのですが、バリトンのために
書かれた曲という事もあって、これまで一度も
我々の関西波の会では演奏の機会がなく、残念
に思っていました。
・いずれご案内の予定ですが、本年6月24日(金)
午後の大阪フェニックスで、我々の第8回演奏
会が予定されています。僕は決断して、この曲
のソプラノ・バージョンを作成し、それを今回
皆様に聴いて頂くことにしました。メンバーの
一人・小山操さんに演奏を承諾してもらい、昨
年12月に入ってから、移調作業を始めました。
・小山さんの声域を活かすには、メロディー部分
を完全4度高く移調すれば良いことが判ったのですが、ここで思わぬ障害にぶつかりました。
・歌唱に合わせてピアノのパートを完全4度も高くすると、ピアノが何だか上滑りして、歌と
ピアノが合体した緻密な歌曲の世界が現れてこないのです。いささか悩んだ末に、原曲その
ままの移調ではなく、ピアノ・パートを、最初から作り直すことにしました。‥‥日数を費
やしましたが、結果的にはこの方策が、自分の意欲を高めてくれたのか、より緊密度の高い
新バージョンが、年を超えてこの三が日過ぎに完成しました。疲労困憊でしたが、自分にとっ
ては、思い出に残る「ゆく年くる年」となりました。
・この曲の内容については、また項目を改めて書かせて頂くかも知れません。唐代の偉大な詩人
白楽天(772~848)の「澗底松」を、僕が京大工学部助手を辞して、松下電器産業(現パナソ
ニック)無線研究所に勤めていた時に知己となった同社社員・河野 律氏が訳詞・敷衍した詩篇
です。人間不信が拡大しつつある今日的な国際状況の中で、聴いてほしいと願っている曲です。
謹賀新年 ご挨拶が遅れてしまいました。今年6月に予定の定期演奏会で皆様に聴いて
いただく自分の作品を、旧作「谷底の松のこと」(1989)と定め、ソプラノ声域に即しての
譜面改訂に着手したのですが、ピアノパートの響きとの絡みで、なかなか思うように進捗
せず大晦日となり、まさに"盆も正月もない"状況で、新年を迎えました。ようやく数日前に
全ての作業を終了、歌い手とピアニストに、譜面とシミュレーション音源を送った所です。
自分にとっては、今日から2023年が始まります。
・いずれ次項のトピックでご案内する予定ですが、やはりここ数年間と言うもの、コロナの
抑圧感に加え、政治・経済の面で思いもかけなかった事態が生じ、自分の体調に大きな影響、
とりわけ体力の低下が生じているようです。幸い4度に及ぶワクチンの接種、インフルエンザ
予防注射など、反作用もなく風邪にもかからずにいますから、耐えているのは自分独りだけで
はないと思い定めて、細くしなやかに今年も歩を進める所存です。どうかご支援よろしく!
千秋次郎
]]>・2023年1月20日(金) 午後6時30分開演
・ロームシアター京都サウスホール
(左京区岡崎公園)
・今から25年ほど前に僕の曲を採り上げて頂いた
ご縁で、筝・十七絃の麻植美弥子さんとは、心
許せる楽友として、その後の活動を共にさせて
頂いていますが、彼女の愛娘マナムスメである麻植
理恵子さんの演奏活動の報告は、うっかり手薄
になっていました。すでにお子さんのある幸福
な家庭の主婦・理恵子さんですが、学業を修め
られた後は、母・美弥子さんとともに、邦楽の
演奏・普及活動に専念しておられます。
・僕も 17絃ソロのための「秋風の琴」(2007) と
いう小品を、当時まだリエ子チャンと呼んでも
良かった彼女のために作ってあげたのですが、
今では演奏活動が身につき、近いところでは
10月福井市での、福井弁による民話語り「しじ
みの恩返し」(2022)の初演で、母子ご両人にとてもお世話になりました。
・ここに紹介した来春京都での公演は、理恵子さんが主体、美弥子さんが招待演奏者となり、
京都府の活動支援事業の対象に選ばれた、筝・十七絃・二十絃のための邦楽5作品による
公演です。僕の作品もお仲間に加えていただき、
二十絃と十七絃のための「双樹」(1989) が演奏されます。僕はまだ彼女が二十絃を弾くのを
聴いたことがないので、二つの楽器が会場を巻き込んで、どのように「共鳴」するのか、当日
のステージを、今から心待ちにしています。
・なお、この「双樹」の楽譜はすでにマザーアース社から刊行されていて、これには渡辺治子・
宮越圭子のお二人による2005年の演奏CDが、楽譜に付いています。
・日中だったら、平安神宮のある岡崎公園を通過する5番の市バスは、いつも満員、到着時間も
遅れるのですが、寒い冬の夕方とあってバスの混み方も普通、公園内に位置するロームシアタ
ー・サウスホール(僕にとっては、50年以上も前からの旧称、「京都会館第2ホール」の方が
懐かしい)に早々と到着しました。アプローチが改良されて、寒風から遮断された待廊で並び、
やがて開場時間、700名のホールが埋め尽くされました。開演となり、理恵子さんこだわりの、
それぞれ曲想の異なる5つの曲目が披露されました。
・いわゆる現代邦楽の主流が、今尚これかどうかは知らないのですが、無調を主体とする作品が
2篇、感情輸入は困難ながら、響きのダイナミズムを興味深く味わうことができました。また
伝統邦楽の世界へ、洋楽の味付けを試みたものがあり、作曲された時代の空気を想い偲ぶ事が
できました。ただ、僕が自分の作品以外で、最も強く感銘したのは、開演最初の演目、深海さ
とみさんの「みだれによる」という独奏曲のステージでした。伝統音楽を、伝統音楽の手法の
まま、さらに発展敷衍させたようなこの作品、自分にとっては「憧れていても、とても到達で
きない」お仕事で、感銘しました(何年か前に、中能島欣一「さらし幻想曲」を聴いた時にも、
同じ衝動を覚えました)。こうなっては、自分は自分と開き直るより他に、道はないようです。
・僕の「双樹」は最後の出番でしたが、理恵子さんにとっては初めての二十絃筝ご披露だった由、
お二人のアンサンブルが能く相和し、作品を誠実に消化して頂いていることが判り、心からの
感謝です。ま、演奏は水モノ、何かと反省はあるかもしれませんが、それは次の機会に頑張っ
たら良いこと、ひとまず今回の成功を、共に祝おうではありませんんか!お疲れさまでした!
]]>・東京/10月14日(金) 午後7時開演
/アーティストサロンDolce東京(新宿)
・大阪/10月29日(土)午後7時開演
/ドルチェ・アートホールOSAKA(梅田)
・12月の誕生石・ターコイズ(トルコ石)の鮮や
かな青緑色の、このチラシが目に止まり、僕の
作品が思いがけず演目に掲げてあったので、ぜ
ひ大阪公演に伺おうと予定していたのですが、
何か事情が生じたのか、直前になって開催中止
となり、とても残念でした。しかし、東京での
公演はあったはずなので、すっかり事後になり
ましたが、ご紹介しておきます。
・今回 Horn & Euphonium Duo "Turquoise"
という二重奏団を結成し、結成記念リサイタル
ツァーに臨まれたお二人(小川淳氏・今村耀さ
ん)について、僕は全く面識がないのですが、
どちらの楽器も中音域の素敵な音色を持つ楽器
なので、ぜひ演奏活動を将来に向かって持続・成功させてほしいと期待しています。
・今村さんが野代奈緒さんのピアノと組んで、今回演奏してくださった僕の作品は、
ユーフォニアムとピアノのための「わらべうた春秋」(Children‘s Songs from Old Japan)
(2009) です。これは、1985年に作曲し、全音楽譜出版社より刊行した、同名の先行作品
マリンバとピアノのための「わらべうた春秋」を書き換えた内容で、どちらも、「あんたがた
どこさ」→「数え歌」→「ずいずいずっころばし」を結んで盛り上げるものですが、終曲の
「ずいずい」などは、ピアノとのバトルに近い痛快な変奏曲です。今村さんはご自分のブログ
上で「この作品は以前から一度やりたいと思っていた」作品などと、書いて下さっていました
が、東京公演いかがでしたか?‥‥お二人のご進展を祈っています。
・筝とハープのためのソナチネ
「風の歌・水の歌」(1978)
・旧い楽友・西村光世さんがフィンランドの国立
シベリウス・アカデミーでハープを学び、帰国
して後に、筝の大島マリエさんと共にフランク
フルトやロンドンなど、ヨーロッパの諸都市へ
演奏旅行に赴いた際に作曲・提供した作品です。
ソナタ形式(急)/歌謡形式(緩)/ロンド形式(急)
の3楽章から成る古典的なソナチネの様式で、
同じ撥弦楽器である筝とハープが、日本旋法に
もとづく「和」の響きを奏でて進む、という試
みが、欧州の各地で好評だったと伺っています。
・その折の初演録音などは、当時のこととて残って
いないのですが、現在ユーチューブに公開されて
いる音源としては、(a)2016年/全楽章を収録、
(b)2019年/第2、第3楽章のみ、(c)2014年/
第2楽章のみ、それぞれ異なる演奏者によって収
録されている3種類の公演があります。
・いずれも一長一短あり、完璧な演奏と呼ぶには多少のタメライも感じますが、ひとまず全楽章
が収録されている(a)を、"千秋次郎 風の歌・水の歌" で検索し、そこから動画でMaki Maki
という文字列が出ている動画を探してください。2016年横須賀で開催された演奏会の録画で、
ハープ・Hye-Yun Chung Bennett さん、筝・Kagari Nakajima さんです。冒頭のハープの入り
が何となく頼りなくて、僕が間違った先入観を持ってしまったようですが、それから後は、落着
いたソツのない演奏、筝は最初から精緻・安定していて、終結まで聴き通すことができました。
うまく辿りつけたら、一度、通して聴いてみてださい。ハイドンが陽気な江戸人だったら、多分
こんな感じのソナタに仕上げただろうと思えるようなノリの曲です。
・この他に、アメリカを拠点に国際的な活動を続けておられる筝のSaeko Kujiraoka(鯨岡佐枝
子)さんが、ハープのMirian Suzuki さんと共に収録された、上記(c)の第2楽章だけの演奏も、
8年前の演奏ですが、単独にこれだけの作品として聴いても、個性的で叙情性の高い演奏です。
→→ https://www.youtube.com/watch?v=yR3Efn4e3_M お時間があれば、これも
視聴してみて頂けると幸いです。
・前トピックに続き、もう一つ視聴してほしい音
