[1714] 新しい作品の完成 (20)
- 2017.05.31 Wednesday
- 22:21
❖ 日常的な季節感を巡って
・5月はじめに作品を完成した歌曲「夏休み」
のあと、休む間もなく次の作品の制作に着手、
ようやく5月25日に完成し、それから譜面の
浄書を徹夜がかりで続け、去る28日に先方の
合唱団の皆さんに手渡しました。短いながら
も、5つの詩篇からなる女声合唱組曲です。
・女声合唱組曲「季節の旅びと」(2017)
(詩・池田もと子)
1. 春の公園 2. 雨つぶの輪 3. 大きなけやき
4. きんかん 5. 花の旅
・詩人の池田さんとは、前回の「紅い椿」で素晴
らしい詩を提供していただいたものですから、
今回も「団の創立50周年記念のために、新曲を
書いてもらえないか」と、旧知の女声コーラス
の皆さんから打診を受けた時に、池田さんに作
詩をお願いしたわけでした。
・ただ、その際に僕が詩人にお願いした条件は、
「長過ぎず、やや短めの、有節形式を目指している詩」という事でした。1曲がどれも3分
前後に収まり、しかも詩形が伸び縮みする自由詩ではなく、1番・2番‥‥‥とできるだけ
同じ息使いの詩型が繰り返される(有節形式による)歌詞、という事です。ありがたい事に
こちらの煩い要求に詩人は直ぐに応じてくださって、何編かの試作品の中から、作曲の立場
で、上記の5編を選ばせてもらったような次第です。
・たとえばその一例として、もっとも短い第3曲「大きなけやき」の全文を掲げてみましょう。
3.「大きなけやき」 池田もと子
夕日がしずむころ
大きなけやきに
むくどりたちが
いっぱい集まって
今日みてきたことを
話してあげる
夜になると
大きなけやきは
むくどりたちを
いっぱい眠らせて
葉っぱでやさしく
おおってあげる
・全世界を包み込むような「大文学」ではありませんが、生き物たちの優しい心の通い合いが、急
に涼しくなった秋の季節を背景に、印象深く歌われていると思います。音楽の形式で表現するな
ら、A-Aという形に自然に収まります。
・5つの楽章を、詩の構成に応じて、次のように組曲としてまとめました。
1. 春の公園 春 A-A-B 変ホ長調 4拍子 2'42"
2. 雨つぶの輪 雨季 A-A-B ヘ長調 3拍子 2'14"
3. 大きなけやき 秋 A-A ト長調 6拍子 2'24"
4. きんかん 冬 A-A-A イ短調・イ長調 4拍子 2'20"
5. 花の旅 再び春 A-B-A 変ロ長調 4拍子 2'40"
・組曲が最後にいたると、季節は一周し、再び春が訪れます。音楽の方も曲を追うごとに、曲の
調性が長2度(最後は短2度)ずつテンションが上がり、5.は1.の属調で終結することになり
ます。どれも3分に満たない小さな楽章ですが、全体を通すと約13分弱となります。
・これらの構成を前もって予定に入れながらの制作だったので、愉しみながらも苦労しましたが、
初演はこの秋10月21日(土)豊中市立文化芸術会館小ホール(阪急曽根駅)の予定です。成果
を期待しようと思っています。