[1724] 10月の演奏会 (4)

  • 2017.08.30 Wednesday
  • 03:19

❖ 伝統邦楽の全国大会での委嘱初演             ・この演奏会は終了しました

・10月29日(日)午前11時〜午後6時

・奈良県文化会館国際ホール(奈良・登大路)

 

・すでにトピック[1702]でご案内の邦楽器合奏

 (歌入り)の新曲が、文科省をはじめとする

 公共機関の主催で、今年も秋に開催の予定で

 す。今年は奈良県がホスト県となって、全国

 の邦楽演奏団体からの参加を呼びかけ、北か

 ら南まで、今年は28の邦楽社中の皆様が奈良

 市での演奏フスティバルで競われます。

 

・ホスト奈良県で進行・応対を務めるのは、奈良

 三曲協会の方々、すなわち「お接待役」の重労

 働?に従事されるのですが(ご苦労様です!)

 ステージ演奏でも手抜かりはできません。今回

 を記念して委嘱の新作を発表される事となり、

 先般ご案内したように、僕の方へ作曲の打診が

 あったような訳でした。

 

・邦楽合奏のための「万葉やまと春から春へ」(2016)

 

・それが昨年暮のこと、すでに今年の正月に、完成なった上記作品の譜面を協会に郵送し、

 三曲協会の方で伝統的な「縦譜」に書き直していただき、演奏参加の希望者を募り、さっそく

 練習に掛かられました。希望者が多く、全体で80名ほどに絞られたとの事でした。初案では、

 指揮者を置かず、第1箏の一人に先導していただく積りでしたが、これだけの人数ではやはり

 指揮者が必要と感じ、僕の畏敬する邦楽作曲家の吉田興三郎氏が指揮をして下さることになり

 ました。去る7月9日の昼に、皆様の練習に立ち会わせていただいたのですが、特別に借りた

 天理教の大広間に入りきれなほどの、80名もの邦楽の先生方が集まっておられ、吉田氏による

 精確な指揮で、練習が始まりました。三絃だけでも20名もおられます。平素はお師匠さんの方

 ばかりですから、その日が音合せ初日だったにもかかわらず、見事なアンサンブルの響きが生

 れ、吉田氏の指揮に感謝しつつ、安心して会場を辞去しました。もう作曲者がいちいち立ち会

 う必要などなく、皆様に「丸投げ」するのが最もベストな成果を生むことと信じています。

 そして、本番のご成功を心待ちに期待しています。

 

・主催者も出演者も、僕のように作品を提供した末端関係者も、この記念すべき奈良でのフェス

 ティバルを楽しみにしていたのですが、運命のいたずらか当日は台風22号が関西に最接近する

 時刻と重なってしまいました。早朝から雨が降ってきて、風もやや強く、どうなることか心配

 でしたが、幸いにも、21号のような深刻な事態には至らず、夕方には雨も上がっていて、無事

 定刻どおりに終演を迎えることができました。わけても喜ばしい事に、秋田や茨城、広島や徳

 島など遠方からの出演者の皆様からの出演キャンセルが出ず、プログラム記載の全27ステージ

 が予定通りに進行したことで、邦楽の祭典と呼ぶに相応しい、雨中盛大な快挙となりました。

 19番目のステージで演奏された、上記「万葉やまと春から春へ」も、指揮者・吉田興三郎氏の

 邦楽器の特質を熟知されての的確な指揮のお陰で、今回最多の98名の奏者が舞台に勢ぞろいし、

 素晴らしい初演を行ってくださいました。作曲者としては「以って冥すべし」の境地、心から

 の感謝です。ありがとうございました!

[1723] 新しい作品の完成 (23)

  • 2017.08.29 Tuesday
  • 18:30

❖ 市民伝承オペラへの追加曲 2

前トピックの続きになりますが、肝心な第3回

 公演が来年3月に決定したことを書きもらしま

 した。つい先日、主要キャストを含む1回目の

 ミーティングがあったばかりで、チラシもまだ

 これから印刷という状況ですが、日時と場所は:

 

・2018年3月4日(土)午後2時開演

・かつらぎ総合文化会館あじさいホール

      (和歌山県伊都郡かつらぎ町丁の町)

 