源があります。邦楽の分野での旧交の友・折本
岳慶山/大人樹氏(尺八と筝の二つの顔を持つ)
の紹介で、数年前に知り合った琴古流尺八奏者・
小林鈴純氏からの委嘱で2018年に作曲し、翌年
彼の郷里がある兵庫県加東市で初演、2020年に
マザーアース社から出版された、3楽章の作品;
・尺八と筝のための組曲「ふるさと遠く」(2018)
・加東市での初演後も、大阪初演や演奏者を変えて
の東京初演も実現し、作品としては恵まれた出生
でした。松本の田中静子さんにも、今秋信濃大町
での演奏会に、フルートと25絃筝による編成で
この作品を採上げて頂きました。
・その時の収録音源が、美しい風景の映像を背景に
彼女のユーチューブで公開されています。本来の
尺八の持つ表情とは異なりますが、伸びのある
フルートで聴く、ふるさとへの想いもまた、格別
なものがあります。
・ここへ到るには、前トピックの場合と同様 "jircen's music blog" を経て、僕の動画エリアから
”ふるさと遠く” を選んでいただくか、田中さんのユーチューブ "shizuko kotoチャンネル"
を検索して頂くと良いでしょう。
・この組曲は、峠の別れ/望郷の無言歌/絆あらたに の簡明な3つの楽章から構成されていて、
ことさら解説の必要もないほどですが、第2曲でフルートによって歌われる旋律(まさに言葉を
伴わない無言の歌)は、種明かしすれば、上掲の楽譜からもお判りのように、僕が1955年に
啄木の短歌に作曲した「ふるさとの」という歌曲のメロディを、そっくり引用しているのです
(マーラーが自分の交響曲の中で、自作の歌曲をモチーフとして活用したように)。家族や朋友
との別れ→他郷で心をよぎる望郷の念→念願叶っての再会と新たな郷里との絆‥‥‥‥という
若き日の「光と影」が、この短い組曲の背後に流れています。
]]>・このところ色々と用事があり、ご案内が遅れ
ましたが、入手したライブ音源のなかで、2
つの録音資料をご紹介します。最初のものは
実のところ、演奏者当人も語っているように
あまり録音状態が理想的ではないのですが、
自分的には1度だけでも付き合ってほしい曲
なので、ひとまず、その作品の紹介を;
・二重奏曲「空の青・海の青」(2006)
・楽友・吉岡紘子さんの縁故で知り合った渡辺
治子さんからの委嘱で書いた、20絃と17絃の
ための単一楽章による小品、左掲のチラシは
今から12年前の東京での委嘱初演の時のもの
です。初演後も何度か再演の機会に恵まれま
したが、2015年になって松本の田中静子さん
によって、20絃/17絃の編成でなく、25絃
/低音25絃という組み合わせで演奏が試みら
れるようになり、ここで紹介する音源も25絃
バージョンのものです。
・田中静子さんと低音を受け持つ佐藤由香里さんは、すでに2015年にこの作品を取り上げて
下さっていますが、今年6月に行われた演奏会'22でもこの曲が再演されました。田中さんの
ユーチューブに納められた音源は、その時のものだと思うのですが、やはり本番は水モノ、
収録の段取りに問題があったのか、演奏者の体調が不宜だったのか、率直なところ、やや
音量不足で表情が冴えません。田中さんも「とりあえず公開しますが、できれば将来良いもの
に取替えます」との事なので、そちらに期待しましょうか。しかし、やや緊張した雰囲気の中
で、お二人の誠実な努力が伝わってくる良演なので、是非とも ”千秋次郎”を検索し、動画のエ
リアをスクロールするか、その段階で再度「空の青・海の青」と検索してみて下さい。基本と
なる9拍子の律動が、アッと言う間に2拍子に姿を変える箇所、そしてその後、何気なく9拍子
の第2主題が、豊かな表情で立ち上がる箇所など、「白鳥は悲しからずや、空の青・海の青にも
染まず漂う」と歌った若き日の若山牧水の想いが、心ある方に届くことを祈っています。
]]>
・12月18日(日) 午後4時30分開演
・YOSHUホール 南船場1- 4 -11 森ビル2F
(長堀鶴見緑地線、松屋町駅1番出口)
・僕は初めて知ったのですが、関西二期会オペ
ラ研修所第55期生による第1回定演という催
しがあり、5名の皆さんが出演されます。
・この中の一人、バリトンの嶌田シマダ優介氏は、
我々の関西波の会にも今年入会され、ともに
日本歌曲の分野でも技を磨かれる事になりま
した。我々にとって、とても頼もしい仲間の
一人で、この先、日本歌曲の分野でも大いに
活躍してほしいと願っています。
・今回の定演で彼が用意した演目の中に、僕の
作品が3曲採り上げられています。「千秋次
郎歌曲集1」に所収のもので、どれも明快・
誠実、[童謡以上、歌曲未満]という曲趣です。
・「さよならの季節」(詩・印南長子)(1989)
・「ひろったえんぴつ」(詩・いわきたろう)(1986)
・「あしたになったら」(詩・垣内磯子) (1994)
・それぞれ色合いの異なる3つの「うた」を、彼がどのように聴き手に届けるのか、大きな
期待をかけ、当日のステージに聴衆の一人として参加するつもりです。
・前日のような陰鬱な雨は上がったものの、やはり寒々しい冬日でした。それでも小さな会場
には、出演者の友人・知人の仲間が集まり、とても和やかな雰囲気の中で、それぞれのオペ
ラのステージをイメージしての著名アリアが歌われ、第2部では、各演奏者こだわりの歌曲
などが披露されました。僕の若い時の作品を選んでくれた嶌田氏の後半のステージは、(1)去
ってゆく夏との別れ、(2)廃棄寸前の小さな事物への思いやり、(3)明日という未来に託す希望
など、人生で起こるミニチュアな感情の起伏を、控えめに、しかし的確に歌い込めた良演でし
た。我々の日本歌曲研究グループの中でも、今後ぜひ、指導的な一員となって活躍してほしい
と感じました。
]]>
・12月22日(木)午後6時開演
・すみだトリフォニー小ホール(錦糸町駅)
・去る11月7日の日本歌曲振興波の会・秋の
定演で、僕の歌曲「チェロの四季」 (2007)
を、丹羽京子さんの透明なソプラノとともに
的確なピアノでステージを成功させて頂いた
片岡和子さん、聴いていて僕も感銘しました。
・彼女に、以前「何かの折に教材にでも使って
下さい」と差し上げていたピアノ小品が、思
いがけなく、左掲のような折り目正しい音楽
ホールで、現在ご活躍中の3人のアーチスト
よる楽しい季節コンサートの催しの中で採上
げていただき、大げさに言えば「東京 初演」
していただく事になりました。
・「雪やこんこ」の主題による変奏曲(1961)
・序奏ー主題ー11の変奏ー結尾 という型通りの
構成、7分足らずの小品ですが、静かに始まり、原曲の16という小節数に必ずしもこだわらず、
シューマンのようなノリで、最後はまた静かな雪のしじまの中に音を閉じます。誰のために書
いたのでもなく、当時たぶん、一気に興が乗って完成させたように覚えています。メロディの
最初の3つの音(ソーラーソ)が、全体を統一するモチーフとして活用されています。もともと
ピアノ教材くらいに考えて出来上がったものですから、片岡さんに弾いて頂くのは、僕の方が
恐縮するのですが、素朴に聴衆の皆様に楽しんで頂けたら幸いです。片岡sama,どうか宜しく!
]]>・10月23日(日) 午後1時半開演
・静岡市 臨済宗・冷泉山秘在寺本堂(葵区郷島)
・去る10月1日の信濃大町での演奏会が契機と
なり、同様の試みを続けておられる静岡在住
の筝演奏家から、思いがけなくご連絡を頂き
ました。とても嬉しい事です。
・ご自分の寺である葵区臨済宗秘在寺の本堂を
ホールとして、三絃・筝・十七絃などの演奏
活動を続けておられる武山博子さんからお便
りを頂き、洋楽邦楽の親しい楽友たちと、年
に数回、流派にとらわれない自由な演奏会を
開催されていて、僕の作品も、過去に何曲か
演奏して下さっていた事を、初めて聞き及び
ました。自分の知らなかった処で、とても
光栄な事です。
・お手紙に添えて同封されていた今年に入って
からの3枚のチラシには、毎回のように僕の
作品が採上げられていて、4月には「花のひととき」(1998)、6月には「湖松譜」(2003)、
そして先月10月には2曲「ふるさと遠く」(2018) と「秋のエムブレム」(1993) が演奏さ
れました(上掲のチラシは、その10月23日のものです)。
・8年前に本堂を新築されたとの事、チラシの中に見える映像は、従来の寺院建築とは異なっ
ていて、宗教活動においてもフレッシュな新機軸を打ち出しておられるようです。向後なお
僕の作品に関心を寄せて頂けるようであれば、まだ他にも、お役に立ちそうな作品が手元に
ありますから、提供させていただきたいと思います。そして機会があれば、市内とは言え、
山深く周囲には小さな温泉マークがいくつもある、この至福の場所で、自分が過去に書いた
音楽を、ゆったりと聴いてみたいと願っています。
・11月6日(日)10時30分開演
・和邇文化センターホール(JR湖西線・和邇駅)
・琵琶湖の北西部を占める幾つかの学区の皆さん
が年に一度、合同で各自の文化活動の成果を競
う恒例の文化祭が、今年も開催されます。実は
このブログを掲げた翌日がその日なのですが、
大阪芸大時代の教え子・田中陽子さんが主宰し
て続けている混声合唱団「湖西ローズハーモニ
ー」も、昨年に続き今年も出演されるとの事。
・長引くコロナの影響もあり、諸物価の値上がり
とか、気の許せない日々が続くなかで、団員が
まとまって何かに励むのは、やはり大変な事で、
この合唱団も決して例外ではないと思うのです
が、今年も規定の時間内で3曲を歌われる予定
です。その中の1曲に、僕の次の曲が採りあげ
られています。
・八木重吉の詩による「こころの船出」(1986)
・もともとは4楽章からなる女声合唱組曲「こころの船出」の中の、タイトルが同じな最終曲
なのですが、この組曲こそ、僕が宇野功芳氏から暖かい支持を得た、そして彼の合唱アルバム
の中に光栄にも加えて頂いた作品で、今もなお感謝の念、尽きせぬものがあります。
・この最終楽章で、合唱が「ああしろく ただしろく はてしなく ふなでをする わが身を
おおう 真珠の そら」と、重吉の詩篇を歌うところで、何げなくピアノに現れるバッハの
コラール「主よ 人の望みの喜びよ」のフレーズ、僕が「引用」という音楽表現の手法を、
積極的に考えるようになったのも、この作品が嚆矢でした。明日のご成功を祈っています!
