[1734] 新しい作品の完成 (26)
- 2017.11.04 Saturday
- 04:07
❖ 箏族邦楽器による三重奏曲の3作目
・今年はどういうわけか、作曲に追われる一年間
だったようです。本ブログで、そのつどお報せ
してきましたが、今回の曲が2017年の14番目
の作品となります。頼まれるとイヤとは言えな
い損な性格なので、制作で呻吟するのは自分な
のですが、ともかくも最終の終止線を記入する
時の幼稚な達成感めいたものが、自分を引き止
めていて、この煉獄から抜け出せないでいます。
・邦楽器を介しての楽友・二世/狩谷春樹カリヤ
シュンジュさんは、現在ご尊父の跡を継がれて、
幅広く活動しておられますが、彼女を中心に結
成された「邦ダッシュ」という演奏ユニットの
ために、次なる新作がほしいとの要請を受け、
この夏頃からコンセプトを考えあぐねていまし
た。来年4月の彼女の重要な記念演奏会で使い
たいとの事、やはり年内には譜面をお渡しする
必要があり、先月10/24から制作に着手、幸い
楽想に恵まれて、4日後の10/27日に、単楽章
約6分の作品を得る事ができました。
・三絃・二十絃・十七絃のための 三重奏曲「青葉の波」(2017)
・4月の演奏会との事でしたが、既存の曲にも春の名曲は多いので、季節を先取りして今回は
初夏の爽やかさをテーマに、いつもの中間部に緩徐楽句を持つ変則的なソナタ形式の音楽を
今回も試みました。「青葉の波」という表題は、桃山期の大名で和歌の道にも秀でていた十
市遠忠トイチノトオタダ(1497~1545)の和歌に着想を得て、それをタイトルにしました。
・みづいろの梢にかよふ夏山の 青葉波寄る風のあけぼの 十市遠忠
・およそ武人の和歌とは思いもよらぬ、デリケートで美しいイメージで構成された、新古今
和歌集や玉葉集・風雅集のスタイルを思わせる印象深い詠歌です。流れるような9拍子を
基本のリズムとして、この上に主題を展開し、中間部はやや緩やかに4拍子のメロディを
対位法的に扱い、変化を持たせました。歓びと愁いとが交錯して進みますが、季節に相応
しい爽やかな情感で、全体をまとめました。狩谷先生にOKしてもらえるかどうか、本番
を密かに期待しています。