・第2回から2年越しの再演、今回も台本に手直し

 があり、演出の防野氏も今回のを最終決定バージ

 ョンにしたいとの事。すでに書いたように、2曲

 のアリアが追加となり、2曲目が本トピックで紹

 介するソプラノ横笛が第1幕第4場で歌うもの。

 ‥‥‥もはや面会もしてくれない恋人・斎藤時頼

 への嘆き恨み、その激情がはっと悟りの境地へ変

 化して行き、みずからの血潮で石碑に和歌を記す

 前半幕切れのクライマックスとなるシーンです。

 彼女の心境の変化を、能面をつけた役者が舞うシ

 ーンと重ね、いつのまにか般若ハンニャの面がおだやかな女性の小面コオモテに変わる所作が

 見どころとの事です)。そして、再び相見える事なく横笛は、みずからもまた尼となり、仏道

 修行の道に進みます。すでに出家した時頼も、このさき高野山に入山、やがて滝口入道と呼ば

 れる高僧にいたるのです。‥‥‥この重要な舞台で横笛が歌うのが、今回のアリアです。

 

・横笛(ソプラノ)のアリア 「嵯峨の奥里」

 

・前半のクライマックスとなる場面なので、伴奏楽器を総動員して曲を作りました。といっても

 フルオーケストラではなく、フルート、尺八、箏合奏(2部)、電子オルガン、ピアノの6パ

 ートに過ぎませんが、動から静へ、暗から明へ、楽器の層と音色を変化させて、第1曲の完成

 後の8月17日に、約9日をかけて曲を完成しました。音楽がどの方向に進めば良いかは明確な

 ので、前曲ほど戸惑うことなく制作は進捗したと思います。あとは舞台の上で、横笛の歌唱と

 能面の所作とが、どのようにまとまって行くのか、演出の手腕に期待したいところです。

 

・来年の年頭ごろに、チラシができあがった時点で、再度ご紹介するつもりです。なお、演目の

 正式なタイトルは『第参回 紀州かつらぎふるさとオペラ "横笛の詩"/紀州かつらぎ・天野の里

 に伝わる 娘「横笛」の悲恋物語』というものです。

[1722] 新しい作品の完成 (22)

  • 2017.08.27 Sunday
  • 11:35

❖ 市民伝承オペラへの追加曲1

・和歌山県伊都郡かつらぎ町という集落には、

 ある若き女人の墓がひっそりと今日まで残っ

 ています。時は後白河法皇の院政の頃、源平

 の戦いが勃発する前の、平家全盛の時代。平

 重盛に仕える若き武将・斎藤時頼トキヨリが

 横笛ヨコブエという女性を愛してしまうので

 すが、家柄の違いを理由に父・茂頼モチヨリ

 の許しを得ることができず、若者は出家して

 後に高野山で滝口入道と呼ばれる高僧となり、

 再会も果たせぬまま、横笛もやがて尼となっ

 て高野山の麓の村で仏道の日々を送り、彼女

 が息を引き取った時、一羽の鶯となって高野

 山へ飛んで行ったという悲話が、平家物語に

 語られています。その横笛の墓が、かつらぎ

 町に残っていて、今日まで守り伝えられてき

 ているとの事。

 

・かつらぎ町在住の演出家・防野宗和氏が仕掛

 け人となって、この美しいエピソードを町民

 参加のオペラに構成しようという企画が、今

 から5年前の2012年に実現し、その時に指揮をつとめた河田早紀氏との繋がりで、台本を

 小川淳子さん、作曲を千秋次郎が受け持つ事となり、「紀州ふるさとオペラ」と名付けら

 れた2幕約2時間余のオペラを、かつらぎ総合文化会館という立派なハコモノの中で初演

 したのが2012年12月9日のこと、村人たちの役で、多くの町民の皆様の参加があり、片

 や、共催者としてかつらぎ町からの経済的な支援もあり、大成功を収める事ができました。

 