・このところ好天続きで、この日も心地よい青空、ことに琵琶湖畔の北西部ともなれば、過日の
信濃大町と同じく、良質の空気が美味しく、古風に言えば寿命が伸びる思いでした。‥‥昨年
もそうでしたが、今年もコロナの影響が続いて、限られた少人数のミニ合唱団だったのですが、
しっかりと声が出ていて、演奏者の想いが客席に十分伝わる演奏で、安心して聴いていました。
時間制約の中で、選ばれた3曲の組み合わせも工夫され、僕の「こころの船出」のしっとりと
した「宗教的法悦」の情感が自然に組み込まれ、ポップアップした3曲目との鮮やかな対比が
客席を沸かせ、ステージとして大成功でした。また今年からは、僕もよく知っている岩坂冨美子
さんがピアノ伴奏を受け持って下さっていて、タッチの綺麗な音が一段と冴えていました。確か
に、団員の高齢化や員数の減少など、課題はありますが、現在の形を前提として、皆で歌って
ゆく「深化した合唱」の方策を次回もトライしてほしいと思います。可能性はあるな、と僕は
感じています!何よりもまず、現在のようなしっかりした発声が衰えないよう、特に留意して
進めてみてください!僕もまた、団の特長を活かした新しい作品を提供させて頂く積りです。
]]>・12月3日(土)午後2時開演
・トウキョー・コンサーツラボ
(メトロ東西線早稲田駅、2,3b出口)
・今回も十七絃筝を担当される山本亜美ツグミさ
んから、久々のお報せを頂きました。今から
7〜8年以前、アンサンブル邦’ というトリオで
彼女が阪神でも活動をされていた頃、僕も何曲
かの新作、例えば「辻が花三章」(2015)などを
初演して頂いたことがあり、安定した演奏力を
とても頼もしく思っていたのですが、その後は
活動の場を首都圏に移されたのか、演奏をお願
いする機会を失っていました。
・今回ご案内を受けたのは、来月に迫った二重奏
による意欲的な2回目のリサイタル。委嘱作品も
加わり、東京では現代作品の発信地と定評のある
ホールでの開催です。
・思いがけないことに、初めて知らされたのですが、
僕の旧作が中に採りあげられていて、20絃と17絃のための「双樹」(1989) という、今から
33年も以前のものです。確かに、これを書いた当時は、20絃のための作品が少なかったせいも
あってか、何人かの演奏者に採りあげて頂き、CDにも収録されたのですが、やはり時代の空気
を感じるというか、自分にとっては懐かしい思いが先に立つ小品です。演奏終了後に、YuoTube
でも配信して頂けるようなので、心嬉しく期待しつつ、当日のご盛会・ご成功を祈っています!
・会場へは行けなかったのですが、有難い事に、山本さんから当日のこの作品の収録映像を、個人
的に見せて頂くことができました。自分の曲のことを言うもナニですが、お二人の見事な解釈と
構成力に、いたく感銘しました。音が手の内に入っていて、ごく自然に聴く者の心に届く、これ
はもう作品の手柄ではなく、演奏者のお手柄と賞すべきですね。有り難うございました!いずれ
近日に youyube などで公開される筈ですから、その折りに再度ご紹介しようと思っています。
・11月7日(月)午後6時開演
・東京文化会館小ホール (上野公園)
・かつて一般社団法人だった頃の「波の会日本歌
曲振興会」が、社会状況の変化に伴い、法人格
を返上し、2017年から「日本歌曲振興波の会」
なる任意団体として再スタート、今や5年目に
至っています。5年前、激動の中で副会長を務
めていた僕は、会長・本宮寛子氏を支え、やっ
との思いで、当時の難局を無事に乗り切ること
ができたのですが、(小林秀雄氏がまだお元気
だった頃です)そのあと僕は東京の本部を離れ、
それまでの大阪支部が「日本歌曲大阪波の会」
として再出発したのを機に、富岡順一郎氏の席
を継いで、関西の仲間のお世話をさせて頂く事
に至っているような次第です。
・かつての本部だった東京の会も、順調にその後
会員数も復旧、今年は5回目の秋の定演を上野
の東京文化会館で開催とのこと、ご同慶の至りです。これまで僕も毎年欠かさずに新しい歌を
発表させてもらっていたのですが、有難いことに、今年は「再演」という形で、現会員の新作
に混じって、僕の旧作を1曲、加えていただけるとの事、委員会とも相談の上、次の作品を歌
っていただくことになりました。
・「チェロの四季」(詩・中島登)(2009) ‥‥‥これまでにも何度か歌われている「愛唱歌」
の一つで、有節歌曲に近い様式の「四季めぐり歌」、春から始まり冬で終わるのも「お定まり」
ですが、5度で2回上に跳躍する、チェロの開放弦を思わせる最初のモチーフが曲を引き締め、
第3節(秋)では弦楽器特有の分散和音の形、第4節(冬)では歌詞からの誂えで、ドヴォルザ
ーク「母の教え給いし歌」の引用がピアノに出現するなど、聴く人が聴いたなら、きっと面白
い感興を持ってくださる事と思っています。僕も、新しい仲間に出会える事を期待しています。
・コロナの影響で、僕もここ2年ほどは東京の仲間の演奏会をずっと欠席していたのですが、今年
第5回の秋の定演は、場所柄も懐かしい上野の東京文化(小)ホール、この素晴らしい演奏会場
で自分の曲が聴けるのは、まさに幸運でした。9月のリハーサルに立ち会うために、一度上京、
その折に、幾つか気になる点を奏者の二人に伝え、あとはお二人の解釈に委ねたままでしたが、
ゲネプロでの演奏は、完璧に近いもので、本番の成功を確信しました。終りから3番目のステー
ジでしたが、言葉のよく聴こえる伸びのある歌唱、チェロの魂を内部に秘めたクリアなピアノ、
ともに印象に残る清冽な演奏で、立派なステージでした。やはり東京の演奏者皆さんのレベルは
他のステージに関しても、とても高いもので、かつて東京でのスタッフとして関わっていた自分
としては、とても安心しました。
・もともと秋の定演は「新作歌曲の会」としての機能を果たして来たのですが、今回も20ステージ
のうち16ステージは新作初演で占められ、作曲の立場からとても興味深く聴かせて頂きました。
会員の詩作品は、形の上では幾つかの節に別れて、形の上では歌詞なのですが、実質は自由詩に
近く、それに付する歌唱も従って有節形式ではなく、ほとんどの作品が繰り返しを持たず、歌詞
にのみ対応する「一度きり旋律」のたぐい、十年前と何も変わっていません。果たしてこれで良
いのか、これらが生き延びて「歌の歴史」に残ってゆくのかどうか、僕には判りません。むしろ
若いポップスの連中の方が、本来の「歌心」を持っているのではないかと、思ってしまう時があ
ります。‥‥やはり自分なりの道を試行錯誤で進むより他にはないのでしょうね。まあ、愉しみ
ながら、残りの時間を進もうと思っています。
]]>
・すでにトピック[2222] でお伝えしていますが、
大島義実教授率いる京都市立芸術大学フルート
オーケストラ2022の皆さんによる、アジアの
作曲家のフルート作品を網羅した演奏会が、こ
の夏に開催され、光栄なことに、僕の作品も
その中に加えていただきました。
・フルートオーケストラのための「風の忘れもの」
(Something the Wind Left Behind) (1994)
・この曲は今から28年前、白石孝子さんが率いる
あうろすフルートアンサンブルの委嘱によって
生まれた、僕にとっては最初のフルート合奏曲
だったのですが、初演以来、MIZUMOフルート
アンサンブルをはじめ、多くの合奏団で採上げ
られ公演されてきました。
・過日の公演もその一つですが、ユーチューブに
公開された収録映像、さすがに確実な技術のもと
での安定したアンサンブルが達成されていて、ぜひ一度試聴してみてほしいと、願っています。
・この映像に至るには、やや長いですが、”アジア・フルート連盟日本支部YouTubeチャンネル”
という文字列で検索してみてください。過日の公演の9つのステージの収録映像が出ていて、
その中に僕の作品も含まれています。他の出品作品との聴きくらべも可能です。
]]>・すでに先行トピックでお伝えしたように、今年
1月末に曲を完成し、6月に松本の楽友・田中
静子さんの25絃筝リサイタルの舞台で、彼女の
弾き歌いによって初演した
筝歌「桜に寄せて」(2022)(短歌・高橋節郎)
高橋氏の短歌から3首を選び、短期間で完成した
作品ですが、幸いにも田中さんの歌い易い声域に
ちょうど収まり、彼女はじめ聴衆の皆様にも喜ん
で頂くことができました。
・その時の松本ハーモニー小ホールでの収録映像が、
このたび松本さんのユーチューブ上にアップされ、
自由に鑑賞することが可能となりました。一度、
よかったら視聴してみてください。ここに至るに
は、お手数ですが、一度"千秋次郎”で僕のブログ
に入っていただき、そこから動画エリアを”桜に
寄せて”で検索してみてください。(ちなみに、
最近は、自分の知らないうちに、いろんな演奏家
が、僕の曲をユーチューブに挙げて下さっている
ようで、思いがけない実演に出くわします。もっ
とも、ピンからキリまであります)。田中さんの「桜に寄せて」は初演でもあり、多少の緊張が
感じられますが、雰囲気は充分、素直な桜花に寄せる陶芸家の思いが伝わってきます。
]]>・10月9日(日)午後1時30分開演
・福井大学文京キャンパス内
アカデミーホール(E鉄・福大西福井駅)
・トピック[2223]で紹介した福井方言による
民話語り「シジミの恩返し」(2022) を最終
ステージに据えて、「子どもと大人とシニア
のための音楽広場」と言う、大学が市民に働
きかけるイベントが、作曲者の郷里・福井市
で、地域貢献活動の一環として、実験的に公
演される予定です。
・教育学部の声楽指導者の梅村准教授によって
発案・企画されたもので、第1部は院生・学
生が主体となって「浦島太郎」福井バージョ
ンなる地域に即した民話の啓発を行い、第2
部は僕の児童合唱組曲「福井わらべうた紀行」
(1999) の中から数曲を選んで、実際に会場で
「鬼」を決めたり、歌いながら遊ぶ、ライブ
な試み。そして最後のステージでは、シジミ
の難儀を救ってやった母親が、そのお礼に、高熱に襲われた太郎を病魔から護ってもらう
不思議な心の繋がりを、福井弁の語りと歌を交え、約15分の舞台として演じます。第3部
では、ピアノ以外に筝や十七絃などの伝統楽器も加わって、珍しく、また、何となく懐かし
い、昔の話・昔のメロディを、会場の皆さんに味わってほしいと、僕は願っています。
・台風の経路が気懸りでしたが、当日はナーバスな空模様ながら、台風はソレたようで、まあ
幼い時から馴染んでいる北陸らしいスッキリしない"中晴れ" で推移し、幸いでした。コロナ
対策で、席数が50席に限定されていましたが、小さなホールが親子連れの来聴者で埋まり、
第2部では「福井のわらべ歌」の演奏に合わせて、子ども達も鬼当て遊びや、身振り遊びで
前方の空きスペースで舞台に参加し、盛り上がりました。第1部の福井弁で語られた「浦島
太郎」の民話は、後半の、竜宮から戻った太郎が、すでに遠い過去の故人となっている処まで
は同じですが、土地の役人にキリシタンの流れ者と疑われ、いわくのある「箱」を開けさせら
れる、という筋書きの発展?は、なかなかユニークで、面白かったです。僕の作品が使われた
第2部、第3部はともに、今回の研究発表の趣旨が活かされたものに仕上がっていて、成功だ
ったように思います。将来、映像などが入手できたら、改めてご紹介させてください。第1部
の舞台を担当した院生の窪田真一氏はじめ、教育学部の学生の皆さん、お疲れ様でした!
