[1706] 新しい作品の完成(17)

  • 2017.04.01 Saturday
  • 23:04

◆ 西洋的感性による季節陰影

・早く作曲をと思いながら、2月から3月にかけ

 ての不順で寒々とした気候のせいで、なかなか

 仕事がはかどりませんでした。一つには、年頭

 のトピック[1700]でも言及したように、2年越

 しの法人解散のための業務が、3月12日の最終

 臨時総会まで続いていて、気持ちの上でゆとりが

 なかったのも一因でした。しかしお蔭様で最後の

 総会承認を無事取りつける事ができ、心の重荷が

 取れて東京から戻り、14日から制作を開始し、

 やや手間取りましたが10日後の3月24日の夜に

 約5分弱の歌曲を脱稿しました。

 

・「夏の終り」(2017)(詩・杉本秀太郎)

 

・すでに故人となられた杉本秀太郎氏は、フランス

 文学者、文芸評論家、日本芸術院会員etc...無数の

 肩書きのある著名人で、死去される1年前の2014

 年に出版された「駝鳥の卵」という詩集の中に、

 この「夏の終り」は収められています。

 

・僕がこの詩篇と出逢ったいきさつは、書き出すと長くなるのでやめますが、簡単に伝えるとすれ

 ば、僕が「京都大学音楽研究会」(京大音研)時代の後輩だった岡田知子さんという、当時は

 「おジャコ」と呼ばれていた旧友(ソプラノ)の紹介で、昨年はじめて知遇を得た杉本夫人から

 頂戴したものがこの詩集だったのです。杉本夫人、杉本千代子さんはご自分では「素人です」と

 言っておられますが、しばしば声楽の方のピアノ伴奏をなさっておられる正真の音楽人で、僕は

 今回のご縁を大切にしたいと思って、頂いた詩集の中から、ピアノ伴奏で歌うのにふさわしい

 「夏の終り」を見つけ、作曲することのご了解を得た上で、このほど完成したような訳でした。

 

・夏の午後の日差しの移ろいの中で、ひと夏の生命を輝かせているサルスベリやヒルガオや、ケイ

 トウの種子をついばむ小鳥、わが庭の景物を見ている(観ている)詩人の目は、それが去年の

 記憶そのままだったことに気付くのです。そして最後に言います。

 

   今年の秋が

   去年の秋にかさなることは

   もうないだろう

   こうして書きとめた詩がある

   そのことあるがゆえに

 

・ここで詩は終わるのですが、日本的叙情とは一線を画す、いかにもフランス文学者らしい、冴え

 た視線が素晴らしいと、僕には感じられます。まさにこれは、自分の死を前にした決別の辞では

 ないでしょうか。‥‥このようなクールな叙情詩を書く詩人を、僕は他には伊東静雄くらいしか

 知らないのですが、さあ、音楽の方、自分の曲の方は、どうでしょうか。自分では多少とも、気

 に入ったものができたと思っているのですが、已に亡き杉本教授には尋ねようがなく、演奏して

 くださる、聴いてくださる皆様の批評に俟ちたいと思います。

 

・初演予定は今年の秋頃になりそうで、僕の後続の作品集となる「千秋次郎歌曲集2」に収録の

 予定です。他にも、杉本家の事とかお伝えしたい事がありますが、長くなりすぎたので、トピ

 ックはここまでとし、次回に託します。杉本秀太郎氏の詳細はWIKIPEDIAなど、webで調べて

 みるのが良いでしょう。
 

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