・その後も再演を望む声が町民の皆様から多く寄せられ、3年後の2015年3月22日午後に

 2回目の公演が行われました。指揮者が河田早紀氏から金正奉氏に替わり、主演歌い手も

 一部異同がありましたが、これまた大盛会の再演となりました。そしてまた2年が経ち、

 今回が第3回公演です。回を追うたびに、演出の防野宗和氏から台本の部分改定が加わり、

 今回も僕は音楽の一部手直しに加えて、2曲の追加アリアの作曲に追われました。さらに

 今回から箏合奏の皆さんが新たに伴奏アンサンブルに加わったので、従来のステージの中

 での出番を作ってあげるための工夫も必要となり、じつに7月半ばから8月半ば過ぎまで、

 仕事に掛り切りとなりました。折からの異常な猛暑に体調を崩してしまい、なかなか予定

 が捗らず、気付いたら祇園祭も天神祭も五山送り火も終わり、ツクツク法師の啼く季節に

 なっていました。幸い、総合企画者・防野宗和氏にはご迷惑をかけずに、楽譜「納品」が

 果たせたので良かったと思っています。この僕のブログ更新も、そのために遅れてしまっ

 た訳ですが、今後は、なんとか尋常な日々に戻れる事と期待しています。

 

・前置きが長くなりましたが、今回作曲を完了した2つのアリアの内の1曲目は、第1幕の

 第1場、いわばこの悲劇の発端となる場面、相愛の斎藤時頼と横笛のゴシップを、二人の

 侍女が陽気に噂しているのを、そこへ通りかかった時頼の父・茂頼モチヨリが聞きとらえ、

 さてはあのカタブツの時頼が身分高い姫君を見初めて、人の噂になっていると思い込み、

 我が家の名声も家運も高まることと有頂天になって歌う、父親のアリアです。

 

・斎藤茂頼(バリトン)のアリア 「ついに恋をした」 

 

・アリアの後半になって、これに侍女たちの歌が絡み、三重唱となるのですが、父は有頂天、

 事情を知っている侍女たち二人は、これは大変な勘違い、将来どうなることかとヤキモキ、

 互いの方向性が異なる重唱なので、作曲にとても苦労しました。明るい音楽と不安な音楽と

 を同時進行させる必要があるからです。しかし、途中で侍女たちがそっと去って行き、後は

 父が息子の将来を頼もしく(あくまでも勘違いなのですが)歌い納めるところで、このシー

 ンは終わり、次の父子断絶の壮絶なシーンへと続きます。作曲は別の委嘱作「旅はるか空い

 ろの夢」が完了した7月17日以降から始まり、8月8日に漸く完成しました。 
 

[1721] 10月の演奏会 (3)

  • 2017.08.27 Sunday
  • 10:26

❖ 豊かな想いに満ちた恒例のサロンコン  ・台風接近のため、前日になってこの演奏会は

                      中止となりました

・10月22日(日)午後2時開演

・ふたば楽器ショウルーム(宇治市木幡)

 

・年に1度、欠かす事なくリサイタルを誠実に

 開催しておられる戸田茂・文代のご夫妻、僕

 にとっても旧知の長いおつきあいです。何とか

 お二人のために新作を寄贈したいと思っている

 のですが、未だに果たせていません。ようやく

 例の法人解散のカタがついたので、来年の会に

 はなんとか間に合うように、と思っています。

 ヘビーでなく、「心の消化」にちょうど良い、

 そんな小品をプレゼントする積りです。オリジ

 ナルでなくても、しみじみとした編曲の佳品で

 あっても、受け取ってくださる事と思います。

 乞うご期待!

 

・今年のプログラムでも僕の旧作が1曲採り上げ

 られていて、感謝です。今から34年前に書いた

 マリンバとピアノのための3楽章のソナタ、洋楽

 の形式に従いながら、音そのものは伝統的な日本

 旋法を使う‥‥‥僕の音楽語法のひとつなのですが、まあ、その最初の試みをこの作品で展開

 しています。

 

・マリンバとピアノのためのソナタ「ささの葉は」(1983)

 

・「ささの葉は」というサブタイトルは後になって付けたものですが、それは、緩徐楽章に当た

 る第2楽章が、万葉集に収録された柿本人麻呂の和歌「ささの葉は みやまもさやに さやげ

 ども われは いもおもふ 別れきぬれば」‥‥‥恋人との離別の歌をベースに楽想を展開して

 いるからです。なお、それを挟む1楽章はソナタ形式、3楽章はロンド形式、ともに日本旋法

 らしからぬハイドン好みの快速な楽章です。お二人のご成功を祈っています!