・10月1日(土)午後4時開演
・霊松寺研修会館 (信濃大町市))
・北アルプス・白馬にも程近い長野県信濃大町
(現在は市)の古刹・霊松寺は、信濃国では
最初に開かれた曹洞宗道場として、1404年
の創立以来、近隣の信仰を集め今日に至って
いる、由緒ある寺院ですが、宗教活動に加え、
地域の音楽活動にも力を注がれ、足場の良い
市内にkaryoubin(迦陵頻)という音楽ホール
を持たれて、良質の音楽普及を推進しておら
れます。その活動の主が、ご住職夫人の伊東
理恵子さんで、ご本人もピアノ演奏家です。
・松本在住の田中静子さんや、白馬村在住フル
ーティストで、僕の京大時代の旧友の友人・
塩嶋逹美氏を介して、昨年伊東さんにお目に
かかり、それがご縁となって、千秋次郎作品
による演奏会が、いよいよ明日に迫りました。
・伊藤さんに昨年お目にかかって判った事がもう一つありました。木下稔(正しい表記は、き
のした みのる)という素朴で誠実な短詩を数多く残した、この詩人との繋がりが、伊東さん
にも僕にも、あったのです。それで、今回の公演のお話が出た時に、それならば、2017年に
死去された木下先生を偲ぶ(追悼などと大げさでなくても)意味合いを兼ねて企画を進めま
しょう、と言うことになりました。そのような経緯で、今回のプログラムは次の通りです。
・(1) 抒情歌曲集「散歩道からの手紙」(詩・きのした みのる)より4曲(1997)
・ひなげしの花 ・あなたの胸の引出しの ・あれはもう何年前の ・老人ホームのオルガンは
・(2) フルートとピアノのための組曲「山鳥組」より6曲(1965)
・山鳥節 ・浜松節 ・鳥舞節 ・女唄 ・野辺送り ・稲子節
・(3) 歌曲「初恋」(詩・島崎藤村) (1955)
・(4) ピアノ小品「落ち葉の秋に」(1970)
・(5) 筝のための「ふたつの秋の色」(2020) ・桜落葉 ・野菊路
・(6) フルートと筝のための組曲「ふるさと遠く」(2016) ・峠の別れ ・望郷無言歌 ・絆あらたに
・(7) 筝歌「序の歌」(詩・立原道造) (2020)
・(8) 抒情歌曲集「散歩の向こうに」(詩・きのした みのる)より 「散歩道」(1994))
・短い曲目を取り揃えて、18作品ほどを、お聴きいただく予定です。なお(5)(6)(7)の曲目は
通常の十三絃の筝ではなく、田中静子さんの二十五絃筝で演奏。また(8)の最終曲は、この
日の出演者全員(ソプラノ、ピアノ、フルート、筝)による追加編曲バージョンで演奏しま
す。このブログには初出の曲目もあるのですが、長くなるので曲の解説は、また他日に。
・松本から1時間に1本有るか無いかの各停に乗って約1時間、信濃大町は空気の美味しさが
実感できる素敵な地方都市でした。やや肌寒い晴天、寺領の一廓に建てられた研修ホールは
演奏ホールとしての設備も完備していて、ゆったりと午後のひとときを聴衆の皆様と過ごす
ことができました。4名の演奏者は、いずれも地方にありながら充実した活動を続けておら
れる皆さん、僕の作品ばかりのプログラムでしたが、自分の曲ながら面白く、変化に富んだ
ステージに聴き入りました。しかも、詩人の故・木下稔氏が白馬に持っておられる別荘へ、
未亡人の多恵子さんが滞在しておられ、当日こちらのホールにご来席いただき、すでに90歳
を過ぎた高齢者とは思えぬ元気さで、我々の夕餐にまで付き合って頂く事ができました。
人とのご縁の有難さ・奥深さを、改めて感じ入る思い出の一日となりました。
]]>
・今年2月に、[2202]でお伝えしたような僕の
郷里・福井市のわらべ歌による器楽二重奏曲を
完成してからあと、次の作品完成までに時間が
かかり、9月上旬ようやく完了に至りました。
3年越しのコロナ重圧によるのか、僕も昨年の
右手の事故以来、なんとなく体調が秀れず、現
在に至っていますが、完成が延び延びになった
もう一つの理由は、やはり「大いに興味はある
ものの、かなりの決意が要求される」初仕事の
作曲でした。出来上がった作品のタイトルは;
・歌と福井弁の語り・筝・十七絃筝・ピアノのた
めの 福井民話「シジミの恩返し」
・Thanks from the Shijimi Clams, a Fukui
folktale in the local language
・かつて昔、僕もその大学の工学部学生だった福
井大学に、教育学科非常勤講師として邦楽器演
奏の指導に当っている麻植美弥子さんの紹介で、
思いがけなく、教育学部声楽研究室の梅村憲子
准教授からのご要請があり、大学の地域貢献事業の一端として、地域の民話・わらべ歌を通じ
て、地域への働きかけを図る、そのようなイベントを秋に開催されるとの事で、そのための
音楽作品を作って、提供させて頂くことになりました。
・わらべ歌については、すでにご紹介しているように、福井ソアーベ児童合唱団のために作曲
した合唱組曲「福井わらべうた紀行」(1989)があるので、それを活用していただく事にして、
メダマとなる民話語りの方に、僕は日本児童文学者協会の編著による「福井県の民話」(2004)
に収録されている広部英一氏の「シジミの恩返し」を選ぶ事にしました。シジミの難儀を救
ってやった母親が、その礼として急病の息子の命を護ってもらい、神仏の利生リショウにあずかっ
た、というだけの単純極まる言い伝えなのですが、僕が敬愛してやまない郷里の先輩・広部
氏の文をもとに、15分という時間枠に収まるよう、物語状況をいくらか敷衍し、また地域の
言葉(方言)が明確に現れる会話の部分を多くして、物語りの再構築(僕の分身・細江和夫
の仕事)と、その背景に収まる3個の楽器によるBGMの作曲(千秋次郎の仕事)を並行して
進めてゆき、何しろ一人二役をこなすので疲労困憊、冷房の室内で、熱中症には遭わずに済ん
だものの、気がついたら、すでに8月末となっていました。最終小節を擱筆のあと、日を置か
ず浄書に移行、演奏予定の皆さんに譜面が届いたのは9月5日、初演まで、わずか1ヶ月しか
ありません。思えば、皆に迷惑をかけてしまいました。
・以上、作品完成までの経緯に時間が取られ、作品の中身については、いずれまた言及する場が
あることでしょう。 初演は来週末、10月9日(日)13:30開演、福井市内、福井大学・文京
キャンパス内、福井大学アカデミーホール(入場無料、定員制)。
・8月12日(金)午後6時30分開演
・京都府民ホール・アルティ
(御所西側、烏丸一条下ル)
・京都市立芸術大学でのフルート専攻の皆さん
(卒業生・在学生とも)で構成されている総勢
40名もの「フルートオーケストラ2022」が、
アジア・フルート連盟との共催で「特別演奏
会2〜アジアの作曲家たち」と銘打ち、五山
送り火に先立つ12日に演奏会を開催されます。
・このような演奏会がある事を、僕はまったく
知らなかったのですが、ある晩何げなく検索
していたら、自分の名前が含まれているのに
気づき、吃驚しました。
・チラシの裏面に、当日演奏予定の曲目が9曲
記されていて、そこに僕の曲が含まれており、
しかも9番目(もしかするとトリ?)に掲げ
られているのです。当惑が先に立つ思いでし
たが、後日確認して間違いではない事が判り、大嶋義実教授はじめ、皆様方のご厚意に感謝
するばかりです。演奏される曲目は、すでに方々のグループによっても愛奏されている
・フルート・オーケストラのための「風の忘れもの」(1994)
です。高い技術を持ったプロの皆さんによるアンサンブルを、今から心待ちにしています。
・ほぼ1ヶ月前に、自分たちの歌曲演奏会を開催した同じ会場アルティでしたが、この日も
「京都の夏」らしい底意地の悪い蒸し暑さに包まれた、しかし会場の中はすっきりと寒く、
最後まで演奏を楽しむことができました。中国、韓国、台湾、日本、それぞれの作曲家の
作品が解説付きで演奏され、僕には大いに学習意欲がかき立てられる内容で、とても有意
義な内容でした。ただ、やはりお国柄というのか、高音域での「けたたましい部分」が、
やや耳に残りました。ちょうど、雅楽での笙や和琴の響きの中に篳篥シチリキが突然割り込ん
でくる、あの感じです。最終盤で演奏された僕の「風の忘れ物」は、さすがに主催者側の
京都市立芸大の皆様の確実な演奏で、大嶋教授の御指導に心からの敬意を表します。民俗音
楽に近い作品や、無調の抽象的作品の中間に位置する作品として、自分の拙作がこのような
場所に置かれた理由が、判ったような気がしました。皆様に心からの拍手と感謝です!
]]>・今から30年以上も以前ですが、敬愛するピアノ
指導者、いや音楽そのものの指導者・松原智恵
さんから、ピアノ連弾曲の出版のお話を頂きま
した。曲は、広く知られているプロコフィエフ
の朗読付き管弦楽曲「ピーターと狼」(Op.67)
これを全音楽譜出版社が企画している連弾楽譜
と絵本を兼ねた「ピアノ絵本館」シリーズの第
6巻として出版、ピアノ運指などを松原さんが
担当され、絵本としての装丁は、お知り合いの
たまいいずみ氏が担当される、との内容でした。
・これまで編曲の仕事は機会がなかったのですが、
有り難く僕も仲間に加えて頂くこととなり、既
に市場に出回っている、内外の同種の譜面をチ
ェックし、(1) あくまでも原曲に従い、余計な
フレーズなどは加えない。(2) 原曲で使われる
楽器の特性を尊重しつつも、ピアノ演奏でその
効果が発揮できるよう、場合によっては音位や
アーティキュレーションを大胆に変更する。(3)
原曲は切れ目なしに書かれているが、教材として
部分的にも活用できるよう、全体を17のパートに区分けして、それぞれの内容を示す小題名
をつける。‥‥‥このように我々の譜面における方針を決め、無事1990年8月に初版第1刷
を発刊しました。繊細で透明な日本画に特有の、ぼかし・にじみが美しいユニークな挿絵も
国外で好評のようで、刷りを重ね、現在に至っています。
・偶然に数日前、ユーチューブの公開映像で遭遇した、台湾での発表会?学童コンクール?で、
小さい弟を連れたお姉さんが、この「ピーターと狼」の中の「小鳥のあいさつ」と言う場面を
二人でとてもクリアに、誠実に演奏して、僕の心に深い印象を残しました。1分少々のシーン
ですが、自分が苦労してまとめた編曲が、このように絆として役立っているのだ、と僕も嬉し
く、二人にエールを送りたい気分です。あ、遅くなりましたが、この映像に至るには、
文字列 "S.Prokofiev arr. 千秋次郎" で検索してみてください。1分ちょっとの映像です。
・すでに先行トピック[2216] で紹介済みですが、
平重盛タイラノシゲモリに仕えていた武者・斎藤時頼
サイトウトキヨリと、平清盛タイラノキヨモリの娘・建礼門
院徳子ケンレイモンイントクコに仕えていた雑仕女ゾウシメ
・横笛との悲恋が「平家物語」第10巻に語られ
ていて、高野山の麓にある和歌山県かつらぎ町
(奈良県葛城市とは別)には「横笛の恋塚」と
される旧跡が、今もひっそりと残っています。
・古い伝承を受け継ぐ社寺や跡地を、他にも数多く
抱える、かつては村落だったこの町の文化事業の
一環として、2012年に実現した「紀州かつらぎ・
ふるさとオペラ」は、このヒロイン横笛の短い生
涯を、2幕の室内オペラに凝縮したものです。全
体のプロットを、プロデューサ防野宗和氏が作成
され、それを小川淳子さんが歌詞に、それを僕が
音楽に仕上げ、度重なる推敲を経て、舞台に載せ
ることが出来ました。何曲ものアリアを作曲しな
ければならず、すべて初体験でしたが、それでも心躍る充実した制作期間でした。
・上掲の画像は、2012年12月の初演で使われたチラシです。この第1回目の後、2015年3月には
第2回目、2018年3月には第3回目の再演が、ともに盛会満席の中で終幕しました。youtubeで
公開されているのは、第3回公演の記録です。通しで約2時間の内容が、下記の14の場面に区分
されています。各場面に達するには、冒頭に赤く記された文字列で検索してみてください。なお
それぞれ始めと終わりに、無関係の「お知らせ」が付いているので、それらは飛ばしてください。
僕自身が作曲で関わっているのは、実質的には、ー4. から ー12. までの音楽となります。
・横笛の詩ー1.(開場前)出演者スナップと文化会館あじさいホールの全景など。音楽は市販の物か?(2'17")
・横笛の詩ー2.(開演前)かつらぎ町長による第3回開催のご挨拶。横笛と天野の里の関わりなど。(4'14")
・横笛の詩ー3.(開幕前・序章)第2回公演から、このオペラの「神聖劇」的な要素を高めるために、高野山
の僧侶の有志の方々からの協力を得て、幕開けと最終シーンで、声明を流す事になったよう
です。滝口役のテノール歌手も中に加わって、舞台脇に影姿で現れる横笛役のソプラノ歌手
と交互に、声明に続く「相聞歌」を歌いますが、これは第2幕第3場で歌われる「愛の二重
唱」を先取りした形になっています。(7‘23")
・横笛の詩ー4.(第1幕第1場)六波羅・清盛邸前庭? 幕開きの合唱シーン。オペラとしては実質的にここが
開始点。権勢並びなき平家の繁栄を讃え、一族郎党が歌う祝い唄の形をとっているが、春鶯に
寄せる季節の移りに託して、愛が悲恋に変わる人生の奥深さを暗示する予言とも受け取れる。
なお、祝い唄が終わって、皆が退場すると、鈴を鳴らして一人の尼僧が登場する。奈良法華寺
の春蓬尼シュンポウニという尼で、各場面に現れ、ストーリーの案内役を果たす。(6'19")
・横笛の詩ー5.(第1幕第1場)六波羅・清盛邸前庭? 横笛の同僚でもあり、六波羅で共に平家に仕える二人の
侍女の息抜きタイム。過日の大宴会の感想や、横笛に言い寄る殿方のゴシップなど、その場を
通りかかった斎藤茂頼(時頼の父)が立ち聞きし、さては堅物の息子が名門の姫君に恋をした
ものと勘違いして喜ぶ。「父君様は何も判っておられぬ」と密かに気をもむ侍女たち。(9'31")
・横笛の詩ー6. (第1幕第1場)六波羅・清盛邸前庭? 横笛から返事が来ないのを気にする時頼、身分の違い
から返事をためらっていた横笛、偶然に誰もいない前庭で出逢う二人。誤解は解けて、二人の
愛は深まる。誠実に話して、父から結婚の許しをもらうと意気込む時頼だが、人生の気苦労を
知っている横笛は、それでも事の成り行きを懸念する。(9'01")
・横笛の詩ー7. (第1幕第2場)斎藤茂頼宅 父と子、久々の対面。横笛が怖れた通り、父は時頼の話に耳を傾け
ようともしない。貴い家柄の姫を娶ってこそ、一族の繁栄に繋がるという父。期待を裏切られ
逆上する父。この上は自分が家を去る以外に道はないと決意する時頼。激情のアリア。(9'34")
・横笛の詩ー8. (第1幕第3場)六波羅・清盛邸前庭 時頼が六波羅に出仕していないと侍女達が騒ぐ。横笛は、
彼が嵯峨野の往生院という寺で出家した事を知り、嵯峨野に行ってみる決心をする。(10'24")
・横笛の詩ー9. (第1幕第4場)嵯峨野・往生院三宝寺 心易い侍女を連れて横笛が往生院にたどり着く。読経
する時頼らしい声が聞こえる。案内を乞うと、修行の妨げになるので会わせる訳にはゆかない
早々に立ち去れ、と寺院の許可が得られない。絶望した横笛は、自らを傷つけ、流れ出た血潮
で、門前に恨みの和歌を書き残して、その場を去る。この第3回公演ではこれに続き、防野氏
の新演出で、能楽演者による能舞シーンを付加、般若面での舞が優しい女面での舞へと移り変
わり、時頼が自分を見捨てて出家した事への悲しみと恨み、それがやがて時頼の苦しみに寄り
添う形で、それならば自分も髪を下ろして出家しよう、と、独占欲的な恋情が、しだいに悟り
の境地に浄化されてゆく経緯を、この異色の、後半の長丁場で見せています。(17'50")
・横笛の詩ー10.(第2幕第1場)奈良・法華寺 休憩を挟みここから第2幕。これまで場面の変わるごとに現れ
説明役だった春蓬尼が、ここ自分の寺院の一室で、訪ねてきた横笛に再会し、みずからも印象
的なアリアを歌う。横笛がじつは彼女の姪だったことが明かされ、「叔母さま同様、私も尼に
させてほしい」との突然の懇願に困惑、思い留まるよう説得するものの、横笛の決意は固く、
叔母も法華寺門主への執りなしを承諾、大変わりした今の境遇に、改めて共に涙する。(8'34")
・横笛の詩ー11.(第2幕第2場)紀州かつらぎ天野(アマノ)丹生都比売(ニュツヒメ)神社境内 天野の里人たちが
歌う合唱シーン、神仏に感謝しつつ日々の平穏な暮らしを讃える。そこへ横笛が、侍女と共に
やってくる。尼としての厳しい修行に耐えた彼女は、かつての恋人・時頼(今は滝口入道)の
いる高野山の麓、天野の里に移り住んで、精進の日々を送っているのだ。「横笛さん、いつま
でも天野のこの里でお元気にね」と里人たちは横笛を励ます。しかし今日は何だか少し疲れて
いるようだ。村人たちが引き上げた頃、異変が起こった。横笛は急に斃れ伏し、侍女の必死の
呼びかけにも応えず「ひと目逢いたい‥‥」と言って、息を引き取ったのだ。そして、次なる
異変が起こる。誰の目にも見えないところで、彼女の魂が体内から抜け出し、一羽のウグイス
となって、高くそびえ立つ高野山をめざし、一心に駆け上がっていったのだった。‥‥‥この
「神聖劇」のハイライト部分‥‥毎回の公演で、ここから先の舞台は、技術の皆さんが最大限の
テクニックを駆使されています。果たして、 今回の成果はいかに?(18'43")
・横笛の詩ー12.(第2幕第3場)高野山・大円院庭先 身を寄せている大円院で、滝口入道は誰かが自分を呼ん
でいるような気がした。そして一羽のウグイスが、たった今、目の前を飛びかすめたような
‥‥ここから夢とも現ウツツとも定かならぬ時空の中で、このオペラ最後のアリア「愛の二重
唱」が始まる。滝口入道と横笛が、愛の夢を交互に歌い交わす。横笛がどこまでも、見果てぬ
夢を歌い続けるのに対し、滝口入道が歌っているのは、いつの間にか経文の一部‥‥そして
井戸端で、横笛=ウグイスの亡骸ナキガラを発見する。‥‥再び高野山僧侶の声明が加わり、
2刻に及ぶこの神聖劇の幕が降りる。(10'36")
・横笛の詩ー13.(フィナーレ)「春鴬の歌」のアンコール 本オペラの実体は、直前のー12. で終わるのです
が、やはり、このままでは寂しく心残りなので、最後にもう一度、冒頭で聴いた華やかな合唱
を再演、横笛も生き返り?、滝口も舞台に参加して、爽やかに賑やかに、フィナーレ舞台を、
皆様に観ていただいて、お別れとなります。(14'36")
・横笛の詩ー14.(エンドロール)作詞・小川淳子、作曲・千秋次郎という文字も最初に現れ、僕にとっても
(ことに、仕掛人・防野宗和氏すでに亡き今となっては)もはや二度と味わえぬ 貴重な体験
だったなと、懐かしく慨嘆しています。(2'46") ♣
]]>・7月10日(日)午後1時30分開演
・京都府民ホール・アルティ
(御所西側、烏丸一条下ル)
・自分たちの身近にあるはずの日本の歌曲、その
研修と振興に関わっている、ささやかな我々の
会も、ここ数年はコロナ災禍に振り回され、大
阪と京都で隔年ごとの開催予定だったのが、20
20年の京都公演は中止となってしまい、地域の
愛好者の皆様とは、3年以上に及ぶごゴブサタと
なってしまいました。それだけに、今回の歌い手
たちの意気込みは高く、聴衆の皆様に満足して頂
だける良質の歌曲を選択、間近に迫った本番に向
かって専心努力しております。
・もっと早くにご案内をすべきでしたが、珍しくも
今年は、5月から6月にかけて僕の作品が公演され
る機会が多く、それに加えて、田中静子さんのユー
チューブ立ち上げに伴なう、僕の作品が実音や映
像で公開される回数も増え、主体的な取り組みをしている、こちらの日本歌曲定演のご案内が、
不本意にも遅れてしまいました。
・今回の第7回定期演奏会において、僕自身もいつもより数多く自作を用意し、何人かの演奏者に
歌ってもらう事になっています。次の6ステージ(9曲)です。
(1) 「秋風の妖精」(詩・貞松瑩子)(1995)
夏風から変貌した初秋の風(妖精)。楽しかった夏の悪ふざけ、しかし今や季節は秋……去リ
行く夏を見送る叙情歌。冒頭のピアノに現れる「思い出の主題」が何度も繰り返され、惜別を。
(2) 「初あき」(詩・吉田弦二郎)(1955)
戦前には多くの読者がいた彼の詩篇の中からの短詩をもとに、作曲めいた事を始めて4年目の僕
の、21歳頃の未発表曲。今から見ると、とかく「功を焦って」後半の盛り上げに余裕がない。
全体の雰囲気を残しつつ、今回その部分を僅かに改訂しました。3分に満たない習作です。
(3) 二重唱「懐かしい歌をたずねてシリーズ5」(2012)
10年ほど以前に本会で初演した編曲もので、ご年配には周知の「あざみの歌」「小さな喫茶店」
の懐メロセット。暗と明の違いこそあれ、両者に共通する、どこか節度のある雰囲気が快い。
(4)「初恋」(詩・島崎藤村)(1955)
ひと昔前なら誰でも口ずさんだ事のある「まだあげそめし前髪の‥‥」明治詩歌の絶唱。前記
「初あき」と同じ年の習作ですが、その後1978年に3節詩から4節詩に(藤村自らが改訂した
ように)本曲も追加改訂し、昨年はコーダを少し延長、今回の67年越しの初演となりました。
(5) 組曲「三つの童謡」
作曲年・作詩者がそれぞれ異なる三つの詩に作曲した童謡(と呼んで良いかどうか判りません
が)、3曲をこうして並べると、なかなか変化があり、楽しめます。
1.「音のお便り 孫から届いたレッスン風景」(詩・阿曽吉子)(1993) 二人の孫から、各自のレッスンの
録音が届いた、ソナチネ1番とへ調のロマンス、それを聴いておばぁチャンは‥‥‥
2.「ひろったえんぴつ」(詩・いわきたろう)(1986) 意表をつく2拍目から始まるアウフタクト
の3拍子。同じメロディーを4回も繰り返すのだが、飽きるどころか、ますます親近感が。
3. 「俳句」(詩・加茂所平)(1991) 俳句競技大会で失格でハネられないよう、厳密に五/七/
五の字数制限が守られているかどうかが、本人にとっての最重要課題、さて出来栄えの方は?
(6) 二重唱「京の町・歳送り」(詩・小川淳子)(2008) 原曲は女声合唱組曲「京都・夏過ぎて
のち」からの終曲(第4曲)、今回は女声二重唱で歌う。「マルタケ エビスに‥」のように、
京都の東西の通り名を歌うわらべ歌は広く知られていますが、南北の通り名を歌ったものは、
今は歌詞だけ残っていて、曲そのものは途絶えている、とのこと。この楽譜では、オリジナル
な旋律によって、「テラ・ゴコ・フヤ・トミ‥‥」の歌詞を復活させ、さらに進めて、寺町
通りから東(つまり川向こう)の東大路・花見小路・大和大路→河原町通までも、曲の中に
採り入れました。京の大晦日、ハンナリした賑わいが伝わってくると良いな、と思います。
・長くなりましたが、独唱・二重唱・近年の作品・70年近く時を隔て若書きの初演・昭和の
懐メロ・京都ご当地もの、などを取り揃えて、お客様をお待ちしています。
・湿熱の1日でしたが幸いにも雨とはならず、まずまずの京都でした。ありがたい事に、想定
していたよりも多くの皆様が、まるで外へ出る機会を待っておられたかのように、ご来聴
くださったお陰で、盛会理に無事終演いたしました。その日のちょっとした体調の加減で
平素の実力が十分に発揮できなかったステージもあったようですが、それも修練の一過程、
次回には雪辱を果たされることを期待したいと思います。次回は大阪での公演となりますが、
歌い手の皆さんの出品曲目を見て、全体のバランスがとれる適切な自作を提供しようと、考
えています。次回もまた親しみやすく、しかし安易に上滑りしないステージを目指します。
・演奏会の直後からコロナ感染者数が急激に増え、第7波の到来となったようです。何だか
潮目が切り替わる直前にうまく乗り切れたようで、その意味で、我々はラッキーでしたが、
いま世界を脅かしている病禍と戦禍が、一刻も早く治まる未来を祈らずにはおられません。
]]>
ユーチューブに先日また、僕の作品の新しい
映像をアップされていたので、ご案内します。
・三絃・二十五絃・低音二十五絃のための
組曲「辻が花三章」(Tsujigahana Triptych) (2017)
1. 里山桜 サトヤマザクラ
2. 磯部葛 イソベクズ
3. 紅菊白菊 ベニギク・シラギク
・この曲は、かねてより親交のあった邦楽集団S
の再結社記念・第1回演奏会のために提供させ
ていただいた三絃・筝・十七絃のためのトリオ
で、2015年の作品ですが、その2年後に、松本
市を中心に活動をしておられる三人の演奏家の
ために、より幅広い音楽表現の可能な二十五絃
や低音二十五絃の筝に、編成替えをして、譜面
にも改訂を加え、決定稿としました。田中さん
が今回ユーチューブにオープンされたのは、そ
の2017年の初演ライブだと思うのですが、左
のチラシがその時のもので、すでに僕のブログ
でも5年前にご報告していますが、肝心の音源にたどり着くには、"千秋次郎 辻が花三章"
という語句で検索してみてください。演奏者名や田中さんによる追加的なコメントも書かれ
ています。春→夏→秋 の流れが、序→破→急それぞれの楽章に振り分けられ、個性的で破綻
のない、得難い良演、と僕には思えます。また、どこかで述べている筈ですが、第3章のタイ
トル「紅菊白菊」は、この曲がもともと、S結社の再スタート記念演奏会に寄せる作品だった
事を思い出してください。これは、心ばかりの僕からの「紅白のご祝儀」だったのです。
・6月17日(金)午後7時開演
・福井新聞社/風の森ホール(福井市大和田)
・今から約7年前、僕の故郷である福井市で活発に
演奏活動を展開しておられる音楽家として、作品
を提供し、お近付きになったクラリネット・中曽
根有希さん‥‥このたび、福井新聞社主催による
「ちょっと素敵な音楽会」シリーズに出演される事
となり、僕の作品も採上げていただく事になりま
した。僕はこれまで、彼女のことを、多くの音楽
仲間に囲まれ、現在は福井市在住の有能な演奏家
という風にしか思っていなかったのですが、今回
頂いたチラシの文面を見て、驚きました。クラリ
ネット演奏者としての経歴に加えて、1988年度
ミス・インターナショナル日本代表、泉州銀行イ
メージモデル、婦人画報読者モデルなどを務めら
れたエレガントな経歴の持ち主、広く日本の文化
全般に関わるお仕事をなさっておられたのですね。
・そういう思いで、今回のモノクロ・チラシを再見
すると、暖色系グレイのトーンによる写真の上に、深黒の文字が映えて、とても印象深い画面
構成です。親しいお仲間のピアニスト(筝もイケる貴重なTwo Way Playerつまり二刀流)の
松村さんをアイカタにされ、僕の作品・下記の3曲を演奏してくださいます。
・(1) クラリネットと筝のための「空いろの初夏」 (2015)
・(2) クラリネットとピアノのためのソナチネ「ひなうた異聞」(1982)
・(3) クラリネットとピアノのための「福井ララバイ・おべろんや」(2022)
・(1)の曲は、もともとフルートと筝のための二重奏として書いたものですが、フルートよりも
ややクセのあるクラリネットの音色でも、また違った味わいが生ずる事と思います(カラッと
晴れた日が続く初夏もあれば、年によっては雨がちの雲の多い初夏もあるように)。(2)の曲は
今から40年も以前の旧作で、率直に白状すると、初演当日までに3楽章まで書き上げる事が
できず、苦肉の策として、再度1楽章に戻ってA-B-Aのような3部形式の構成にまとめた、
今から思えば、情けない未成熟の若書きですが、それでも、自分にとっては懐かしい当時の
自分に逢える、消却するには忍びない一作です。演奏者のご厚情のおかげで、今回の音出しが
可能となり、感謝しています。(3)の曲は、今回の公演のために、今年になってから制作、幼い
頃に僕自身聴いていたはずの子守唄「おべろんや」を主題にした愛奏曲です。今回が初演と
なりますが、松村さんの特技を尊重して、前半は筝で伴奏、後半からピアノで伴奏、という
演奏スタイルを取らせていただきます。なお本ブログのトピック [2202] で、この曲に関して
いろいろと書いていますから、そちらもご覧になってください。何年振りかで、僕も本番当日
に帰福、期待を込めて会場に伺う予定です。高志高校時、福井大学工学部時の、今は数少なく
なってしまった同級生の朋友にも、会場で再会できるのを愉しみにしています。
・6月とて郷里の福井市もやや蒸し暑い午後となりましたが、幸い雨には降られずに、深更の
最終サンダバードで、その日のうちに帰阪するを得ました。この日は正午頃に京都・高槻間
で人身事故があったために、往きのダイヤが乱れ、予定より50分遅れての福井到着でした。
・地域に密着する福井新聞社が、本社に隣接する自社ホール「風の森ホール」を会場にして、
地域在住の音楽家を中心とする「ちょっと素敵な音楽会」という市民向けの親しみやすい
企画を、定期的に開催しているのですが、今年の6月が中曽根さん達の番になったので、以
前から親交のある僕の作品を採り上げて頂いたようです。上記の3作品、いずれも破綻なく
誠実な演奏で、聴衆の皆様に聴いて頂くことができました。ことに今回はじめて披露された
上記(3)の曲の初演は、素晴らしい出来栄えで好評でした。それと対照的な今から30年前の
若書きの(2)の曲も、やや荒削りな音使いが、現在の自分には面白く、若い頃の自分に邂逅
した思いでした。次回もまた、何か新しいものを提供してあげようと考えています。
]]>・2012年の初演、2015年の再演、そして2018
年には3度目の公演が行われた、僕にとっては
相棒の詩人・小川淳子さんともども、幸運にも
初めての室内オペラ作曲の機会を与えて頂いた
・紀州かつらぎ・ふるさとオペラ「横笛の詩ウタ」
( 歌詞・小川淳子)(2012)
・いつの時代にも起こり得た身分的格差による若き
男女の恋の結末、平安末期の物語の中に書き留め
られた、若武者・斎藤時頼トキヨリ(出家後の滝口
入道)と、宮中に仕える横笛という雑仕女ゾウシメ
との悲恋、人々の心に感銘を与えたと見えて、そ
の後、室町時代には「お伽草紙オトギソウシ」として、
左図にあるような絵入り本で、幾つかの版元から
出版されています。
・結婚の許しが得られず若武者は高野山の僧侶とな
り、ヒロインの横笛も髪を切り、尼となって、高野山の麓、天野アマノの里で若い生涯を閉じるの
ですが、息を引き取った彼女の魂はウグイスに変身、女人禁制ニョニンキンゼイの高野山めざし
飛び立ってゆき、かつての恋人だった滝口入道の住まう寺の井戸端で、ウグイスの姿で斃れて
いた……という、切ないエンディングが待っているのです。
・和歌山県伊都郡かつらぎ町は高野山の麓にある村落で、古い社寺や言い伝えが今も残っていて、
ここには横笛のものと伝えられる墓石が残っているのです。……ここの住人で、町の文化遺産
を大切に考えておられる文化人・防野宗和氏が企画を立てて町に働きかけられ、この横笛伝承
を住民参加の「ふるさとオペラ」として舞台化させる試みを、2012年に実現されました。大
阪芸大時代からの楽友K氏の紹介で、このオペラの作曲を僕が担当させて頂く事となり、気心
の知れた小川淳子さんのテキストをもとに、幕開けの合唱から始まり、各場面のアリア(ソロ、
ドゥオ、トリオ)など総数15余曲、苦労しつつ、楽しみつつ、期限内に完成しました。
・無事閉幕したその初演以来、これまで2回の再演が、いずれも盛会・好評裡に終了しました。
コロナ禍で延びたとはいえ、今年あたり第4回公演の予告が来るかな、と思っていたのですが、
痛恨の極み、防野宗和氏は昨年6月、持病にわかに篤く、死去されていました!僕が知るの
が遅かったのです。……ただ、その事を予見されての事か、2018年の第3回公演の舞台映像を
ユーチューブに残して下さっていました。……僕にとっては貴重な形見で、今もなお、思い出
のよすがに、折ある毎に流しています。
・これまでの経緯を述べるのに、ここまでかかったので、一先ずここで打止めとして、書き足り
ない事柄は、追い追い項を改めてお伝えします。できれば、このあと、実際の舞台映像(と、
それを音で支えている僕の音楽)に、暫くなりとお付き合いください。→→ この郷里オペラ
に達するには” 横笛の詩ー4. "のような文字列で検索してみてください。(約2時間余の舞台が
1. から13.までに区切られているので、6文字目には英数モードで舞台ナンバーを入れます。)
なお、合唱に出演されている女声パートや、主演以外のソロの歌い手の中には、地域で研鑽を
積んでおられる声楽家も参加しておられます。まさに、”我らが”ふるさとオペラ、です。
]]>・4月17日(日)午後1時開演
・大津市民会館大ホール (京阪石坂線島ノ関)
・別の予定が入っていたので、会場には伺えな
かったのですが、相当に厳しい入場規制のも
とで開催された大津市合唱連盟による第40回
合唱フェスティバルおおつ、今年は15の団体
が参加され、楽友・田中陽子さんが指揮する
湖西ローズハーモニーも第1部のトリに出演、
少人数ながら、無事フェスティバルの一翼を
担われました。
・皆さんが歌われたのは2曲、そのうちの1曲
が、僕の、音楽之友社から出版されている、
・混声合唱組曲「風に乾杯」(1993)(詩・小川
淳子)からの、第1曲「みどりのバラード」
でした。
・この合唱団の「持ち歌」となっている曲目に、
「オカリナの歌」というナンバーがありますが、その曲、実はこの組曲の第3曲なのです。
今回は、緑の季節に合わせてこの第1曲を選ばれました。今日僕の処に届いた公演映像を見
ましたが、コロナやその他の事情で?現在メンバーが減少していて、たったの8名のステー
ジ、ところどころ、練習不足を感じさせる個所もありましたが、それでも、指揮者・歌い手
共に、目指している表現の意図が的確で、この、やや長いメッセージの、単に季節を歌うの
ではなくて、人生論に及ぶような小川さんの歌詞が、聴き終わった後に心に残っているよう
な、不思議な感銘を覚えました。……今後さらに歌う仲間を増やして、地道な活動を続行し
て行って欲しいと、願っています。お疲れさまでした!
]]>
・6月11日(土)午後2時開演
・ザ・ハーモニーホール(小ホール)(松本市島内)
・昨年7月には「千秋次郎作品展」として、新作
の初演と旧作の再演を取り混ぜて5曲、コロナ
災禍の中で(僕自身、松本行きを諦めたのです
が)実現してくださった田中静子さんが、今年
もまた、フレッシュな曲目を取り揃え、仲間の
佐藤由香里さんとのコンビで、息の合った演奏
会を開催される運びです。昨年がいわば僕の個
展だったので、今年の出番はないだろうと思っ
ていたのですが、有難いことに、新作の初演と
旧作の再演という形で2作品を採り上げて頂い
ています。
・新作の方は以前のトピックでも、お伝えしている
・高橋節郎の短歌による筝歌「桜に寄せて」(2022)
で、田中さんの25絃筝によるソロ(弾き歌い)
となります。(この曲の概要は、上記のトピックに
詳しくかいているので、そちらをご参照ください。
高橋氏の工芸家らしい大らかな人柄を反映したような実直な短歌なので、筝歌の方も自然な
歌声で明るく、時に重く、豊かな情感を伝えています。
・もう一つの曲の方は、すでに2015年6月に、このお二人によって公演が行われているのですが、
・二十五絃のための二重奏曲「空の青 海の青」(2009) という2面の二十五絃筝(一つは低音の)
7〜8 による作品で、こちらはユーチューブでの公開のために、新たに収録する目的もあるようです。
若山牧水の短歌「白鳥は悲しからずや 空の青 海の青にも染まず 漂よふ」に感銘を受けて、
そこからこの曲が生まれました。前回の公演からすでに7年が経過……… お二人の音楽の深化
と円熟に期待を寄せています。
・昨日までの好天気の変わり目となり、朝から気になる空模様、ひとまず傘を忍ばせての外出と
なりました。長距離の旅費がすべて3割引となる、高齢者にはありがたい「ジパング倶楽部」
の会員特典ですが、気がつくと、昨年度はただの一度も、関西から他所へは出ていず、年会費
¥3,000 が無駄になっていました。2年ぶりの松本、ホームに降り立った途端、マツモト〜〜
マツモト〜〜‥アナウンスの女声がイマドキ珍しく、懐かしく、新幹線が立ち寄らない駅舎の
孤高な自矜に、ひそかに感銘しました。
・正式には松本市音楽文化ホールと称されるザ・ハーモニーホール(大、小)は、市の中心から
やや外れた島内公園の中に建つ樹木に囲まれた優雅な会場コヤです。僕がここに足を運ぶのも、
7〜8度目になるでしょう。今回はコロナ制約のためお客様が少なくって‥と田中さんは僕に
対して気の毒がっておられたのですが、実際は予想より多くの来客があり、開演前に座席追加
の作業が行われ、全員が収容されました。
・今回も常連の方の多い、アットホームで落ち着いた演奏会でした。田中さん自身は、必ずしも
体調が万全ではなかったようですが、僕にはあまり気にならず、ブレの少ない初演と再演だった
と思います。いずれまた、彼女のユーチューブにアップされる事と思いますから、その時にまた
ご紹介しましょう。午後の会だったので、午後4時過ぎに無事閉幕となりました。いつもなら、
そのあとの打ち上げのミーティングに参加するのですが、今回はトピック{2213] でご紹介した
ように、翌日の午後から京都での女声合唱の会があり、僕もできれば早々に帰阪して、京都行き
の準備とか体調も整えておきたかったので、今回は早々に会場を辞し、松本15:53発「しなの」
18号で、折しも雨となった木曽谷を南下して、名古屋から新大阪、雨上がりの自宅に戻ったの
は21:45でした。‥‥慌ただしい1日でしたが、古びた言い方をすれば「土地の人情に触れた」
佳き1日の旅程でした。
]]>・6月5日(日)午後3時開演
・三井住友海上しらかわホール(栄2丁目)
・2024年2月に閉館が決まっている、名古屋
屈指のクラシック専用ホール(定員700名)
において、43回目を迎える日本フルートフェ
スティバルが開催される予定です。音大生に
よるステージ・愛好家によるステージ・大合
奏のステージなど、演奏者ジャンルごとの、
親睦を兼ねた演奏会フェスティバル、長期に
わたって日本のフルート音楽の普及と興隆を
担ってこられた意義は大きいと思います。
・光栄なことに、この催しの中の1ジャンルに
プロによるステージ、というのがあり、そこ
で僕の旧作の一つが再演される事になってい
ます。
・フルート・オーケストラのための
「今日の花 きのうの花」(1998)
・寺本義明氏の指揮のもと「名古屋笛の会」の皆さんが演奏されます。
・24年前に書いたこの単一楽章の作品、判りにくいタイトルが付いていますが「今日の花
は(やがて)きのうの花」と言葉を補ってみると良いでしょう。はかなげで美しい花にも、
必ずや生々流転の掟がある、隆盛と凋落がある…そんな感慨を音にしました(ちなみに
欧文でのタイトルは "A Floral Process" です)。バスフルートをステージの中央に置き、
その両隣が同数のアルトフルート(1,2)、それぞれの片側にはフルート(1,2,3)が続き、
最後に、舞台の左右の先端にそれぞれピッコロが並ぶ、という左右対称の、左方さかた と
右方うかたに分かれて、日本旋法による主題展開を、時に対立的に、時に協調的に、くり
広げてゆきます。………やはりこの曲は、演奏にかなりの人員を要するので、今回のよう
な場合には効果を発揮するだろうと、実の所とても期待をかけています。当日のご成功を
祈るばかりです。
・[追記] うっかり失念してましたが、僕が名古屋笛の会の皆さんに前回お目にかかったのは、
6年前、2016年3月、日本フルート協会50周年記念公演(熱田文化小劇場)の時でした。
折しも、その2年前に完成した フルート・オーケストラのための「追憶の季節」(2014)を
東京・大阪に続いて、名古屋での初演へと導いてくださった6年前のご厚誼に加え、今回も
また名古屋初演となる「花・花」の栄誉に対し、改めて深く感謝申し上げます。
・蒸し暑い名古屋でしたが、公演は盛会でした。急速な4拍子の第1楽章の中に、テンポを落
とした3拍子の第2楽章を埋め込んだような変則的なソナタ形式の作品ですが、1998年の
京都バロックザールでの初演以来、何度か再演されたものの、自分の意に叶う演奏に出会う
ことができずに、現在に至ったのです。ようやく今回、自分の求めていた日本旋法の響きと
音楽の姿に出会うことができました。……思えば長かった24年間でした。名古屋笛の会の
皆さんの安定した技量と熱意、指揮の寺本義明氏の豊かな洞察力のもとで「水も漏らさぬ」
演奏が成就し、作曲者として、まさに「以って瞑すべし」の想い……敬服の至りです。この
ご縁を大切に、また次なるフルート・オケの作品を提供させて欲しいと願っています。
]]>
・6月26日(日)午後2時開演
・今福音楽堂(城東区今福東1-10-5
今福ファミリータウン3階)
・コロナ災禍にもめげずに積極的な活動を続けて
いるユーフォニアムの小野泰行氏、今年も新鮮
な曲目を取り揃え、リサイタルを開催されます。
・前回の公演が、一昨年2020年11月(確か6月
の予定だったのが延期となって)だったのです
が、この時は僕が体調不良で欠席してしまい、
活動30周年の記念公演が聴けず、残念でした。
・それに続く1年半ぶりの今回の公演。予定曲目
の中には、宮野清子さんに委嘱された新作の
「3つのソネット」という作品が入っていて、
とても興味をそそられます。また、ブラームス
のチェロソナタ第一番(僕の好きなホ短調とい
う調性)が、ユーフォニアムでどのような表情
を帯びて来るのか、さらにまた保科氏の著名作品「ファンタジア」など、周到に配慮された
選曲に、彼のセンスが感じられ、今度こそは体調と予定を整えて、出席する予定です。
・ところで、文脈から言えば真っ先にご案内すべき事項でしたが、この公演に僕の作品も1曲
花を添える予定になっています。
・アルトサックス、ユーフォニアム、ピアノのための「追憶の季節」(2014/2017)
・曲名を見てお気付きかも知れませんが、この曲の前身の前身は、2000年に完成したサクソ
フォーン四重奏曲で、これを2014年になってフルート・オーケストラのためにリメイクし、
タイトルを一新して、同年秋にFOJ(フルート・オーケストラ・ジャパン)によって東京で
最初の公演を行った、自分にとっても愛着の小品なのです。さらにその後、出版を前提に、
Alt-Sax, Euph, Pf の三重奏として譜面を作成する機会が生まれたのですが、とかくする内、
地球全土にコロナ災禍が襲いかかり、出版は今のところ棚上げ。…………僕として、出版は
さておき、できれば前もって実音での響きを確かめたい思いがあり、ご出演の皆さんの協力
のもとで、いわば「試演」という形で、自分の音を確認させていただく事になっています。
そして、いつか実現するかも知れない出版の機会に、万全に備えようと考えています。
・この2日後に関西にも梅雨明け宣言が発表されたのですが、暑い夏風が痛快なほどの快晴、
今福鶴見駅すぐのショッピングモール・今福ファミリータウンの3階にある音楽ホールに
初めて足を運びました。こういう、日常生活に密着していながら、3階に行くと、そこに
異質の空間が待っている、という体験も、芸術が一部の権威クラスのものでなく、地域の
多くの人の心の糧となりつつある、現在の社会にとっては、とても重要な役割を果たして
いるのだな、と改めて思いました。そして、定刻に始まった小野氏とその仲間のコンサー
トも、技巧をひけらかすか、聴衆におもねるかの薄っぺらなものではなく、試行錯誤を内
包しつつ、自ら目指すものを真面目に問いかける、印象深い内容のものでした。
・ここで今回、試演していただいた三重奏バージョンによる「追憶の季節」も、以前に旧作を
サクソフォーン四重奏曲から、フルート・オーケストラ版に移し替え、それを今回はピアノ
の加わった三重奏に切り替えて見せたものですから、基本となる3つの主題そのものは変わ
らずとも、それで何を伝えるのか「追憶」の中身はすっかり変貌したように、自分でも思い
ます。しかし、自分で言うのも変ですが、とても能く「判る」誠実な音楽を、三人の皆さん
が構築して下さったことに心からの共感と、みずからの音楽への感銘を覚えています。感謝
です! ただ、あともう少し推敲を重ねて、中間部の調性をより的確なものに替えてみよう
と考えています。次回の公演の折には、おそらく最終版としてお聴きいただく事になるでし
ょう。小野氏らとの絆も更に深まることを期待しつつ、今後とも、どうかご支援よろしく!
]]>
・6月12日(日)午後2時開演
・賜楽館シラクカン 京都市左京区岡崎南御所町
(平安神宮東側)
・このチラシを目にした時の第一印象は、通常
のチラシとはずいぶん異なり、淡い色使いの
美しい一枚の絵画に接したような、ただただ
無言の色彩の燦爛、といった自分でも説明の
つかない不思議な美的情感です。
・その中にあって、慎ましげな文字が見えてき
ます。アンサンブル・フローラという女声合
唱団の、1st コンサート という文字です。
・ご本人から直接お聞きして判ったのですが、
ソプラノの桐山都喜子さんが、門下生の発
表会の最終ステージで、歌い手仲間の友人
と共に女声コーラスを披露したのが、この
アンサンブル・フローラの生まれる発端だっ
たそうです。そして数年前には指揮者を迎え
入れて、合唱団としての活動を開始した折も折、コロナ災禍の余波で、第1回の打上げ公
演が今年にずれ込んでしまったとの事でした。
・今回の第1部で全曲演奏してくださるのは、僕の「京都シリーズ」の中の最初の組曲で、
・女声合唱組曲「京都・春から春へ」(1997)(作詩・小川淳子)の全5曲です。
・詩心が通じ合う終生の相棒・詩人の小川淳子さんとは、地域オペラ「横笛と滝口入道」など
長大なものを含め、これまでに幾つもの声楽作品を送り出して来ましたが、京都の四季に寄
せた僕の女声合唱組曲には3組のセットがあり、
(1) 「京都・春から春へ」(1997)
(2) 「京都・春ふたたび」(2003)
(3) 「京都・夏過ぎてのち」(2008)
今回の演奏はその最初のシリーズで、春に始まり翌年の春に終わる、次の5曲からの構成です。
1-1 「哲学の道・さくら若葉」 …春
1-2 「如意ケ岳・大文字送り火」 …夏
1-3 「桂離宮・十五夜の月」 …秋
1-4 「大原寂光院・初雪」 …冬
1-5 「祇園円山・しだれ桜」 …春
第5曲の最後の部分(コーダ)に、第1曲冒頭のメロディーが顔を覗かせ、また美しい一年が
始まるのを予告して、全曲が終了します。
・前日まで、天気がややナーバスだったのですが、この日は朝から、いかにも6月らしい快晴、
(梅雨と背中合わせの、偽善者めいた空、といった処でしょうか)、岡崎公園が近いので、
この辺りの路地裏を散策する京都は初めてのヨソさんも多いのですが、会場のサロンは静か
な宅地に隣接していて心が休まり、出演者の皆さんのお友達とか、ツレアイの男性諸氏とか、
あ、こういうのを「マッタリした」と呼ぶのですね……気心が知れて、優しく、印象に残る
素敵な演奏会でした。
・お世話役の桐山さんは、ご自分も歌われつつ、合唱の仕上がりをとても気にされていたのです
が、僕の判断では、本番が、最も良くまとまった好演でした。僕もお陰で、面目を施しました。
・「京都・春から春へ」全曲の第1部に続いて、第2部は指揮者の小林 峻氏のテノールで、3曲
の独唱曲を、それも、歌詞が順番にフランス語→イタリア語→ドイツ語と変わり、言語の個性が
音楽そのものの個性まで変える、という得難い経験をすることができ、第3部では懐かしい日本
の旋律を、新しい編曲で味わうという、これもまた初耳の音楽を聴取することができました。
・出演者の皆様、本当にお疲れ様でした!ゆっくり静養を取られ、次なる標的を目指して、また
進んでゆかれますよう、会のさらなるご発展を祈っています。僕の近年の合唱作品には、「春
から春へ」ほどシンドい曲ではないものも多いので、ぜひまたトライして下さいますよう!
]]>・"A Walk in the Woods" (2004)
邦題は「里山の時」
・僕が大阪芸大に勤務していた頃、学生の一人
だったユーフォニアム専攻の高橋修司クンの
ために書き与えた作品でしたが、その後彼が
しばらく病気療養に入ったため、初演は牛上
隆司氏になり、米国での国際大会でも初演さ
れました。演奏を聴いた向こうのユーフォニ
アム奏者のAdam Frey氏から「ぜひ、自分
のところで出版させてほしい」との連絡が僕
宛にあって、左掲のような楽譜が出版され、
受賞は逃しましたが、その年の米国ユーフォ
ニアム・テューバ協会の出版楽譜賞にもノミ
ネートされ、自分にとっては出来過ぎの結果
となりました。
・全体が素直なメロディに溢れ(海外の人には
やや異国的に聞こえる?)、技術的にさほど
高度ではないものの、後半の山場で高いC音
が1箇所だけ要求されるなど、スリルが皆無ではないので、出版されてからは、アメリカ各地の
ジュニアグレード・コンテストの必須課題曲に指定されるなど、現在に至るまで、気がつ
いたらかなりの演奏者が、ユーチューブなどでご自分の映像を公開されていて、中には
それらの映像を集大成?したようなコンパイル資料まで現れています。
・いずれも感謝をもって拝見していますが、ユーフォニアムは別として、ピアノパートを受け
持つピアニストの中には、かなりのミスタッチや音抜きなど「おおらかな」伴奏の人もあ
り、苦笑せざるを得ない時もあります。ま、それはそれとして、皆さん、いずれも誠実に
取り組んで下さっている事に、いつも感謝しています。
・映像に達するには "Jiro Censhu" で検索の上、動画で次へ進まれるのが良いでしょう。
僕が譜面に指定しているテンポはわりと速いのですが、最初に出版元のAdam Frey氏が
CDに収録・リリースした演奏が、僕の感覚とはかなり異なって、ゆったりと、思索的な
解釈だったので、それに準じている演奏も多いようです。もっとも僕自身も、最近は、
「そういう解釈もアリかな」と肯定的に受け止めるようになりました。その点を別にすれ
ば、Adam Frey氏のCDに収録されいる演奏は、やはりとても誠実な演奏で、今でもベス
トだと考えます。
・その後、Adam氏の出版社からは他に、3点ばかりユーフォニアム関連の楽譜を出版して
頂いています。おいおいまた、ご紹介させてください。
]]>
・2021年11月13日(土)午後6時開演
・舞子ビラ神戸 あじさいホール
・僕が現在かかわっている「日本歌曲関西波の会」
の仲間で、実力ある中堅メンバーの一人として
活動を続けている秋山緑さん(チラシ左三番目
のかた、その右はピアノ伴奏者の中村展子さん)
が、昨年秋に地元の神戸市垂水区の区民音楽祭
に出演され、4曲のうち1曲、僕の作品を採り
あげて歌ってくださいました。
・「言葉は鳥」(詩・笠原三津子)(1998)
・この1998年の前後、僕は9拍子に取り憑かれて
いて、つまり3拍子の各1拍がさらに3つに分れ
て、うねるような流動感に溢れる、そんな作曲を
試みていました。この歌曲もそのうちの一つで、
人が語る言葉が、まるで小鳥のように相手の心の
中に飛び立ってゆく、と歌うこの美しい笠原さん
の詩。……伴奏者として定評のある中村展子さん
のピアノに乗って、当日の聴衆の皆様の心の中に、言葉が飛び立って行ったことと思います。
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