 

昨年は急用ができてしまい止むなく欠席しましたが、今回はぜひ出席させていただく予定です。

 書き漏らしましたが、サロン備え付けのピアノは、1877年製のスタインウェイ、まさに古色な

 ピリオド・ピアノ‥‥‥これまた愉しみのひとつです。

 

・想定外の事態となり、とても残念でしたが、止むを得ないことでした。次回が何時になるか、

 まだお訊ねしていませんが、次回に愉しみをつなごうと思っています。

[1720] 10月の演奏会 (2)

  • 2017.08.27 Sunday
  • 07:31

❖ 初演の数曲も加えての50周年記念           ・この演奏会は終了しました

・10月21日(土)午後2時開演

・豊中市立文化芸術センター小ホール

        豊中市曽根東(阪急曽根駅前)

 

昨年暮れにオープンしたばかりの市立ホール、

 豊中市民としての僕にとっては、やはり誇らし

 い事です。この秋10月には、木材をふんだんに

 使った小ホールで、旧知のグリーンコーラスの

 皆さんによる、創立50周年記念コンサートが予

 定されており、第2ステージで僕のふたつの女

 声合唱組曲が演奏されます。その一部は今回が

 

 初演となります。

 

・(1)女声合唱組曲「季節の旅びと」(2017) より

   1. 春の公園 2. 花の旅

・(2)女声合唱組曲「季節に逢いに」(2014) 全曲

   1. 街かどの春 2. リンドウ 3. 秋の町

 

・(1)の組曲については、トピック[1714]で作品の

 完成を伝えていますが、池田もと子さんの5つの

 詩篇をもとに、この5月に完成した組曲です。ただ、作曲が遅れた事もあり、今回のステージ

 では2曲のみを抜粋してお聴きいただく事になりました。(全曲演奏、つまり本来の意味での

 「初演」は、また日時を改めてご案内しようと考えています。)

 

・全3曲からなる原かずみさんの詩篇による(2)の組曲は、すでに昨年の演奏会でも採り上げられ

 ているのですが、演奏後の感想でも述べたように、その時はまだゆとり不足の感がありました。

 今回の公演では、それらが見事にクリアされている事と、今から頼もしく期待し、ご成功を祈

 っています!

 

・前日ようやく天気回復のきざしでしたが、この日になってまた降り出し寒空に戻りました。そ

 れでも小ホールが満席となり、組曲「季節の旅人」の作詩者・池田もと子さんも雨中高槻から

 来席され、僕と隣り合って最後まで楽しくステージを拝見拝聴しました。指揮者の藤川晃司氏

 の指揮で聴くのはこれが2回目でしたが、今回は彼が司会進行も兼ねていて、それがまた実に

 芸達者で、要を得たトークに聴衆の皆さんも乗せられて、あっという間に終演となりました。

 途中には藤川氏の癖のないストレートな美声によるテノール独唱も加わり、とても好印象の

 演奏会でした。僕の上記の2つの作品も、よくまとめて下さっていて、(1)については、将来

 全曲演奏の機会を作っていただくとのことで、詩人の池田さんも喜んでおられ、また(2)の組

 曲は、昨年末のトライアルなビミョー演奏から既に十ヶ月が経っていて、とてもまとまりの

 良い演奏に変貌していました。ことに第2曲のリンドウは、実のところ、かなりの難曲なの

 ですが、この年齢層のメンバーによる演奏としては、満点を差し上げたいほどの練習が積まれ

 ていました。ほんとうにお疲れさま!‥‥‥ここで一息置いてから、また次の目標に向かって、

 ゆっくりと活動を再開されますよう、僕も変わらぬ期待を続けています。

[1719] 10月の演奏会 (1)

  • 2017.08.27 Sunday
  • 05:22

❖ 法人組織を解散しての一新の作品展        ・この演奏会は終了しました

・10月19日(木)午後6時30分開演

・渋谷・伝承ホール(区文化総合センター6F)

                               (JR渋谷駅西口)

 

・僕が直近まで副会長をつとめていた(一般社団)

 波の会日本歌曲振興会は、2017年3月31日を

 もって無事に解散しました。僕もそれまでの役

 職を解かれ、名誉会員の一人となり、また独立

 した(社団)日本歌曲関西波の会・会長として

 現在に至っています。

 

・この推移に伴って、従来の法人「本部」だった

 組織は、名称を「(社団)日本歌曲振興波の会」

 と変え、これまでの事業を修正継続しつつ、今

 年度から新しい活動展開を開始することとなり

 ました。何とぞ今後とも、変わらぬご支援の程

 心よりお願い申し上げます。

 

・さて新組織としての活動の一環として、今年も

 新作歌曲の演奏会が、やや規模を縮小しつつ、

 渋谷伝承館にて開催の運びとなりました。僕も作曲部門(名誉)会員の一人として、ふたつの

 新作を初演していただきます。それぞれの曲目に関しては、すでに以前のトピック[1711]

 [1710]紹介していますから、ご参照ください。

 

・「夏休み」(2017) (詩・入船康和)

・「ある警備員の歌」(2017)(詩・木村 雄

 

・昨年度の作品演奏会と比べてみてお判りのように、今回のいわば「旗揚げ公演」からカウントを

 1に戻し、初心忘れずの心構えで再スタートです。4月から理事会も消滅したので、僕も久々に

 上京し、仲間とともに旧交を暖めたいと念じています。

 

・折しも小雨から本降りに変わるような、あいにくの空模様でしたが、それでも会場時刻前から、

 並んで待ってくださる方も多く、開演前には、定員345名の座席がほぼ満席に見えるほどの、 

 大勢の皆様が来場されました。開幕一番に演奏された上記「夏休み」は、いかにも開演トップに

 ふさわしい明るく爽やかな曲趣で、いわば「露払い」としての役目を能く果たせたと思います。

 歌い手も伴奏者も、ともに新人の方でしたが、懸命に努力をしてくださったと感謝しています。

 今後さらに研鑽を積んで、こういう歌を何気なく(どこにも彫刻のノミの跡が見えないように)

 聞き手(の心に)提供できるまでに成長して欲しいと、さらなる期待を託します。

 

・トリの一つ手前で演奏された「ある警備員の歌」は、二期会バリトン・綱川立彦氏の見事な歌唱

 が会場を響かせ、いかにも今夜の演奏会の掉尾を飾るにふさわしい、感銘深いステージでした。

 いつも演奏ペアを組んでおられる恵夫人だったら、さらなる完璧の演奏だったかも知れません。

 夜勤の警備員としての「低空飛行」を余儀なくされている、この(詩の中での)主人公の鬱屈し

 た想いが、地を掠め飛ぶ夜明け鴉への共感となって、一瞬にして歌となる、そのような機微を、

 この曲の最後で描いていますが、作曲者が思ってもいなかったような素晴らしい演奏に、心から

 に、心からの拍手そして感謝です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[1718] 新しい作品の完成 (21)

  • 2017.08.27 Sunday
  • 03:38

❖ 旧素材を使っての新作          

これまでにも紹介した事がありますが、旧知の

 オーボエ奏者・呉山平煥氏が、また来年早々に

 箏の福原左和子さんとのリサイタルを企画して

 おられる由、しばらく僕もご無沙汰だったので、

 何か新作を提供したくなりました。ただ、今年

 に入ってから作曲の予定が多く重なってしまい、

 あれこれ勘案した結果、数年前にフルートと箏

 のために書いた作品の素材を使って、新しいコ

 ンセプトのもとに、別の作品に仕上げることに

 思いいたりました。

 

・もう20年も以前になりますが、1997年に僕は

 「葉がくれの花」というオーボエと箏のための

 曲を書いていて、お二人によってこれまで幾度

 となく再演されているのですが、鎌倉期の皇族

 式子内親王の和歌「残りゆく有明の月の洩る影

 に ほのぼの落つる葉隠れの花」という繊細な

 新古今スタイルの和歌に想を得て、創った曲で

 す。今回の作品も、同じく式子内親王の和歌に

 想を得ていますが、それは「ほととぎす その

 かみ山の旅枕ほの語らひし空ぞ忘れぬ」という、清冽で爽やかな季節感に溢れた和歌からの

 イメージをもとに、先月になりますが7月17日に約1ヶ月をかけて完成しました。

 

・オーボエと箏のための 「旅はるか空いろの夢」(2017)

 

・斎王代として伊勢に下り、生涯を伊勢神宮の神々に仕えた彼女が、おそらく一生に一度きり

 となった旅行、まさに一期一会の青空の姿だったことでしょう。爽やかな音の動きの中に、

 「色即是空 空即是色」の裏命題に想いを馳せて、演奏してほしいと願っています。
 

calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM